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冬空の下で見つけたシンプルな幸せ

こんにちは!
新年明けました!今年もよろしくお願いします!

最近は氷点下10度くらいが通常気温となり、いよいよ冬本番でございます。
オスロは先日記録的豪雪に見舞われ、バスが何台もスリップしたり止まったりし、屈強なノルウェー漢たちがバイキングを彷彿とさせる力業でバスを手押ししていました。笑
そんなノルウェー人たちと最近は一緒にジムでトレーニングしているせいか、体がバキバキになってきています。。

氷点下の空は本当に澄んでいます。
ソリ!
ボート部も現在は室内トレーニングです。艇庫の中にサウナがあり、練習後にみんなで入っています。


さて、1月も半ばになり、プログラム的には留学も折り返し地点を過ぎたことになります。泣
ということで、ここまでの日々を振り返ってみようと思います。といっても日々の勉強や活動は毎月書いてた気がするので、今回は、半年住んでみて、ノルウェー人やノルウェーの雰囲気について感じたことを書き留めていきます🇳🇴。

まず個人的には、オスロでの暮らしは自分に信じられないほど馴染んでいると感じています。
まあ物価も高い、社会保障もしっかりしている、よくある北欧神話的な幸福度が高くて、そりゃ暮らしやすいよねっていう話ももちろんあるんですが、
それより個人的にフィットしていると感じる点は、人との距離感とか、国民性です。

大学キャンパス

よくノルウェー人に、日本人は割と自分たちと雰囲気が似てて、居心地がよさそうだよねって言われますが、確かに類似する点はいくつかあると感じます。
例えば、協調性を大事にするところ。
細分化すれば、ノルウェーでは、solidarity/連帯、mutual responsibilities/相互責任、flat hierarchies/平等な階層とかを大事にする価値観があるといわれています。
よく日本ではこういう雰囲気を同調圧力とかの表現でちょっと悪く言われることもありますが、まあ結果としては日本でも同じようなことが重視されていると言えます。


でも感覚的になんか日本と違うなと感じるのは、そういった圧力とかなんか息苦しい中で皆と同じことを合わせようって考え方ではなくて、もう少しポジティブな要素が強いような気がする点です。


ノルウェーの場合、誰かが極端に幸せになるより、皆が薄く幸せになった方がいいよねっていう考え方が浸透しています。社会保障がしっかり充実している国柄もあり、みんなほどほどに、みんな薄ーく幸せになろうよっていう考え方で、だからこそ、自己主張より、他人に迷惑をかけないように(=なるべく皆が幸せになれるように)しようっていう発想になります。成長を絶対としないみたいな社会の雰囲気です。
Dugnadという、英語で言えばvolunteerにあたる概念が古くからカルチャーとして浸透しており、奉仕活動だったり、皆で共同体として支えるという価値観も強く根付いています。こういった考え方が、結果として、電車が時間通りだったり、変に目立とうとする人がいなかったり、日本人からするとどこかシンパシーを感じるということになります。
表面的にみると日本と同じですが、発想の出発点は日本の場合は、世のため人のためといった、他者への献身そのものを善とすることが多いことを思うと、ノルウェーのケースとは少し起点となる思想が異なるように思います。だから日本はこのような社会の雰囲気に、自発的ではないからこそ義務感とか圧迫感を感じる部分があるのかなと思います。


雑談ですが、ノルウェーの刑務所は、世界で一番人道的ということで知られており、実際再犯率も日本よりはるかに低いですが、これは犯罪者が悪いのではなく、犯罪をするような社会環境に問題があるという考え方からきています。だからこそ犯罪者の社会復帰も容易に可能であり、それが更生の一助となり、再犯を起こしにくい社会体制ができているといわれています。平等と連帯意識が限りなく強いのです。


そして、ノルウェーのこのような仲間意識はよく、equality as sameness(同一性としての平等?)という表現で理解されます。
難しいことを考えても伝わらないと思うのですが、とにかく「シンプルかつみんな同じ」っていう雰囲気ってことです。
これは考え方とか空気感だけの話ではなくて、身につけている服とか、食べているものとか、使われているアプリとか、全部が大体みんな同じ数種類くらいの中のもので完結していて、本当に「みんな同じ」なんです。
(ちなみに大学制度も平等主義が実践されていて、公立国立大学は学費もないし、入試もありません。みんな同じで、興味のある道に進めるという環境下のため、大学生の間でも、誰かと比べるといった考え方も薄いです。)
要は社会福祉国家というだけあって、何もかもをマネタイズして、商業化して、競争的な市場を作ろうという考え方に至らないのです。


これは当然メリットデメリットあります。当然、経済や技術進歩が乏しくなりますし、消費者目線に立てば、あるものが欲しいときに、比較検討できる種類というのがほぼないような状況になります。
でも一方で、ノルウェーはそもそも資源に恵まれ、その収益を国家が長期的に貯蓄、一部は効果的に海外主要企業に投資(日本企業もいくつも含まれます。MCJとかSOMPOとか。投資ファンドとして世界最大級の規模があります)してお金に困ってないうえに、人口が少ないため、ビジネス化に対してそんなに関心がない雰囲気が強いです。対照的なのが隣国スウェーデンで、IKEAとかSpotifyとか、日本でも馴染みのあるものをどんどん世界に進出させている国です。これは逆に言えば、ノルウェーがどれだけお金に困ってないかを示しているとも言えます。。

何でもない日に電車が一斉にメンテナンスに入って全部がバスに振り替えになったりします。
鉄道会社も一つしかないので、選択肢はありません。
冷蔵庫に貼ってありました。なんて素敵な言葉、、、、
ノルウェーの住宅はどこもしっかりしていて、それぞれの家庭の裕福さが伺えます。


そしてただみんな同じなのではなくて、それらは驚くほどに「シンプル」なんです。
控えめで質素なものを何においても求める人たちで、食事も衣服も乗り物も、生活のすべてが、必要最低限の技術とデザインで成り立っているという感じです。(個人的に困るのは食事です。matpakkeっていう日本語にすればきっとお弁当になるんでしょうが、基本ほぼ味のないパンに何の味付けも感じないハムとか野菜とかを挟んだものを食べます。日常的に食事がシンプルすぎてついていけません。BBQもすべてがホットドッグです。焼きそば作ってかましてやろうかと何度思ったことか。また、部活前にはみんなおやつとして人参を生のまま丸ごとカリっと食べます。うさぎじゃないんだから。。)

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Posted by Bakehuset on Monday, August 12, 2019


でもこのような生活スタイルを、居心地がいいと感じる瞬間も少なくありません。東京にいると、様々な新しい情報が流れ、せかせかした人たちに圧され、何もかもに様々な選択肢があり、それはある意味では便利であり住みやすいと理解もできますが、一方では情報過多であったり、いちいちいろんなものを比較して判断したり、そのスピードについていけなくなり、しんどいなと感じることも僕の場合は多いのが正直なところです。


「足るを知る」というのが、北欧は幸福度が高いとされることの理由だと思います。
中国の老子の言葉ですが、正確に引用すれば、足るを知る者は「富む」というそうです。
食べ物も衣服も娯楽も、選択肢は少ないし、すぐに家に届くような運搬サービスもないけど、みんな同じように、シンプルに、ゆっくり生きることが、幸せだよね、それ以上別に求めるものはないよねという、満足感に満ちた考え方が、ノルウェーの高い幸福度の所以だと考えています。

日曜日に山の上にあるカフェに行くと多くの家族がいます。

そしてこのシンプルでゆったりとした暮らしは、古くから自然と密着していることがノルウェーの特徴です。
都心部でも電車で15分もすれば、すぐに山や湖、海など自然がやってきます。"Friluftsliv"という自然との共生というノルウェーの重要な価値観をあらわす言葉があるそうです。彼らにとって自然は生活の一部であり(あくまで対等な関係、ここでも平等主義の価値観が浸透しています)、最近では電車に平日でもスキー板をもって乗車する人が大半を占めています。

環境学のセミナーでも登場するノルウェーの大切な概念です。


酒も高いし、都心部が小さいために飲み屋やクラブも少ない、そんなノルウェー人が娯楽としているもののほとんどが自然と密着したアウトドアアクティビティです。
ちなみに夏以外のオスロは天気がすこぶる悪く、特に12月は朝9時に日の出、昼15時には日の入りで日照時間も極端に短いですが、これとも共生していくことになります。雨ばっかの天気だとしても、それは天気が「悪い」のではなく、自分の考え方が良くないだけであるって考えるそう。

夏の晴れた日はハイキングが主流。寮から1時間半くらい登った場所です。
サイクリング一家もたくさん。
冬はクロスカントリースキー。彼らは足にスキー板がついて生まれてきたと言われています。
英語だと''God's Mountain''。子供向け絵本にも登場する自然と共生する考え方。
このお店の店主がとてもいい方で、オスロのこととか、ノルウェー語とか色々話してくれました😊。
正月に有名なフィヨルドの一角に登頂。帰るときは"Takk for turen"英語で言うとThank you for the tripといって、自然への感謝をするそうです。日本で言うごちそうさまとかの文化と近いかな?
ハイキングは最初から最後まで異世界でした。すべてが白銀世界。。
kvikk lunsjという、アウトドアで気軽に栄養補給できるノルウェーの国民的チョコレート(中身はほぼキットカット)。パッケージの裏にノルウェー語で山登りの際の重要なtipsが書いてあります。
ノルウェーでも近年、都心で育ってきた子は山のルールを知らずに遭難するケースが多発し、対策のために記しているんだそう。


"Culture is that complex whole which includes knowledge, belief, art, law, morals, custom, and any other capabilities and habits acquired by man as a member of society."

"Primitive Culture" E.B. Tylor, 1871 

と、いろいろ書いてはみたものの、結局文化って、こんなところで書ききれないほど、複雑で、複合的で、矛盾ばかりで、とても半年程度で包摂できるようなものではないと思いますので、あくまで日本で生まれ育った僕が、表面的な雰囲気で感じたことと聞き流していただければと思います。


あと最後に、僕が1学期の勉強で楽しかったノルウェー語について振り返ろうと思います。
留学をしてから強く実感したことですが、英語が母国語でない国への留学という選択はとても魅力的なものでした。まず向こうも英語は母語ではないので、お互いに理解し補い合いながらコミュニケーションがとれます(ノルウェー人は皆本当に流暢で発音が綺麗な英語を話してくれます)。

そして何より、未知の言語に触れて、言語を皮切りに、新しい文化や考え方も知れることがとても面白いです。英語であらわせない表現とか価値観って絶対どの国にもありますよね。街の掲示板とかの文字が分かるようになるのもすごい楽しいし、たぶんノルウェー語って将来あんま役に立たないけど、意味があるないという観点だけではなく、面白さとか楽しさで勉強できるのも留学ならではだと思います。

ちなみにこの先生はノルウェー語をノルウェー語のみで教え通す先生です。そして文法を教えることを嫌います。授業理解度0%の日も少なくありません。
任意参加の会話クラスは楽しくて毎週行っていました。おかげでspeakingの方が成績が良かった笑、というより筆記がひどすぎた。
街中のノルウェー語も簡単なものなら読めるようになります。このカードは電車の席にあちこち置かれていて、子どもを二人もつ父親が職がなくて、お金をvippsという日本でいうpaypayのようなもので送金してほしいという内容です。多分移民だと思うので、僕の語学力で理解できるのも納得です。ちなみにノルウェーはアメリカと同等の比率の移民を抱える移民国家です。生活困窮者もおそらく一定数はいると思われますが、スウェーデンや他国に比べると治安も含め、状況はこれでもかなりましな方です。
ノルウェー語と英語は構造がほぼ一緒!


というわけで、残り半年も気ままに頑張っていきたいと思います😀。
それではまた〜!


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