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拝啓 マイケル様


貴方の突然の悲報を聞いたのは去年の秋でした。たまたま付けたTVからは何とも痛々しい姿の貴方が映しだされて、私は息を呑みました。

貴方はいつも堂々とその場所にそびえ立っていて、そこを通るたびに私は「顔がこわいんだよなぁ」と、思っていました。ごめんなさい。

だけど、千歳や苫小牧からの帰り道に貴方を見かけると「無事に帰れたよ、あと少しだ」と心の中で貴方に話しかけていました。

そして、あの日の悲報から少しして貴方はいなくなりました。出かけるたびに見ていた貴方がいないのは何とも淋しく、味気無い思いでいっぱいでした。

それからしばらくして、貴方は戻って来ました。あの日と変わらない、いいえ、あの日よりも綺麗で若々しい姿で。良かった。ほんとに良かった。怖い顔も変わってない。

昨日は中秋の名月でしたが、今日の月もとても美しい。黄色い月を見ていたら貴方が浮かんで、この様な手紙を書きました。

どうかこれからも、その怖い顔で「安全運転するんだぞ」「疲れたら休んでいけ」と私たちに語って下さい。
敬具


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