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思い出は失ったものか? 夏の終わり 過去日記





『思い出は失ったものか?
私は現在のものだと思います』


市川実日子ちゃんの言葉だ


オリンピックが終わり
ふと
四年、という歳月と
四年前の自分が気になり
過去の携帯メールや日記を読み返していた



色々ありすぎて
会えなくなって四年も経っている彼からのメールには


元気にしているなら
それで良い


20代とは思えないような
諦念とも感じとれるような言葉


遠い街で互いに会う事さえも
ままならず


それなのに切れそうな糸を互いに断ち切れず

もはや
生きてる事だけを確認する術のような言葉は


埋没されたであろう
その寸前の押し殺された声だけが僅かに届けられる



元気でいるならそれで良い
なんて

そんな言葉を吐かせてしまう自分が歯痒い





赦し赦される事の内包する
始まりと終焉


曇天の空に轟く蝉の声


君の告げる
夏の終わり



・:*:・


あまり
長いメールをくれる事は
殆どなくて


業務連絡ですか?

言いたくなる事ばかりだったのに
返歌のようなメールが
返ってきた




青空に消える蝉の声も
また
鏡花水月の如く


逞しくそびえる大樹の葉にも
また
夕立の滴


なんて儚く消え行くものたち
なんて儚く消え行くものたち



*―――――――*


本当に不思議な人だった
部屋には
やんちゃしていた頃を思わせる
流血のついた(!!!)特攻服があったり

触れてはいけないような
裏世界の人との交流もあったような人なのに



文学に傾倒したり
教養に対する飢餓感を抱えている


今まで人から優しくされた事なんて殆どないと
けれども


初めて、優しくされた

あたしに呟いた



二度とは会う事もない人


夏はもう少し
続きそうです

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