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【雑記】助走の距離−女風とわたし(3)−

ソーマさん、あなたの前に立つまでに、わたしにはいろんな試練があるよ。

日常の何もかもを振り切って行くことも、
あなたの現実を受け入れることも、
わたし自身の現実を受け入れることも、
幻を塗り替えることも。

がんじがらめになった自分自身を、
自分自身ではどうしようもないまま、
そのままで、あなたの前に差し出すことも。

ひとつひとつがあまりにも大きくて重たくて。

そして、今までの3回の時間よりずっとずっと、あなたを手こずらせてしまうと思う。
こんなにこんがらがってしまったわたしを解くことに。

ずっと、ずっと、にじり下がっていた。
会いたいと想いながら、いろんなことが怖くて、にじり下がっていた。

回を重ねるごとに素になっていく面倒な自分を、あなたの前に晒すことが怖くなっていた。

フェードアウトしている自分に気づいた頃から、会うことを思うと辛くなっていた。
楽しみと思えなくなっていた。

想い続けるのは辛いのに、でも、想うだけでいいと思ってしまう。想うだけでいいはずがなのに、心が振り絞られる。もう、自分が、どうなっているのかわからないほどに。

とことん想いを傾けると言いながら、女風から外れてしまったこの想いを、やはり持て余している。

想い続けるという殻の中に閉じこもっていた。その殻の中で、ずっと膝を抱えているかのような感じ。

もう、この状態が長く続き過ぎて、この状態が当たり前に日常になり過ぎて、具体的に会うことを想像できなかった。
会うことに向けての準備も進まなかった。裸をさらす決意が持てなかった。

あの時、とても素敵な時間を持てた。一瞬でも自分を解放できた。解放させてもらった。そのことだけを自分の中で思い返して、甘くて少し塩味のある飴玉のように転がしていた。

ソーマさんがセラピストとして切り出してくれる時間を、わたしは充足させてあげることなんてできないと思ってしまった。わたしがその時間をもらわなくても、もっと素敵な人がその時間をあなたのために使ってくれたらいい。

想いを傾けすぎた。単に自分の身体を満足させられたらいいという思いから離れすぎてしまった。

まるごと包んでくれるんだろう、そのことを疑っているわけではない。信じていないわけではない。でも、また、そのことに縋って、そして勘違いしてしまうのだろう自分が、何だか哀れにも思えて、何をやっているんだろうってどこかで嘲笑っている。
人に、誰かに癒される、充足される、昇り詰める、解放される…、まだ、そういう経験がほとんどない今なら、自分で満足させられるだけの範囲でこれからも何とかやっていける。

このまま離れたら、ソーマさんは応援されてなかったと思うだろうか。忘れてもらえるだろうか。思い出しもしないだろうか。そう、思ってきた。


あなたに会う。もうすぐ。

ただ、季節ごとに会う約束を破りたくないだけ。約束を破ったら、もう次を望む勇気は出てきそうにない。
半年、年を重ねて
半年、目一杯拗らせて
半年、ただすり減らしてしまったような時間そんな時間を抱えたままのダメなわたしでも、受け止めてくれますか。

ようやく、あなたに会うと踏み切れた。

日常を振り切る、そう思えたことが大きい。何もかもぐちゃぐちゃだけど、季節ごとの約束を守るよ、日常を振り切って行くよ、そう思えたことで、踏み切れた。

ソーマさんは、わたしが会うか会うまいか、約束を守れるのか守れそうにないのか思い悩んでいたことを知らない。
もちろん、そんなことを知る必要もない。会いたい時に会いにくればいいだけのこと。ソーマさんにとってはそれだけのこと。

期間が開くことをソーマさんは、ユーザーの気まぐれにしか思わないだろう。他に充足できるものを見つけたと思っているかもしれない。そして、打診があれば、嬉しいと思ってくれるだろうか。いそいそと縄の手入れをしてくれるかな。

誰でもじゃダメなのか。
誰でもをダメにしているのは、わたしなのに。振り切ったら、案外、誰でもよくって、満足できたらいいのかもしれない。
もともと、気持ちは要らないって思っていたんだし。
ソーマさんに会ってから、また、考えたらいいこと。ユーザーとして相手にしてもらっていることを自分が勘違いしなければいいだけのこと。

身体を満足させたいと思ったら、わたしの選択肢は女風しかないんだし。

会いたかったとか、長かったとか、言ったら笑われるかな。予約をしなかったのはわたしなのに。キャンセルをしたのはわたしなのに。

わたしが勝手に傾けた想いを、あなたが受け止めることはないのだから。わたしの身体を悦ばせてくれたら、それでいいのだから。

会っている時、ユーザーの中のただ一人の“しおん”に、セラピストの“ソーマ”さんとして精一杯、誠実に向き合ってくれていると思えたらそれでいい。

助けを必要とする不特定多数のたった一人のための仕事

「約束された移動」(小川洋子著 河出文庫
 2022年)藤野可織さんの解説のタイトル

きっと、間違いなく、そうしてくれると思うから、わたしはソーマさんのことをリピしている。

そうだよね。わたしの“信じてる”、はそういうこと。

そうやって、ゆるゆると、わたしとソーマさんの星を繋げていくのが、わたしの願い。

にじり下がってきた道のりがそのまま、あなたの胸に飛び込む助走の距離にできたら、そのにじり下がってきた道も時間も無駄ではないよね。
あまりにも長い助走になりそうだけど。
勢いがつきすぎちゃうかな。
にじり下がってきたこの距離を、助走にして走りきり踏み切れる、そんな力が欲しい。

いろんな想いが重たい。

でも、きっと大丈夫。あなたの前では上手くできるはず。会ったら、やっぱり、嬉しい気持ちしか湧いてこないと思う。
真っ直ぐにあなたに抱き締めて欲しいから。
真っ直ぐにあなたを抱き締めたいから。

笑顔で「久しぶり」と言おう





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