私の里帰り事件簿
私の実家はゴミ屋敷。
住んでいる本人たちはゴミだと思っていないのかもしれないけれど、
足の踏み場がなくて、服や食べ物、本人たちの趣味が散々している。
私は静岡で結婚して、
子供を授かった。
産む場所をどうしよう・・・。
と迷っていたが
大阪にいる姉が、従兄弟たち
(つまり自分の息子たち)に
なかなか会えないのは可哀想じゃないか。
実家に里帰りしたら良いと言った。
散々迷った挙句、「片付ける。」
と両親の言葉を鵜呑みにして
34週4日で帰省した。
玄関を入って絶句。
赤ん坊はここで寝たら良い。
と座布団一枚分だけ空白があり
あとは足の踏み場がなかった。
私の寝るところは?
おむつ置き場は?
私の旦那は来れるのか・・・?
無理やん。どう考えても無理やん。
意味わからん。なんなん、こいつら。
人の子のこと、なんやと思ってんねん。
すぐに、父親の姉宅に避難。
あんな所で、新生児と共に生活できるわけがない。
ありえない。
怒りや悲しさや騙された感で気持ちの整理ができなかったけど、
叔母(父親の姉)は快く受け入れてくれたので
そこで産後生活すると思っていた。
そうすると怒り狂った母がいた。
「なんで、お姉さんのところなの?
なんでうちじゃないの?寝れるでしょ!!!」
そのために、お風呂もトイレもリフォームしたん
やから!!!と。
いやいや。違う。
トイレや風呂をリフォームしたから
といって、
親の私の寝る場所がなければ、
新生児は生活できない。
友達も呼べない。
眩暈がする。
この人は何を言っているんだ。
そして、このゴミまみれの中で我が子を1ヶ月も生活させたくない。
怒りの気持ちが湧き上がる。
一緒に片付ければいいやん。
簡単に姉は言う。
もうすぐ35週になる体で。
ずっと夜勤もしながら働き続けて、
帰省してすぐにまた、
大掃除をしろという家族に
吐き気がした。
お腹が張る。
明らかにストレスだ。
父だけ、黙って、ゴミ捨て場に何度も車を出してくれた。
一日何度も、往復して、
ドンドン捨てた。
育休中の姉もたまにやってきた。
三人で黙々と片付ける。
母は仕事に行っている間、読んでいない本やいつの時代か分からないような缶詰。
いつ浸けたかのか不明の梅干しの
びんの数々。
捨てまくった。床が見えてきた。
仕事から帰ってきた母が泣き叫んだ。
「あの本はサインがしてあったでしょ!!!!!!!!」
と。夏目漱石?川端康成?太宰治?
有名どころの本はごっそり捨てた。
今や売れもしない古い本。
サインって何よ????
と聞くと、
「私が読んだ日のサインしてたの〜〜〜〜〜!!!!」
もう、コントかと思う。知らんやん。
お前のサインとかどうでもええねん。
あんたが本読んでいる姿なんか生まれてから一度も見たことがない。
大学の時に読んだんやもん!!
じゃぁ、もうええやん。知らんやん。一体お前はなんやねん。
40年放ったらかしの本やん。
という感じで、人のものを片付けるのは簡単ではないことを
身にしみて体感した。
梅干しを捨てる時も、
「これは、あんたが生まれた年につけた梅干し!!」と泣きながら食べていた。
完全に知らんねんけど。というか、
この家で誰も梅干し食べへんし。
なんで、毎年漬けてるねん。
そんなに梅干しに執着するんやったら、あんたが死んだ時に
梅干しで埋め尽くしてやるからな。
今捨てないなら、梅干しに囲まれた
棺桶やからな!!
私は母に遠慮なく物を言う。
それ以上に酷いことをされて育った。
反省していると言うけれど、
やられたことは忘れない。
それから、捨てまくり、片づけまくり
何とか、私と子どもが寝れる場所を確保した。
頑張れば、もう一人寝れる。
という事で、結婚して初めて夫を
家に呼んだ。静岡からやって来た。
大阪にいる姉の夫は足を
踏み入れた事がなかった
魔の家だ。
翌日の朝に破水した。
もう、正期産に入っていた。
三週間、片づけまくりの日々。
そうして、息子が産まれ、無事退院。
ゴミ屋敷を少し脱した家で
里帰り2週目に入ったかどうかの時
母と父が岡山に行った。
母が同窓会に行きたいから!と
父と共に出かけた。
日帰りの予定だった。
助産師である私は、新生児の扱いは慣れているので、
むしろ頼る必要もなく、
ご飯も私が作っていたので
何の問題もなかった。
むしろ、頼ってない。
頼られていた。
夜、父より
母が入院したと連絡があった。
命が危ないらしい。と。
腕を切り落とすかもしれないと。
はいっ????
そう。
同窓会の後に、庭に出て、伸び放題だった草取りをしている時に、何かに刺された。痛みが走り、蜂に刺されたと思い、大阪に帰ろうと思ったら
痛みがどんどん強くなり、
腕が腫れて、冷や汗が出て来たので、
病院に行ったが、
原因が分からず、転院、転院で
3つ目の病院で
マムシに噛まれていた事が分かり
分かった時は毒が周り
腕を切り落とすかもしれない
馬の血清を打ってとりあえずは様子を
見てみるけど、命も危ういかもしれないと説明されたらしい。
私はというと
動揺するというより、
そんなことある???
という感想。
明日、看護学校のともだちの家に
我が子を連れて遊びに行く予定だった。
おかんがマムシに噛まれて
行かれへんねん。
おとんに送って貰う予定やったけど
無理になってん。
と、絶対嘘やろ?それ。
というような話で断りを入れて
彼女のせいで、せっかく久々に
会えるはずだった友達に
会えなくなった。
迷惑しかかけないやん。
まぁ、息子は抱いてもらったし
最後までネタ作る母親やったなー
とむしろ助からない程で
妄想を繰り広げていた。
なんのこっちゃない、
2週間ほど入院し、
腕も切り落とさずに退院できた。
父親は入院の手続きなどで、
岡山に残っていた。
私の里帰りはそこで終了。
次は夫の実家(福岡)に移動する日が
決まっていたので、移動した。
つまり、私の里帰りは
ゴミ屋敷を片付けて、
産まれたばかりの息子と二人実家で
生活したという結果に。
たぶん、誰も経験したことがない
レア体験。
里帰り中に実家の母が
マムシに噛まれて入院。
そんな事すら忘れかけていた
6年後。新型コロナワクチンの
第一回目を打ったら、
マムシ柄が母の腕に出現したらしい。
注射を打った事で
マムシにまた噛まれたと
身体が反応していた。
蛇に噛まれて蛇柄に腕がなるって
漫画の中の世界だと思っていたら、
本当に、マムシの模様に
ぶわぁ〜〜〜っと広がることも学んだ。
サポートありがとうございます!こちらは今困っている世界の片隅の人たちに使われるよう寄付していきます。