プロヴィデンスマギアあらすじ1

 死。

デウス・エクス・マキナに召喚。
意味ありげな言葉を投げかけられる。

 イルマ降臨。

高台。見知らぬ大地。違和感を感じる。アスファルト舗装された道路が無い。
遠くに見えた街のようなものに歩き出す。

 トリア邂逅。

声を掛けられると、そこには女の娘。トリアと名乗った彼女に、イルマ(枸杞崎 依琉真)は自らの名を名乗る。
彼女は、先程見えた街に行く途中だったので、同行する。

 ウルフ襲来。

街に向かうと、狼の群れが草むらから飛び出してくる。
慌てるイルマだが、手を引かれて逃げる。このままでは追い付かれると察するとトリアからショートソードを渡され、自衛を促される。

 初戦闘。

トリアは拳に武器を召喚し、その鉄拳の大きさに驚く。
イルマは、ことここに至っては、この世界は異世界なのだと理解する。
狼を撃退し、狼を解体するトリア。かなり手馴れている。
トリアは、召喚した武器の大きさ、手を握った時の魔力の流れ、そして自身が行使した凄まじい打撃がイルマの指示で行われた事に、イルマが伝説に謳われたプロヴィデンスであるのではと伝える。
それを否定するイルマだが、この世界の魔物は魔力障壁が存在し、狼に痛撃を与えられたイルマは間違いなく、狼以上の魔力を有しているハズであるとの事だった。

 キオティアの街到着。

街に到着し、狼から採取した素材の売却の為に冒険者ギルドに赴く。
その際に、イルマが冒険者登録してはどうかとトリアに助言を受ける。

 夕刻の冒険者ギルド。

素材を売り、受付のアンリエッタがイルマの冒険者登録を担当する。
冒険者登録をするには、登録者の魔力を測定しなければならない。
嫌な予感がしたイルマは、それを固辞するが、規則と言う言葉に流された、どこまでも日本人なイルマは、何があっても驚かないようにと言い添えて魔力測定を行ってもらう事に。

 キオティア冒険者ギルドの主。

嫌な予感は的中し、イルマはSランク、もしかすれば、それ以上の魔力を持つとの判定が出てしまった。
機械の故障じゃないかと、すっとぼけるイルマにアンリエッタは自分は壊れていないと憤慨。
そのままギルド長室に、トリア共々連行されてしまう。
何故なら、イルマから魔力を流されたトリアもAランク魔力保有者だと判定されたからだ。
アンリエッタが、以前冒険者登録を希望したトリアがFランクと言う、冒険者登録可能な魔力ランクであるEに達していなかった事を覚えていたのも話をややこしくした。
ギルド長室に入ると、強面の中年男性とアンリエッタが居た。
もう逃げられない事を悟ったイルマは、観念して彼らの正面に座る。
ギルド長と思わしき男はガレスと名乗る。ガレスは、イルマがSランクである事を黙っていて欲しいと言うと、イルマがプロヴィデンスであると言う推測から強く出れないようだった。
イルマは、あまり強く出れないガレスに、(魔力)Bランクくらいで登録する希望を出す。
それに関しては、ガレスが冒険者ギルドの法を明かす。この国では魔力ランクの虚偽申告は重罪になることを説明する。
だが、イルマは、なら冒険者登録せずに仕事をすると言ったが、それこそ罪になると言う。
なんとも融通が効かない世界だなとイルマが辟易とした頃、あまりの難色加減にガレスが折れた。
結局、Bランクで登録され、トリアは念願の冒険者登録証を魔力ランクAで手に入れたのだった。

鍛冶屋レイ。

無事(?)Eランク冒険者として登録されたイルマは、早速武具を整える事にした。
この国の冒険者は、なるだけで支度金が用意されるようで、15Gの用意があった。
早速イルマは、冒険者ギルド提携の店で武器(ロングソード。3G)を購入する。
だが、防具に関しては完全に命へ直結するものだったので、さらに良いものを欲しがった。
だが、その店では言わば冒険者セットとして用意した防具しか無く、イルマは何とも心もとないものを感じた。
更に交渉すると、店の人間からある場所を紹介される。
その場所に行ってみると、鍛冶屋の看板らしきものが架かった店があった。
その店に入ると、割かし暇そうにしている女主人が居た。
冒険者ギルドから紹介されて来た事と目的を伝えると、彼女はレイと名乗った。
7Gの予算で一番良いものが欲しいことを伝えると、鉄製のライトアーマーらしきものを勧められたが、10Gと少しばかり足が出た。
悩むイルマだが、トリアが自分の装備を整えるのに防具しか必要としなかった為、3Gを融通してくれると申し出た。
イルマは、渋るが、押し付けられる形でトリアに3Gを借り、その金で、件のライトアーマーを自分用に仕立て直してもらう。
ようやく武具が揃ったイルマは、次の日にレイの店で防具を受け取り、その足で冒険者ギルドへ依頼を受けに行くのだった。

 初めての依頼。

冒険者ギルドに行くと、アンリエッタが少しばかり恨みがましげな眼で、こちらを見つつ手招きをしてきた。
招かれるままに受付に行くと、昨日イルマの偽造書類を受理させる為に、ギルド長と残業をした事を、一頻り愚痴られた。
罪悪感を感じないでも無かったが、きっとこれからも色々面倒をかけるのだろうな。と感じたイルマは、軽く謝罪する。
アンリエッタは、その態度に少しばかり溜飲が下がったのか、要件を聞いてきた。溜息を吐いていたが。
イルマは、とにかく初心者向けの依頼が無いかとアンリエッタに伝える。
すると、いくつかの依頼を出してきた。
薬草の採取と、魔物から取れる魔石の採取だ。
中でも魔石の採取は、この冒険者の基本的な依頼なのだという。
魔石は、都市のインフラにも使われる他、プロヴィデンスが作り出した都市結界の維持に使われる為だと言う。
プロヴィデンスは、この世界の人々に魔力を与え、魔物と戦える力を与えると共に結界柱を中心とした魔物避けの結界を齎した。
そのお蔭で、現代の人々は都市を作り、安全な生活圏を手に入れる事が出来ているのだと言う。
だが、その結界を展開し続ける為には魔石を定期的に結界柱に注ぎ込む必要があり、更に都市が得る熱源、街灯、その全てを魔石で賄っていると言う、挙げてみればとんでもない魔石への依存っぷりだった。
イルマは、だからこの国で冒険者が優遇されている理由に気が付いた。
冒険者になる為には、ある程度の魔力が必要な理由も。
そして自分が、ある程度有利な立場に置かれている事も理解したのだった。
だが、イルマはその事を表情に出さず、まずは一枚目の依頼書を手に取った。

 満開樹討伐。

いくつかの依頼をこなし、いくらかの金銭的余裕を手にした頃。
イルマが、この世界に降り立ってから一週間が経とうとしていた。
ある日依頼をこなして冒険者ギルドに帰ってきた夕刻。
いつものように依頼達成金を貰っていると、突然ギルドの扉が荒々しく開けられた。
そちらに視線を向けると、血塗れで憔悴した冒険者がギルドの床に倒れるところだった。
すかさずイルマは、その冒険者の口にある程度の値段がする回復薬を突っ込んだ。
息を吹き返した冒険者は、依頼で行った森の中に満開樹が出たと告げ、気を失ってしまう。
それから冒険者ギルドは上から下への大騒ぎだった。どうやら、魔力ランクが高い冒険者を集めているようだが、そんな冒険者クランは遠出する傾向にあるらしく、現在折り悪く皆キオティアを出払っているらしかった。
イルマは、冒険者の命に別状が無い事を確認すると、とてつもなく嫌な予感がしたので、辺りの職員に介抱を任せると、この場を退散しようとトリアを抱えて先程傷だらけの冒険者が入ってきた扉へ足を踏み出した途端、有無を言わせない力で肩を掴まれた。
溜息を吐きながら振り向くと、そこには、とても良い笑顔をしたガレスと、胸元で手を組み、お願いモード(拝み手を擦り合わせる)に入ったアンリエッタが居たのだった。

魔法屋ルコ。
自分、しがないBランクっすから。
そう言い募るイルマだったが、勿論そうは問屋が卸さない。
そもそも、トリアがAランクで登録しているし、イルマ本人もSランクである事は公然の秘密状態で、それを黙って貰っている手前、協力しない訳には行かない。
イルマは、いくつかの条件を出し、その依頼を呑む事にした。
まず、魔法屋があるのなら、それを紹介すること。
そして、この依頼を達成したのなら、これからあらゆる面でイルマに協力する事だ。
その条件を呑ませた後、イルマは素早く紹介された魔法屋に駆け込んだ。
そこには、普段であるなら息を飲む程の美貌を持った女主人が店を構えていた。
その女主人に、今ある金の殆どを注ぎ込み火の魔法が欲しいことを伝える。
女主人は笑顔で請け負い、その唇から考えれば当たり前だが、イルマにしてみれば、とんでもない言葉を紡ぎ出した。
では、魔力ランクを測らせて頂きます、と。
慌てて踵を返そうとしたイルマだが、魔法は必ず必要になる事から、またイルマは逃走失敗する。
もうどうにでもなれと、魔力ランクを測定させる事になってしまった。
さて、魔力ランクを測ると、そこには魔力ランクSのイルマと、Aのトリアが、ちょこーんと存在する事になる。
わなわなと震えながら、最早お決まりになった機械の故障を訴えるが、勿論通らず、それどころか女主人まで、わなわなと震えだしてしまった。
果てしなく嫌な予感がしたが、どうかしたのかと聞くイルマに、また女主人は、とんでもない言葉を口にする。
プロヴィデンス様、お待ちしていました、と。
何事かと若干引くイルマだが、事情を聞くと彼女は自らのルコと言う名前を名乗り、自分がプロヴィデンスの契約者である事を告白するのだった。

 王国魔法騎士ヘキサ。

ルコの話はこうだった。
彼女は、先代のプロヴィデンスの契約者で、彼がこの地から去った後も、再び降臨する日を今まで待ち続けていたと言う。
イルマは、そのような相手に隠し事は出来ないと悟り、自身の正体を語り、協力を申し出る。
ルコは、願ったり叶ったりと言う調子で協力を約束し、イルマに割引した形で魔法を売ってくれるのだった。
そして、ルコと契約を結び直し、仲間に引き入れたイルマは、準備を整えて冒険者ギルドへと戻る。
するとそこには、見知らぬ女の娘が居た。
アンリエッタによると、彼女は王国に所属する巡回魔法騎士で、たまたまキオティアに寄ったところ、今回の騒動を聞きつけたと言う。
どうやら彼女もイルマに協力する事になり、一時的にパーティに入ることになった。
更にアンリエッタは、イルマに侍る形で傍に居るルコに驚くが、彼女が協力してくれる事には、素直に喜んでいるようだった。
紹介された王国魔法騎士は、自らをヘキサと名乗り、巡回騎士だと自称した。
そして、この巡回騎士には、ある程度の自分の裁量で問題解決が出来るように権限が王国から与えられているようだった。
ひとまず、ヘキサを一時的な仲間に加え(一時的な、なので契約は行わなかった)一路、満開樹の討伐に向かうのだった。

満開樹討伐。
キオティアの北に一日馬を走らせる。
勿論、緊急制が高い為、冒険者ギルドが貸してくれたものだ。
そこに、満開樹が出たと言う森は存在していた。
森の外に馬を繋いでおく訳にはいかないので、そのまま馬で森に侵入する4人。
魔力が濃い。
その魔力濃度が濃い場所に近付いて行くと、植物の蔓に吊り下げられた形の冒険者がちらほら居た。
恐らく犠牲者だろう。そうアタリをつけたイルマ達は、蔓を切り裂き、安否を確認する。
3人の内、一人は駄目で、男一人と女一人が辛うじて無事だった。無事、と言ってもその命の灯火は消えかかっていた為、イルマは躊躇わず栄養補給重視の回復薬(活力剤と呼ばれている)を経口摂取させる。
二人の顔から死相が無くなった事を確認すると、まずその冒険者二人を比較的安全な場所に移してから探索を再開する。
無事で無かった方の冒険者も蔓から解放するが、最早人間と呼ぶには無惨な姿になっていた。彼(犠牲者は男のようだった)には申し訳無いが、ひとまず此処に放置し、更に奥へ歩を進める。
(本来ならヘキサを救助者、被害者のフォローに外すのだが割愛)
そして、少しばかり開けた場所に、それは居た。
満開樹。新人冒険者が、これに出くわしたなら逃げろ。逃げられるならば。と言われる、魔物だ。
腕を伸ばすように枝葉を伸ばし、あちらこちらに蔓を伸ばして獲物を捕獲する。
生態系の破壊者と言って良い存在だ。
そして、こう言った上位種は、ほぼ例外なく下位種にあたる魔物を従えており、この満開樹も魔界樹と呼ばれる樹の魔物を従えていた。
名前は魔界樹の方がおどろおどろしいが、その実力は満開樹の方が高い。
何より、魔界樹であるならば、魔力ランクDだから、あの犠牲になった冒険者クランでも、なんとか倒すことは可能であっただろう。
だが、この満開樹は魔力ランクBに成長する。つまり、魔力ランクCの者であれば魔力障壁と言う目に見えない壁に阻まれて攻撃すら通らない。
技術や、外的要因で実力を底上げする事で自分の魔力ランクより高い魔物を倒すことも出来るのだが、新人冒険者には望むべくもない事だった。
事、ここに至っては、イルマもヘキサを契約者(ファミリア)にする事を決心し、彼女の手を握って魔力を流し込む。
ヘキサは、その手を伝わる魔力の波動に驚いていたが、すぐに目の前の敵に集中する。
ヘキサとトリアに満開樹への突撃指示を出し、イルマとルコは魔術で魔界樹をものの一分程度で満開樹ごと焼き払う。
ルコにプロヴィデンスマギアと呼ばれる限界突破スキルをイルマの魔力で使わせたのだ。
その名も、アポカリプス。
一帯を焼き払う勢いで放たれたそれは、魔力制御にて相手だけに襲いかかる。
そのまま無力化された魔界樹だが、まだ満開樹は生命活動を行う。
つまり、消えた生命力を他者で補おうとする。
トリアの巨大な鉄拳(ガイストナックルと言う名前らしい)でイルマに向かう蔓を弾き飛ばすが、それでも何本かは避けられずに当たってしまう。
そもそもこの世界では、魔物の攻撃は基本的に人間の反応速度を超えて放たれるものが多いので、とにかく防具を固める傾向にあるのだった。
ともあれ、相手に体力を奪われたイルマは、ルコに後方支援を任せると、トリアとヘキサに混じって接近戦を挑む。
もうこの戦闘ではプロヴィデンスマギアは使用できない為、あとは殴り合いだった。
流石のプロヴィデンスでもマギアを使用すると休息を取らないと魔力が回復しきらないのだ。すなわち、プロヴィデンスマギアは少なくとも現時点ではイルマの魔力が最大値でないと使用出来ないのだ。
そして、何度か満開樹を斬り、殴り、突いた時。満開樹の動きに鈍りを感じたイルマは、自らの魔力をヘキサに流し込み、彼女のスキルに合わせて満開樹へとロングソードを叩き込んだ。
刺突と斬撃が、魔物へと突き刺さり、満開樹は世にも奇妙な断末魔を上げ、生命活動を停止させた。
だが、活動を停止させたのは、魔物だけでは無かった。
イルマが冒険者になってから使用していたロングソードが半ばから折れてしまったのだ。
これには目を剥いたイルマ。鉄製のロングソードが、イルマから溢れ出る魔力に耐えきれず、内側と外側からの圧力で壊れてしまったのだった。
とりあえず大きな破片は拾いつつ、満開樹や魔力樹の素材を回収して、先程の冒険者の死体と、その近くに繋いでおいた馬を回収し、一行はキオティアの街に戻るのだった。
最後尾に居る、冒険者の死体を馬に繋いだヘキサが、イルマに向けた視線の意味を、今の彼は知るよしもなかった。
彼女の心の中で、イルマがプロヴィデンスであると言う疑惑が確信に変わっている事を。

満開樹編 完。

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