姉の結婚式に行かなかった理由
私には2つ離れた姉がいる。
姉とは仲が悪いわけでもめちゃくちゃ良いわけでもなかったけど、
あの家で育って、姉がいてくれたことで私は救われてきた。
両親がおかしいと気づき始めた小学生の時に
姉に聞いたことがある。
「あの二人の血が混じってるの嫌じゃない?」
姉は堂々と答えた。
「私の血は私のものだ」
そうか、両親がどんなであれ、自分さえしっかりしておけば
良いのか。姉からそう学んだ。
成人して、看護師となり、お金を貯めた後、私は海外留学などを経てから
助産師の資格を取り、助産師として生活している時だった。
長年付き合っていた彼と結婚式をハワイで挙げると姉から聞いた。
その頃の病院の夏休みは一週間。
ハワイまで結婚式に家族皆んなで行く計画になっていた。
飛行機もチケットを取っていたが
それと並行して、友達からカンボジアでNGOを立ち上げないか?
と話がきた。母子保健でやってみないか?と・・・。
それこそ、私がやりたかったことだった。
姉に確認した。
「結婚式、行かなくても良いかな?」
「別にあんたが来なくても式は挙げれるし、好きにしていいよ。」
ありがたい申し出にハワイ行きの飛行機をキャンセルして、カンボジア行きの航空券を手配した。
一週間前になり、友達から泣きながら連絡があった。
カンボジアの立ち上げが無くなった・・・。と。
NGOを立ち上げたりする時には良くあること。
現地の人と揉めたり、現場が危険な状況になったり・・・。
今回も、向こうのトップと上手く行かなくなった。それだけだ。
友達は泣いていた。姉の結婚式をキャンセルまでさせてしまった・・・と。
別に私はハワイに行きたかったわけじゃないし、気にしないで!と伝えた。
心から、そう思っていた。
そして、その一週間を有意義に過ごすために考えた。
タイの大学に行っていた時の友達に会いに行く時間にしようと。
タイに行き、中国人の友達とタイドレスを着て写真を撮ったり、
マレーシアに行き、ミャンマー人Drと語り明かす時間にした。
その時間はかけがえない時間だったし、後悔なんてしていない。
姉の結婚式の写真を見て驚いた。
何年も口を利いていなかった姉と父親がハグをしていたからだ。
高校受験に失敗して以来、姉と父は口を利いてなかった。
姉が高校受験の頃の父は、夜中に帰っては家の中のものを投げ壊し暴れていた。
仕事でのストレスか、片付けない母親への当てつけか・・・。
私は眠ったふりをして息を凝らしていたが、
受験生だった姉は勉強の邪魔をされていた。
アトピーだった姉は眉毛もなくなり、皮膚も見るのも痛々しいほどに
なり、思春期の全てを奪われていた状況だった。
そんな、姉を母は庇い必死になって守ろうとしていた。
父は外に女を作っては帰ってこないことも良くあった。
母は諦めるでもなく、そんな父の居場所を突き止めようと
必死で色んなところに電話しては怒り狂っていた。
姉のことは庇うが、そのストレスで母は私に当たり散らした。
私が父のことを庇おうとするからだった。
何とか家族という形を維持したいが上に父が帰ってきやすいように
務めようとしたが、母には媚を売っているように見えているようだった。
父と姉に溝があり、私は母と溝ができていた。
だけど、ハワイはミラクルを起こさせていた。
口は利かないままだけど、ハグをしている写真があり
私は吹き出した。
良い時間だったんだろうと思う。
その後も、父と姉は口は利いてないが、母を介してやり取りはしている様子。
時間が解決することもあるんだと知った。
もちろん、結婚式に行かなくても、私と姉は今まで通りの仲のままで
「自分の血は自分のものだ」と小学生で言っていた姉は
変わりなく、「自分でやりたいことは自分で決めろ」
という精神で生きている。
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