裁量権は有無じゃなくて、レベル感で考えるべき
時折、「裁量権がある」「裁量権がない」みたいな話題を目に見るし、転職の文脈になると、自分自身もそういう観点を一定重視している。
自分に限らず、積極的に転職を考える層は裁量権を重視している人が多い印象があり、企業側もそれを分かっているので裁量権を推しているところもあるだろう。
ただ、この「裁量権がある」状態の定義は、かなり曖昧で人によって捉え方が違うと感じることが多い。
本来、裁量は0か1ではなくグラデーションがあるものだと思っており、そん中で一定以上のレベルに達していれば「裁量がある」と呼んでいると思う。しかし、その線引が恐らく人によって異なることからこのような認識のズレが生じているのではないか。
ここにギャップがあると、会話が噛み合わず、結果的に皆不幸になるので、このレベル感の存在を認識して、もうちょっと具体化して擦り合わせようというのが、本記事の趣旨。
裁量権とは
まずは、裁量権という言葉自体を具体化しておく。
ここでは、ビジネスシーンにおいて自分自身の意見を反映できる権利、という意味合いとする。
「自分自身で意思決定できる」とすると、後述の裁量権のレベルでかなり高い状態になるので、「意見を反映できる」としている。
裁量権のレベル
続いて本題のレベルについて。
書き出しの通り、この記事の趣旨は裁量権は0/1でなくグラデーションがあり、その中でどういう段階にいるのかで議論すべきというところの主張であった。
当たり前といえば当たり前なのだが、それを念頭に入れた上でも、曖昧性のあるこの概念に関する認識のズレを避けるのは難しいだろう。
そこで、裁量権をもう少し具体化し、相対的に違いを示す考えてみた。
自分の意見としては、裁量権は「意思決定権の譲渡」「意思決定者間の風通しの良さ」それぞれの度合いの掛け合わせによって表現されるべきと思う。
それぞれ具体的にどういう段階があるのかをまとめた。
【意思決定権が譲渡されていない状態】
・一人の役員が全て意思決定している
・一部の役員間の意見で多くの事項を意思決定している
・子組織へ意思決定権が譲渡されている
・チーム単位で意思決定が一任されている
【意思決定権が譲渡されている状態】
【風通しが悪い状態】
・一人の社員が意思決定している
・一部の社員間の意見を基に、一部の社員が意思決定している
・意思決定者以外の意見発信の手段が提供され、それらを反映した上で、意思決定者が判断している
・意思決定に任意の社員が参加することができる
・全ての意思決定者の意見が取り上げられ、各意見者の合意形成をとった上で意思決定している
【風通しが良い状態】
意思決定権の譲渡については、意思決定者の階層がより低くなっている状態よ譲渡が進んでいるとしている。
階層型ではないフラット型組織では、実質的に意思決定者がより多くなっている状態だと思っており、そういう観点で組織内で「意思決定権の対称性の度合い」と表現できる。
意思決定権の譲渡進むほど、意思決定者に近づく、あるいは自らが意思決定者になりやすくなる。
意思決定者間の風通しの良さは、意思決定者に対してどれだけ意見を反映できるかという意味合いだ。
よりフラットに多くの意見を反映している状態を風通しが良いとしている。
短時間で思いつくものをざっと書いたので、それぞれもうちょっと細かい段階があるような気はしている。
裁量権に関する認識のズレ
上記のレベルがあった上で、例えば「チーム単位」で「意思決定に任意参加」できる状態を求めている人が、採用の場で「裁量権がある」と聞いた職場でギャップを感じることがある。
正直、採用の文脈だと企業側は候補者にメリットを提示したいので、ポジショントーク的にも「裁量権がある」と言うことがあるだろう。
そのような時は多分こういう主張なんだろうなというのをいくつか次に挙げてみた。
(将来的には)裁量権がある
入社直後は裁量ないけど、実績や信頼に応じて意思決定権渡す or 意見を聞くから意思決定に関与できるというパターン
(マネジメント層になりやすく)裁量権がある
スタートアップで実績があればすぐマネジメント層が任せられ、自分で意思決定できるパターン
(周囲の意見も聞いているので)裁量権がある
基本的に一部の人間で意思決定しているけど、周りの意見も聞いてるから、良い提案をしてくれたらそれを採用するよというパターン
どれも裁量権が得られる可能性があるという意味で嘘ではないものの、それぞれ満たすべき条件がある前提となっている。
勿論、入社してすぐ何でも任せるみたいな会社の方が稀有であるのだが、どうやったら任せられるかの前提について、意図的にあるいは組織内の当たり前で伝えていないようなケースは後々ギャップが生まれてしまう。
最後に
最近色々話を聞いたりする中で、裁量権という言葉にもにょることがあり、色々考えた結果を今回の記事をまとめた。
多分、透明性とか心理的安全性とかも似たような問題ありそうな気がしている。
この辺りの曖昧さがある言葉は特に具体的に自分が望む状態を具体化した方がいいだろう。