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船舶のゼロエミッション運航に向けた水素技術のリアルを実体験!!

日本財団のオーシャンイノベーションコンソーシアムの学生向け中小造工コラボイベントとして実施している「~高崎先生と行く!未来への乗船体験2024~」を7月22(月)~25(木)に事務局として参加した当会西田常務よりレポートをします。日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムでは、主に理工系学生を対象に魅力的なイベントを実施していますので、興味を持った学生さんはホームページをチェックしてください。


1.         22日(月曜日)

初日は午後から兵庫県姫路市の会議室で、オリエンテーションと高崎先生からの講義が予定されており、午前は首都圏から姫路への移動が仕事、という私(西田常務)が、7時30頃千葉県の自宅最寄り駅で電車を待っていると、

主催者の日本財団Aさんから、「おはようございます。これから飛行機で岡山空港経由で姫路に入ります」とラインが届き、「なぜ岡山?午前中に別の一仕事?」と疑問に思いながらも「私もこれから東京駅に向かいます」と返したら、「新幹線止まってますので気を付けてお越しください」と驚きの返信が。

そこから混乱の1日が始まりました。

首都圏に向かう電車の中で、なんとか姫路に到達すべくスマホを駆使しましたが、航空便は大阪神戸岡山含め軒並み満席、鉄道での迂回ルートも全車指定席のあずさやかがやきも午前中満席の状態。

その時点の「再開は早くても昼以降」というアナウンスを、熟考の上でもっと遅くなりかねないと捉えた私は、最低でも今日中に姫路に着くことを優先し、立ってでも乗ることはできる鉄道迂回路を選びました。

松本経由であずさ、しなのを乗り継いで、夕方になりましたが、姫路になんとか到着しました。

得られた教訓としては、遠方で大事なイベントがある場合には、「朝起きたらまず交通状況を確認する」でした。

混雑する浜松駅(静岡TVより)。急がば廻れです。

(たぶん)高崎先生の講義は機械や船舶以外を専攻している学生にもわかりやすく、明日から乗船するさんふらわあのエンジンを見た際に、内部の構造や動きも想像できる、有意義なものだったと思います。

ちなみに高崎先生は福岡からで、学生参加者も九州方面が多く、関東の学生2名は週末から(観光で)関西入りしていたため、新幹線の影響による初日不参加学生は1名だけと、ほぼ影響なしでした。

講義中の高崎先生

2.         23日(火曜日)

2日目は姫路港近くの播磨臨海工業地域にある姫路安全スクールにバスで向かいます。このスクールは、トラックで全国にLNGを輸送している、ガス物流ネットという会社が、トラックドライバーなどLNG取扱い者向けに安全講習を実施するために本社内に作ったスクールで、海事業界も船員や造船所取扱者向けの研修に利用させてもらっております。

このようなことを移動のバス内で説明しながら15分程度で到着。

午前中の2時間は座学です。引火性ガスの爆発危険性、酸欠の発生メカニズム、極低温の危険性などに関して、実際の爆発映像、再現映像なども織り交ぜた大変印象深い講義でした。

座学の後はバルブや配管、更にはタンクローリーなどのカットモデルの見学、屋外における配管内水滴飛ばし方実体験、液封の際の圧増加実体験などを行いました。

ローリーから模擬燃料タンクへの接続部には専ら船舶へのバンカリングのみに使われるカップリングを用意していただいており、みんなが着脱を体験できました。

明朝の別府港でのトラックtoシップのバンカリング見学に向け準備万端となったところで、お世話になった姫路安全スクールに別れを告げ、いよいよ、日本初のLNG燃料フェリーさんふらわあくれないの待つ大阪南港に向かいました。

さんふらわあの乗船は18時頃で乗船後すぐにレストランを利用でき、豊富な種類のバイキングの夕食と自動サーバーからの生ビールを堪能しているうちに銅鑼が鳴り1905の出航、食事後は油の臭いのしないデッキで心地よい海風にあたった後は、学生は業界研究オリエンテーションの後、就寝。

座学(危険性をわかりやすく解説)
 高崎先生が先頭で熱心に質問
ローリーカットモデルの前で記念撮影
ボーディングブリッジから船首方面

3.         24日(水曜日)

3日目の朝は、船からのサンライズを眺めてスタート。お楽しみのショートクルーズは別府港入港で終了。

作業着に着替えて下船し、バンカリングの見学になります。

とにかく暑いので、ターミナルにて案内して下さる機関士の方から注意事項などガイダンスを聞き、ほどなく、LNGトラック3台が待機するバンカリングの現場へ。

トラックを囲んだ一定の範囲が危険区域としてフェンスがおかれ、内側では携帯の電源オフ、帯電防止の作業着着用が必要です(写真は危険区域外からのもの)。

現場での説明や作業も昨日の姫路安全スクールで習ったことが頭に入っているため、すっと入ってきます。

船とトラックがカップリングで連結され、バンカリングが始まると、冷やされた配管が白くなり、トラックからは冷気が漂ってきます。

まさに低脱炭素燃料移送のリアル体験。
※ なぜ冷気が漂うかは、菅等の温度が下がり、飽和水蒸気量(1㎥の空気に入ることができる水蒸気の量)が少なくなるため、小さな水滴が生じ冷気となって漂うため。

バンカリングが終わると、船内見学へと移ります。

撮影不可ですが、昨晩泊まっていたなじみある客室廊下を歩き、乗客立入不可のドアを開けた途端、廊下の壁がカーペット生地から塗装鉄板むき出しのおなじみの船の廊下が現れ、操舵室へと進みます。

操舵室から真夏の太陽にさらされた上甲板に上り、レーダーや救命設備を見ながらそのまま船尾上甲板上にあるLNGタンクまで到着。

ここからは、機関室の方に降りていきます。機関部では、制御室でガイダンスを受けた後、普通のディーゼル主機とは形状が異なる某社製主機、発電機、プロペラシャフト、舵機室などをほぼフルコースで案内していただきました。暑い中ありがとうございました。

商船三井さんふらわあの乗組員の方々に別れを告げて、翌日のHANARIA乗船に備え、小倉に移動しました。

小倉では、翌日の乗船に備え、HANARIAのオリエンテーションです。水素燃料電池で航行できる国内初の旅客船HANARIAは、プロペラを電動機(所謂モーター)で回して推進力を得る方法で、電気供給ユニットとしては、発電機、リチウム電池2つ、水素燃料電池2つの計5系統があり、この発電機がバイオディーゼルとの混焼可能となっています。

発電機を使うハイブリッドモードと稼働させないゼロエミッションモードがあり、元々洋上風車作業船として、関係者を運搬する目的で建造されたHANARIAは、今春に響灘白島沖の洋上風力発電所予定地と小倉港との往復約30kmのゼロエミッション航行を実証したとのことでした。

フレキシブルホースの陸船間接続完了
冷気が漂ってきます(涼しい!)
船内見学を終え、皆で記念撮影

4.         25日(木曜日)

小倉駅から歩いて約10分の藍島・馬島行渡船場にHANARIAは待っていました。

私(西田常務)は、昨年9月の福山市の本瓦造船での進水式で見て以来ですが、航空機を模した丸型形状は変わらず斬新で、後部に水素燃料電池のユニットを2列4段積んでいます。

11時に予定通り出航し、門司港周辺までの小一時間のクルーズです。船内は、1階居室前面に超大型パネルがあり、5つの電源からの電気供給状況が示されています。

階段を昇った2階は屋根付きオープンデッキで、この日のような酷暑でなければ、心地よい風を浴びてクルージングできそうです。

また、この船には車いすスペースや手すり、トイレ、段差無しなどバリアフリーの配慮もなされています。

船は途中、アナウンスと共にゼロエミッションモードに入ります。

その瞬間、発電機の音が消え、聞こえるのは波の音ばかり、となることを期待していましたが、発電機の音が消えたのは確かですが、フルパワーのエアコンの音やインバーターの音が結構残り、逆に、普段、発電機の音を減ずる居室の優れた防音構造を感じた次第です。

機関室とは言わずとも2階デッキにいれば、違いを顕著に感じられたかと思います。

1時間弱のクルーズを終え小倉港に帰着。乗組員の皆さんありがとうございました。

出発を待つHANARIA
ゼロエミッションモード航行を示すパネル
1階船内の様子(船首部分から後方)


2階デッキに集合

以上、学生にとっては、楽しく、かつ、有意義な4日間だったと思いますが、これから進路を決めていく学生さんが、新燃料対応の船の運航に関し、知識や経験を持った様々な人が連携して初めて動かせていることを体感できたのではないかと思います。

9月の第2回目では、更に、新燃料船を造るために努力している造船所の訪問が加わりますので、自らの進路を正しく考える助けになれば良いと考えています。