小松海佑の漫談で救われる心、あると思います
小松海佑という芸人を好きになりました。
このnoteは小松海佑のネタに対する考察でも解説でもなく、ただ小松くんの漫談にハマりたてのお笑いファンによる「感想」とか、あえて超キモく言うと「わたしなりのアンサーポエム」とかそういうやつです。ポエトリーライティングです。だから口に出して読んだらほぼMOROHAです。隣にギターの男を据えて読むのがオススメです。
なので、なんかコアなファンの方に「全然ちげーよ解釈違いの新規乙(笑)」とか思われても、別に返す言葉もないというか、そもそも主張する気も、逆に共感してもらう気もあんまりないかもしれないです。
わたしはわたしの心にぶっ刺さってきてしまった小松海佑という芸人のネタについて思ったことを、チラ裏に書き殴った言葉を、せっかくならまとめておこうと思いました。
そしていつか未来の自分に「うわーこんなん書いてたな(照)」と、実家のタンスの埃くささまで鮮明に思い出せるようにここでタイムマシンのスイッチを入れておこうという、そういうごく個人的なことで書きますんでまあ、そういう目で見よう。
"あの頃"って名前の地層
『視聴覚室』というネタを見た。
このネタの話をするとき、手札に「あの頃」「鮮明」がないと絶対話せない。だからその2枚だけは確実に引いとかなきゃいけない。
あと、わたしとしては「地層」もほしい。
事実は積み重なって地層になり、それを俯瞰して歴史って呼ぶからだ。
このネタの前半部分はわたしの、わたしと似たような人間の、あるいは小松海佑の、「あの頃」って名前の「地層」を「鮮明」に思い起こすめちゃくちゃ精密な装置だった。
あの頃、わたしは別にただ平和だった。
廊下を一緒に歩く友だちもいるし、行きの自転車では音楽を聴いてたいから信号待ちしてるクラスメイトがいたら距離をとるようにしたりした。
あえて「1人」をとることができる。平和だ。
通学路っていう広い世界じゃ1人になりたいし、
学校っていう狭い世界では1人になりたくない。
でも思春期って、地層になって初めて他の地層との色違いで名前がつくから、そん中にいるときは案外鈍感だったりする。
特に孤独は、意識してても気づかないフリをしていることが多い。
だから大人になった今、小松海佑が持ってくる言葉を受け取りながら、あの思春期の地層に埋まったわたしのどうしょうもない暗がりの気持ちって、実はこんなに笑えるものだったんだ!と思った。
これってすごい発明じゃない?
小松海佑がドクに見えた。
ドクは新しい発明の手を止めない。
「大勝負でもあり、強がりですよ」
ここからは虚構だ。
虚構だけど、見たことある風景のように馴染みやすい虚構。
それは、わたしたちがあの頃ガチのチラ裏に書いて誰にも見せずに捨てたあの妄想の切れ端たちを、捨てずに取っといてくれたみたいだった。
なんかこうなると、悪の教典のハスミンみたいだ。
本当の平和を生きていた人たち(きっと思春期の地層がピンク色のような彼ら)からすれば、あの一世一代の大勝負であり強がりは『平和な教室でいきなり銃乱射』と同じぐらいショッキングな展開なはずだ。
だからうれしかった。
あれで笑ってる人がいっぱいいるのがうれしかった。
みんな色違いの思春期の地層を取り出して、心の中で爆破してるんだと思った。
あの動画で見る限り、聞こえる限りの笑い声の分、たくさんの爆弾が爆発したんだと思ったら、めちゃくちゃ楽しい。
そんなお笑い見たことないから。
ガーデニングには向いてない花
こないだの「サラリーマン川西」で、やっと生の小松海佑を見た。
白くて細くて小柄で、思ったより妖精みたいだった。少年のような人だなと思った。
「マニュアルなんで」って言われたくて。
まずそもそも絶対言われたくはないはずなんだけど「絶対言われたくない」ってみんな思ってるからこそ、店員側も自分からは言わないでおこうって個々で心がけているくらいのマナーの整った世界で、もうそんなこと言ってくるやつの方が少ないよなって分かってる上での「言われたい」っていう、めちゃくちゃ遠方から来たあるあるなんだな。
って一言のニュアンスを掴むまでの頭ぐるんぐるんの時間。その細胞のコスト。
次々に渡される言葉に待って待ってと思いながら、取りこぼさないように追いかける必死さ。鼻息の荒さ。その貪欲さ。
そういうのを小松海佑に捧げたいと思わせる魅力がある。
舞台で直接見て本当にそう思った。
小松海佑には、自分の中のれっきとした証明を明るみに晒す覚悟があるのに、それをちゃんと笑ってくれる客のことを
「初めて僕の言うことで笑ってくれた人に出会った」
みたいなキラキラした目で見るのが、たぶんその魅力の正体だと思う。
漫談中の小松くんは、「楽しそう」というより「うれしそう」な気がする。
たくさんの太陽光と土の栄養を吸ってすくすく育つ花みたいに可愛らしくて美しいから、こっちもたくさん水をあげたくなる。
でもあげすぎると枯れてしまうから、ガーデニングはむずかしい。
必死に伸びようとするハングリーなところも見ていたいしな。
とか思うこの時間、わたしの人生の中で小松海佑の色の地層がうすーく積み重なり始めている。