危機ウィー髪
大学二回生の頃にバイトしていたスーパーでの話です。
現在進行形の僕がバキバキ童貞なので、当時の僕も当然童貞なのですが、そのことは隠していました。そりゃそうです。同僚達は同年代、二十歳そこそこの多感な時期の連中に童貞なんてことがバレたら、地獄の童貞イジりの日々の幕開けですから。なので、それとなく彼女がいる(いた)感じを匂わせていました。
ある日、出勤前に更衣室で着替えていると、同僚達がラブホテルの話で盛り上がっていました。「あそこのラブホ行ったことがある」とか「こんな機能があった」とかそんな話だったと思います。
(これはヤバいな...)
絶体絶命のピンチです。「童貞」と「ラブホテル」なんて「おばあちゃんがくれるお菓子」と「食べ盛りの孫の味覚」ぐらい組み合わせが悪いです。もし、向こうから話を振られようものなら返す刀がありませんし、その瞬間、童貞がバレてしまいます。
僕は、かけ違えてもないボタンを何度も留めたり外したりして時間稼ぎに励みましたが、こんな日に限って早めに家を出たため出勤時刻はまだまだ先。狭い更衣室でずっと黙ってるのは不自然ですし、いたずらに時を過ごす作戦を諦めて会話に参加するを決意しました。
童貞の僕は、もちろんラブホテルなんて行ったことがありませんでしたが、ラブホテルの雑学を一つだけ知っていたので、その話をすることに。平然を装いながらも、少し声を震わせて、祈るような気持ちで...
「Wii置いてるラブホもあるらしいな」
「へぇ~」
「俺行ったとこスーファミ置いてたわ」
よっしゃ!めっちゃ自然!完璧!ありがとう任天堂!スーファミ置いてるとこもあるんや!任天堂すげぇ!
その後、ここに書くには憚れるような下品な会話を、名前は分からないけど大御所ということだけは分かるおじい俳優の武勇伝を聞かされるアイドルみたいな顔でやり過ごした僕は、結局、そのスーパーを辞めるまで童貞ということを隠し通しました。
今、考えてみると、童貞だからってそこまでイジられることもなかったと思いますし、そんなことぐらいでバカにするような奴らがいる職場ならさっさと辞めたらいい話だったんですけどね。
ちなみに、これは最近知った雑学なんですが、任天堂はラブホテルを経営していたことがあるらしいです。
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