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ヘビが使う水の管理
どんな動物であっても水が無くては生きてゆくことができませんが、ことさらヘビはさまざまな形で水を利用しています。
飲む、浸かる、泳ぐ、冷やす、そして水の中の餌動物を捕食するetc…
種によって水への依存度には多少の差がありますが、いずれにしてもヘビにとって水が非常に大切であるということは間違いありません。
1.水を入れる容器の素材
ケージ内のウォータープールに設置する容器は、重い陶磁器製よりもプラスチック製のものの方が良いでしょう。
なぜなら、床材やシェルターなどを設置していても、個体によって容器の下に潜ろうとするヘビがいるためです。
床材に使用している土でしっかりとホールドしていても、容器が傾くなどしてこうしたヘビが押し潰されるという事故が起きないとも限りません。
こうした事故を予防するためにも、容器そのものはあまり重くない素材でできたものを使用する方が安全だと言えます。
2.ケージ内に複数のウォータープールを設置する
先に記したように、ヘビは水を色々な形で使用します。ケージ内に複数のウォータープールを設置することは、ヘビが好きな場所で、好きなタイミングで水を使うことができるというメリットがあります。
また、ウォータープールの中でヘビが排泄した場合、他の個体も含めてその水を使用しなくなる事があります。
ヘビはとても清潔好きで、身体に異物やその匂いがつくことを極端に嫌がる個体が少なくありません。複数のウォータープールを設置することは、こうした際の "予備の水" という意味でも有効です。
なお、複数のウォータープールを設置する場合、それぞれの容器を異なる形状とすると良いでしょう。
例えばヘビが身体を浸すことを想定した容器は浅め、遊泳用の容器は深め、そして飲用の容器はトレー状など……。
このように使用用途を想定しても実際にはなかなかその通りに使用してくれない事も少なくありませんが、形状を異にすることによってヘビが自ら使用方法を選べるというメリットがあります。
なお、ウォータープールの縁の壁面を高くするとヘビが水に気が付かない、というような情報を見ることがありますが、実際にはそのような心配はほぼ無用です。
ヘビは外部環境を察知する能力が非常に優れているので、必要な時に水にまったく気がつかないなどということはほとんど考えられません。
むしろケージ内の構造物に立体性を持たせ、ヘビの運動を促すという意味では複数のうち1つは高さのある容器を使用した方が良いでしょう。
3.水質の管理
観賞魚の飼育などではph値は弱酸性がよい、などと言われる事もありますが、ヘビの使う水についてはph値8.0前後の弱アルカリ性にリードした方がヘビが好む傾向があります。
麦飯石や溶岩石をケージ内に設置したウォータープールに入れることで、水質が過度な酸性傾向に寄ることを抑えられるほか、水中のバクテリアの繁殖を促すことから水質の安定を図ることができます。
またこれらの多孔質の岩石は、若干ながらも水中の汚染物質を吸着してくれる性質があり、過度な水質の悪化を予防することに役立ちます。
注意点としては ”過度に換水をしないこと” 。
もちろん明らかに糞などで汚濁している、匂いが発生しているなど見るからに不衛生な状態は論外だとしても、"見た目に透き通った水" がヘビにとって快適かというと必ずしもそうではない場合もあります。
換水の際の振動などによるヘビへのストレス負荷と、換水による水質の保全、双方のバランスを考えた際、一応の目安としての換水のタイミングは2〜3週間に1度。全ての水を更新するのではなく、おおむね1/3程度を目安に一部の水を抜き、新しい水と入れ換えるのが理想的です。
ただし、ヘビがウォータープールの中で排泄していたり、床材に使用した枯葉が水に浸かり、枯葉の色が水に染み出して変色しているというような場合には、発見した ”その時” すぐに水を入れ換える必要があります。
自然下、飼育下のいずれにおいても、ヘビの暮らしにとって水は欠かせないものです。水についてないがしろにせず、健全な水環境を用意してあげるということは、ヘビの長寿のための絶対条件とも言えるでしょう。