【SF】地球代表
「大気圏に突入したぞ」「よし、そこのレバーをガチャガチャしろ」「わかった」ルポポポ星人の乗った宇宙船が地球の上空に現れた。その宇宙船は船体が日の光を浴びて黄金に輝いていたため、それを発見した地球人たちはみな口を揃えて「昼間だというのに星が出てる」と騒ぎ立てた。昼間に輝く星を眺めている群衆の中の1人の男が声をあげた。「あの星から光線がでてるぞ。」確かにその星からは光線が飛んでいるのをその場にいる誰もが見た。そしてその光線がこちらに向かって飛んで来ていることに気付いた人々はいっせいに逃げ出した。逃げ遅れたある男、つまり最初に光線を発見した男はその光線が当たると同時に姿を消した。「むむっ、ここはどこだね」見慣れない部屋に連れ込まれた男は驚いて言う。目の前には見慣れない姿の生き物が2体。「おお、連れてこれたか。」「成功だな、早速解剖してみよう。一体どんな生物なのやら」途端、見たこともない生物を前に男は騒ぎ出した。「やや、なんだこの生き物は。頭は1つなのに胴体が2つ。四肢は全部で16本。それに表面はつるつるしているようでしっかりとした弾力がありそうだ。」「私たちはルポポポ星人だ。大人しく解剖されてくれれば、乱暴なことはしない。」男の顔が青ざめる。「解剖だって。我々地球人は解剖されたら死んでしまうのだ。私には妻も幼い娘もいる。私がいなくなれば生きていけない。頼む、返してくれ。」その言葉に、ルポポポ星人たちは顔を見合わせ、相談し始めた。「どうしたものか」「どうしようか。我々としても無理やり解剖するのは気が引ける。この生物の生態を調べたのちには彼らと友好関係を築いていくかもしれないのだ。我々の勝手な判断でこの星の住民と敵対することはできない。」「それではどうすれば良いだろう。」ルポポポ星人たちを見ながら怯えていた男も、しばらくすると落ち着きを取り戻した。男が恐る恐ると挙手して意見を言う。「そ、それじゃあ、私が代理のものを見つけてくるので、解剖されるのを許可するものが現れるまでそれを繰り返していけばいいのではないでしょうか。」その発言にルポポポ星人たちは顔を見合わせ、少しの間悩み、男の提案に乗ることにした。「それでは、このスイッチを持っていくが良い。」「そのスイッチを押して次の解剖候補に渡すとその地球人がこの飛行船にこれるようになっている。」男はほっとした表情で地上に帰った。「果たして解剖に乗り気な地球人は現れるだろうか。」「わからぬが、待ってみるほかあるまい。」それから何日か経ったある日、一人の地球人が宇宙船にやってきた。「あの、ここはどこでしょうか。」不思議そうな顔をして船内を見渡す女は、ルポポポ星人を見るや否や悲鳴をあげて泣き出した。「これはどういうことだ。解剖されてくれる地球人がやってきたと思ったら、泣き出したぞ」「わからん。もしや、あの男、この地球人を騙してスイッチを渡したんじゃなかろうか。」「それならどうしようか。」「聞いてみるほかあるまい」ルポポポ星人の説明を聞いた女は、男と同じように顔を青ざめて「解剖なんかされたくない」と泣き出してしまった。「むう、それではまた変わりの地球人を見つけてきてくれたまえ」そうして女を地上に送り返したルポポポ星人たちはまたまた相談をし始めた。「地球人は解剖されて死ぬのが嫌なのかもしれないな。」「そうかもな。解剖されて死ななくても少し時間が経てば死ぬのに、なぜこんなにも解剖されることを拒むのだろうか。まあいい、もう少し待ってみよう。」そこからは散々だった。宇宙船に来るもの来るもの全員が解剖されたくないと懇願し、中にはルポポポ星人を見たショックで死ぬものもいた。「生きている状態でないと意味がない。また光線を使って誰かを適当に連れてきてみよう。」何度地球人を連れてきても皆口を揃えて「死にたくない」と喚くので、さすがのルポポポ星人もだんだんと疲れてきた。地上ではルポポポ星人の件が世界中で報道されていて、地球代表の生贄を探し回っていたが、選ばれた代表も皆「死にたくない」と言うので、地上に送り返されることになった。そうして代表の候補もなくなり、地上ではランダムに選ばれた人が宇宙船に行くことが国連で決まった。世界的大企業の社長、島国の王様なども差別されることもなく宇宙船に送られては返される。そうして地球人でまだ宇宙船に送られていない地球人は後一人になった。その一人は、ある穏やかな国の田舎で牧場を管理している羊飼いの青年だった。彼が宇宙船に送られた。「ルポポポ星人のお二人ですね。この度は地球人代表として解剖されにやってきました。」青年は自分が殺されることで地球が救われるならそれでもいいと言う強い覚悟を持っていた。その青年のまともそうな様子を見て、ルポポポ星人は大喜び。「ようやく解剖されてもいいと言う地球人がやってきたぞ。もう待ち侘びた、手っ取り早く解剖の準備に取り掛かろう。」そう言った一人のルポポポ星人を静止してもう一人が言う。「この地球人はどうやら普通とは違うようだ。おそらく何かの病気になっているかもしれん。この地球人以外をランダムで選び強制的に解剖しよう。」