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新人造船マンが大奮闘!!汗と努力とちょこっと青春!技能の伝承「東日本造船技能研修センター」に密着!【後編】
様々な造船所の新入社員が仲間たちと一緒に3カ月間の研修に挑む、東日本造船技能研修センターで密着取材!!
前回に続き、新人造船マンの奮闘記をお届けします。
前編の記事はこちらから↓
最初の密着からさらに2週間後、私たちは再び東日本造船技能研修センターに向かいました。
研修が始まり、2カ月。
研修生が学んでいるのは「造船技能」
造船技能と一口に言いますが、職種も多岐にわたり「溶接」「切断」「クレーン」「塗装」「配管」「玉掛」「機関」等いろいろあります。
ここ東日本造船技能研修センターでは、4月~6月の3カ月間で新入社員等を対象に、安全教育から、社会人としての心得、造船業に必要な基本的な知識と技能を段階的に学ぶだけでなく、現場で必要な各種資格(クレーン運転技能、玉掛技能、ガス溶接技能、アーク溶接技能、NK溶接士技能資格等)を取得します。
さて、それでは実際の研修の様子と未来の造船マンの奮闘記(後編)をお届けします!
技能の伝承が未来をつなぐ!
仲間がいるから頑張れる!大変だけど絶対に諦めない!!編
「おはようございます!! よろしくお願いします!」
密着初日にくらべ、研修生の仲がさらに深まり、この日もとっても賑やか!
明るい雰囲気で練習に励んでいました。
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この日の研修は、アーク溶接(突合わせ)の練習。
まっすぐに溶接していた最初の取材時から、今回はさらにレベルUPし、手溶接と半自動での突き合わせ溶接になっていました。
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アーク溶接は、溶接棒と材料の鋼板との間にアーク放電を発生させて、溶接棒と鋼板を溶かし、鋼板同士を接合させます。
溶接の難しさは板と棒との間の角度を定められたとおりに定められた速度で棒を動かさなければならず、溶接により材料から盛り上がった部分(ビード)の高さを整え、溶接始点と終点も滑らかに仕上がるように処理をしなければなりません。
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深く知れば知るほど、職人ワザの世界のすごさが分かりますね。
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そして今回驚いたのが、研修生の手つきが前回と明らかに違うということ。
溶接の内容は難しくなっているのですが、以前にくらべると全てがスムーズ。
私たちから見ても、圧倒的に上達しているのが分かりました。
実技で大変なことを聞くと、溶接している最中の熱さや、分かってはいるけれど直ぐに上手くなる訳ではないことだと教えてくれました。
「くじけそうになったことはないですか?」という質問には「大変だとしても、これから仕事で必要になるスキルなので極めたいという気持ちの方が大きい、1人ではないので頑張れます」とのこと。
突き合わせ溶接で接合した鋼板がこちら↓
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もっと上手くなりたい! と黙々と頑張る研修生でした。
この日は、午前中までの取材となってしまいましたが、続きは最終日!
輝く未来へ羽ばたいて!
研修が大切な気づきを産む!私たち、成長しました!!編
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いよいよ、3カ月に及ぶ研修も最終日となりました。
私たちが到着した頃には、研修生が試験用の作品をつくっている真最中!
今まで研修で学んできた溶接技能をフル活用して、1人1作品をつくります。
そして、出来上がった作品の発表会。
お互いに「検査」をして溶接に欠陥がないかを評価。
まずは、溶接の出来栄え、鋼板の角度などをチェック!
最後に、箱型の作品の中に水をいれて水漏れがないかの漏洩試験を行います。
研修生には評価シートが配られ、良いと思った人に〇をつけて、1番〇をもらえた人が最優秀作品ということになります。
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「自分の作品には〇つけちゃだめだからね!」
と念を押すつる先生(笑)
「ここ斜めになってますねー(笑)」
「これキレイだけど、あーおしい!ここがちょっと(笑)」
と、研修生たちはお互いに指摘し合いながら和気あいあいと評価しあっていました(笑)
続いて、漏洩試験に移ります。
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「大丈夫?漏れてない?お!いい感じじゃない?!」
「待って!ここ見て!漏れてない??」
「あ“―――――漏れてるーーー!!!」
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今までの密着の中で一番の盛り上がり(笑)
水漏れを見つけた瞬間、すごく悔しそうな研修生のみなさん。
作品を目でみただけでは、水漏れが起きるかどうか判断できないため、自分ではうまくできたと思ったのに、水が漏れだしてきた瞬間はショックだそうです。
最後に、水をいれた作品に外側から空気をおくりこみます。
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空気を送りこむことで、作品の中の水に泡や波が発生した場合は、溶接面に隙間ができていることが分かります。
「あ“――泡でてきたよ!」
「うわー色んなところから泡でちゃってる。。」
「あ!これあんまりでてない!すごい!」
みんなで大興奮!
水が漏れて泡が出てきて、研修生のみなさんの悔しさもピークに達します(笑)
ですが、実際に船を建造するとなれば、船体から水が漏れたり隙間があったりしては大事故に繋がります。
その為、繰り返し技能を磨きあげていくことで、安全かつ、仕様を満たす船を建造していけるようになるのですね。
今回の試験を通して感じたことを聞いてみると
「作品はガス切断の実技の時に、自分で切断した鋼材を使っているのですが、いざ溶接するとなった際、部材の断面が整っていないところがあると、溶接がとてもやりづらかったです。なので、部材を正確に切断することの大切さも感じました。」
と溶接についてだけでなく、1つ1つの行程の重要性にも気づき良い経験となったそうです。
最後の試験が終わると昼食です。東日本造船技能研修センターから頑張った研修生の皆さんへご馳走のサプライズ!
つる先生と校長先生も一緒に、みんなでご飯を食べました。
達成感と共に食べるカツ弁当は格別ですね!
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こうして私たちが、研修生の皆さんとお会いできるのも今日で最後かと思うと急に寂しさがこみあげてきます。
それにしても、みんな本当に良い笑顔!!
ご飯の後は、研修生1人1人によるスピーチがありました。
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「この3カ月間の研修では、学生時代にはやったことのない溶接に挑戦することもできてとても良い経験ができました。
今回、女性が自分1人だったので辛かった時もありますし、大変だったこともありました。
でも、ここで身に付けた技能はこれから先、仕事をしていく中で生かしていけると思うので頑張ることができました。
無事に3カ月間の研修を終えることができて良かったです。」
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「研修が始まった当初は、毎朝早く起きることがきつかったり、溶接は自分でも下手だなと感じてしまうくらいうまくいかなかったりしていました。
でも今となっては、朝は早い時間でも自然に起きることができるようになりましたし、溶接も当初とくらべると大分良くなったと実感しています。
3カ月間で少しでも成長できて良かったです。」
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「研修の実技が始まった当初、自分は溶接ができていると思っていました。
ですが、溶接をしてうまくいったと思いつるさんに見せると、ダメだしをもらうことが続き、自分ができていないことを自覚した時は、本当に悔しかったです。
そこから、さらに気合いをいれて溶接に取り組みました。
研修が後半になるにつれて「良いじゃん!」と言ってもらえることが増えてそれがとても嬉しかったです。」
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「研修のはじめにみんな一言ずつ話す場面があったのですが、おもしろいことを言おうとして派手にスベッてしまいかなり落ち込んだこともありました。
溶接は、学生時代に経験があったので、比較的スムーズにできてはいたのですが、みんながぐんぐん上達していく姿を見て、自分ももっと上達しなければと焦る気持ちが自分の成長に繋がったと思います。
みんなと一緒に最後まで頑張ることができて本当に良かったです。」
それぞれに、自分の成長を実感でき、頑張って良かった!
仲間として時にライバルとしてみんなと一緒に研修ができて良かった!
と目を輝かせながら話す研修生のみなさん。
東日本造船技能研修センターをご支援くださっている日本海事協会、そして、3カ月間の研修費は全て各会社が負担してくれているそうです。
研修期間中もお給料と手当がでるとのこと。しっかり学べる環境を与えてもらえたことが本当に有難く、感謝していますとおっしゃっていました。
頑張ってる姿を見てきた私たちも胸が熱くなりました。
みんなの勇姿本当にかっこ良かったです!
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3カ月間本当にお疲れさまでした。
取材にご協力くださりありがとうございました!!
皆さんのこれからのご活躍を心より願っています。
東日本造船技能研修センターについてのお問い合わせは当会HPをご参照ください↓
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