「優秀な営業」は肉食系?草食系?
キャリパーの得意領域「ジョブマッチング」
仕事の内容に照らして、どのような「潜在行動力」を持った人がその仕事に最もふさわしいのかを考えていくことを「ジョブマッチング」と言います。キャリパーが最も得意とするソリューション領域のひとつですが、中でも需要が高いのは営業・販売職のジョブマッチングです。
性格が明るく、話術も巧みな人がいると、つい「あいつは営業向きだ」などと評価してしまいますが、実はここに大きな落とし穴があって、大手企業でも独自の経験則や思い込みから誤った判断をしていたりすることがあります。
たとえばキャリパーが測定している指標の中に「好印象欲」というのがあります。読んで字のごとく、他人から良く思われたいという欲求が強く、不特定多数の人から特定の好ましい印象を等しく得ることにこだわる人はこの数値が高くなります。一見、営業にうってつけの指標のようにもみえますが、これがあまりにも突出してしまうと、顧客に対してできないことをできると言ってしまったり、伝えなければならない過失を伝えられない、というようなことが起こり得ます。
もちろんこうした難点は他の指標が高ければ補うことはできるので、好印象欲の高い人が一様にこのような問題を抱えている訳ではありません。しかし、こうして考えてみるだけでも、一口に営業と言ってもさまざまなタイプがあり、商材や職場に応じて人材を細かに見ていかなければならないことがわかると思います。
「仕事の相性」と「職場の相性」
かつてキャリパーが「人材監査」の依頼を受けた自動車販売会社のケースで具体的にお話しましょう。その会社には既に下記のような問題があることが明らかになっていました。
● 営業成績を上げる可能性の高い人材を採用できていない。
● 新規採用営業職の4人のうち3人が半年以内に辞めてしまう。
● 売れる営業スタッフと売れない営業スタッフの開きが大きい。
● 売れるお店と売れないお店の開きも大きい。
マネージャーを含めた営業スタッフ全員のキャリパープロファイルを作成し、潜在能力のいわば「棚卸し」を実行した訳ですが、数々の発見の中でも、殊に特徴的だったのは、よく売る営業スタッフが「肉食系営業」と「草食系営業」の両極端に分かれていたことです。
「肉食系営業」は説得力に優れていて、リスクを恐れず早急に結果を求め、迅速かつ大胆に営業を進める行動的なタイプです。一方の「草食系営業」は、説得行為や初めての訪問客にはやや控えめですが、とても丁寧で、計画的にじっくり営業を進めるタイプです。この両者はそれぞれに一長一短ありますが、それぞれの持ち味を生かして、たとえば「肉食系営業」は、一見客の多い都会に近い店舗で活躍させ、「草食系営業」は近隣の人たちと末永くお付き合いする必要のあるローカルエリアの店舗に配置すれば、より高い成果を上げる可能性があります。
しかし、これはあくまでも「タイプ」の話であり、ここに「能力」が掛け合わさってくると、話はそれほど単純ではありません。
特に緊急度が高いのは、能力がありながら、その力を十分に発揮できずにいる人材です。能力はもともと高い訳ですから、競合他社に引き抜かれてしまったりすれば、会社にとっては深刻な損害です。当人にとっての仕事の内容や職場環境が悪く、成果が挙がっていないような状況下では、会社側もさしたる注意を払っていないので、ちょっとしたきっかけや勧誘で簡単に離脱・流出してしまうのです。
そりの合わないトップ営業と店長
先に挙げた自動車販売会社でもその典型的な例がありました。
ある郊外の店舗では高い潜在能力を備えたトップ営業がわずか1名という惨状でありながら、店長とこのトップ営業のコミュニケーションがうまく取れておらず、お互いほとんど会話を交わすこともなく、店全体の活気も乏しいという状況に陥っていました。
キャリパープロファイルを見てみると、原因は一目瞭然でした。
店長は、ばりばり成約を取って来ないと気が済まない典型的な「肉食系営業」、一方のトップ営業は長年こつこつ自分の顧客を育ててきたこれまた典型的な「草食系営業」で、一人のお客様にいくらでも時間をかけるような接客をしていました。店長としては、このトップ営業を腹立たしく感じながらも、文句は言えないというようなありさまで、接客を旨とする自動車販売のお店がこんな状況では、お店の雰囲気も良かろうはずがありません。目標達成に向けて、何か方法論が共有されることもなく、店としての営業成績も伸び悩んでいました。
そこで、私たちの講じた対策は以下のようなものでした。
● 地元の顧客を数多く抱えている草食系のトップ営業はあえて残す。
● 肉食系営業の店長は都会に近い(つまり一見客の多い)大型店の店長として「栄転」させる。
● 代わりにキャリパープロファイルから草食系と判定された別の店の店長を着任させる。
● この新しい店長には部下の育成プログラムを実施し、自分で売ることよりも、むしろどうしたらスタッフに売らせることができるか、その基本をマスターしてもらうことを最優先課題とする。
この結果、この店は「草食系営業」の安定した営業チームを構成することができ、トップ営業ものびのびと力を発揮できるようになりました。
一方の「肉食系営業」の店長はどうなったかと言えば、都会型のこれまでよりずっと大きな規模の活躍の場を得て、自分と同じような「肉食系営業」の営業スタッフを特訓しながら、遠慮なく自分のやり方を押し通していけるようになりました。
勘や思い込みで人を採用・配属する危うさ
このようにジョブマッチングは単に「人と仕事の最上の組み合わせ」を考えるだけでなく、ときには「人と人との相性」や、お互いの「強みと弱み」に配慮し、その人の働く「職場環境」をも考慮に入れながら、その最上の組み合わせを考えていくことなのです。
私たちキャリパーには長年かけて世界中で蓄積した膨大な量のデータベースがあり、あらゆる職種のいわば鉄板の「成功モデル」を持っています。このプロファイルは国・年齢の区別なく、驚くほど共通しており、日本で働く外国人をどう評価してよいかわからないといった時にも極めて有効です。
これは逆に「その仕事で成功するためにはどのようなキャリパープロファイルを備えていればよいのか」ということが予めわかっているということであり、採用や配属に際して間違いのないベンチマークを持っているということを意味します。
「いい人材が採用できない」と嘆く前に、会社としてこの客観的なベンチマークを持っているか、そのベンチマークを基準に公平な評価ができているかということを今一度振り返ってみては如何でしょう。キャリパーはそんな時、間違いなくお役に立てると思います。