『愛しのフリーダ』
『愛しのフリーダ』というドキュメンタリー映画を観た。
AmazonVideoの有料チャンネル「シネフィルWOWOW」から観たのだが、私の悪いクセで題名の下のあらすじを観ずに、フリーダ・カーロの話だと思って再生ボタンを押していたものだから、ビートルズのメンバーが喋りはじめて、とてもびっくりした。
どうやら、フリーダ・ケリーというビートルズ黎明期からのセクレタリー(秘書)のドキュメンタリーらしい。
別に私はビートルズの熱狂的なファンではない。もちろん好きだが、ファンというほどではない。家になぜか赤盤と青盤があるけど、持っているのはそれくらい。
だから、しばらくぼーっと観ていた。
が、途中から、がぜん前のめりに。
フリーダを知るいろんな人のインタビューが出てきて、その中で、彼女が自分からはビートルズの話題を絶対に話さないこと、家も家族も知っているけど、プライバシーを頑なに守り続けたことを知って、涙が出てきた。
こんなにもビートルズの黎明期から一緒にいて、たくさんのオートグラフやレコードやサインを持ってたのに、ほとんどファンの人にあげてしまって、伝記も書かず、自分は秘書として黒子であり続けた。
こんなプロ意識の強い、仕事のできる人がビートルズのスタッフにいたなんて全然知らなかった。17歳という若さの彼女を、秘書として雇ったブライアン・エプスタイン。人を見る目がありすぎてコワイ。(しかし、あのブライアン・エプスタインが「エピー」なんていうカワイイ名前で呼ばれてたの?初耳だったんだけど。)
開設当時からずっと自分が責任者だったビートルズファンクラブの拠点がロンドンに移るというとき、お父様の面倒をみるために、リヴァプールの拠点に残ることにしたフリーダ。この際だからとバレないようにご自身のサインブックを、他のファンの子たちのにまぎれて書いてもらおうとしたのに、ジョージ・ハリスンにあっさりバレてしまう。
「ほかの三人にも回しておく」っていわれて帰ってきたサインブックには、ジョージはもちろん、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターのサインと、4人からの愛にあふれるコメントが書かれている。この時点で私、ナゾに泣き始める。
やがて、ビートルズは分裂のときを迎え、フリーダも母となり、ビートルズファンクラブも終焉を迎える。
もう、なんか…。
立ち上がれないくらい泣いた。
フリーダ『名声や富なんて無意味よ…。』
皆さん、一回は観てほしい。
特に推しがいるひと全員に観てほしい。
SNSがまだないときではあるが、こんなにも強い愛と献身とをもって推しを10年以上影で支え、つつましやかに影のまま、その人生終える覚悟だった一人のファン兼スタッフがいたのよ。
フリーダはご自身のお孫さんにただのおばあさんと思ってほしくなくて、このドキュメンタリー作成を引き受けてくれたよう。本当に引き受けてくれてありがとう、フリーダ。作ってくれた監督スタッフありがとう。ドキュメンタリー映画は、個人的にすすんでは観ない分野ですが、今のところ2022年で私が観た映画の中でもっとも泣いた映画となったよ。(まだ3月だが)
軽々しく週刊誌で有名人をあることないこと書いたり、伝記と称して下品なことを暴露したりして、それを金儲けのネタにして生きている連中全員に、フリーダの爪のあかを煎じて飲ませたい。