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MEGURI2040陸上支援センターで感じた未来の船員の働き方

7/18(木)日本財団が推進する、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の取り組みの中で開発を進めてきた、陸上から複数船舶を遠隔で航行支援する「陸上支援センター」が、完成しました。

早速、新しもの好きの当会西田常務が見学に行ってきましたのでレポートします。

日本財団の記者発表を見た私(西田常務)は、いろいろ当たった上で、MEGURI2040の桑原PD(プロジェクトディレクター)にたどり着き、是非、内覧させてくださいとお願いしたところ、同様な希望が多数あるらしく、8/8(木)にFOC(陸上支援センター)の見学希望者をコマで割って受け入れるので、西田さんは9:30のコマでどうですかと言われ、早起きして関東から古野電気社屋内(兵庫県西宮市)のFOCに向かいました。

ちなみにFOCはFuruno Operation Center の略と思いきやFleetのようですのでお間違えないように。

なお、当工業会の会員である中小型船造船事業者の経営者たちに、このFOCの見学を推奨すべきかどうかを判断したかったのも背景にありました。

FOCの構成(日本財団HPより)

FOCに入って手前には、大型プロジェクター、大型テーブル、ソファ、椅子などで構成されるラウンジスペースがあり、余裕で10人くらいは座れ、まずは、桑原PDから大型プロジェクターでMEGURI2040第2ステージのプレゼンを受けます。

①システムを構成するのが、船舶、通信、FOCの3者であること、
②第2ステージでは実証試験を1回だけではなく長期間に渡って実施し実用化への道筋をつけようとすること、
③第2ステージで使う4隻の船舶をFOCで遠隔支援しながら同時運航実証を行うこと、などがポイントとして入ってきました。

次に実際の陸上支援設備の見学です。

ラウンジスペースの奥には、ディスプレイ3面で構成される一番奥の「フリート監視ブース」、椅子とディスプレイが一体となった「個別支援ブース」2個(航海&機関)と一番手前の「ブリーフィングテーブル」の3つで支援機能が構成されており、手前のブリーフィングテーブルの紹介から始まりました。

一言で言うと、Google Earthのようなものに海図情報や港の情報が入っている感じで、各属性情報が画面タッチ操作でポップアップしてきます。

手操作への反応は素早く、大画面で画質も良好、と優れたモノでした。

ブリーフィングテーブル

続いて、奥のフリート監視ブースの説明に移り、まだ船舶側の工事が完了しておらずデータ通信が確立されていないため、実際の機能を見せることが出来ないので、デモ映像を使って機能の説明がされます。デモ表示は、支援対象フリートの位置や速力、海図上の航行位置、CO2排出状況(CII)が表示されていました。

実際の支援業務では個船のリアルタイムの運航情報などが表示されるようです。

フリート監視ブースを説明する桑原PD

最後に個別支援ブースの説明になりますが、航海部と機関部毎にディスプレイ一体型モーションチェアーとでも呼べるような機能を持ったブースになります。

椅子に座れば手元にボタンが3列×2あり、上からディスプレイの上下、椅子自体の上下、フットレストの上下を操作できます。

例えて言えば、シェル型のビジネスクラス座席に身を任せての動きに似ています(数少ない搭乗体験より)。

この個別支援ブースでは、対象4隻各船の船橋からの画像(目視と同様)、レーダー情報、必要な航行支援情報、機関の回転数や温度、配電などの情報がリアルタイムで入って来て、監視、遠隔支援ができるものになり、乗船する船員の業務を一部代替する想定になります。

この個別支援ブースを見て、率直に「乗って操りたいな」と感じました。

実際に子供たちにブースを体験させると「将来絶対これで操船する」と言っていた子がいると桑原PDが嬉しそうに言っていましたので、現状では、子供たちの人気職業で、宇宙飛行士や航空パイロット、鉄道運転手など同じ乗り物運転手系で後塵を拝している船員(個人の主観です)が巻き返せるツールと感じた次第です。

また、未来の船員は、若いときはたくさん船に乗り、ベテランになるとFOCに勤務して夕方家に帰るという働き方もあるのかなと感じられるなど、将来に期待を持たせる斬新なコックピットでした。

個別支援ブース(航海部)
個別支援ブース(機関部)

なお、今回の見学の目的の一つであった、中小型船造船事業者の経営者たちに、このFOCの見学を推奨すべきかどうかについては、「是非訪問して、視察するべき」という結論に至りました。

これは設備自体に一見の価値があることはもちろん、桑原PDも言及していましたが、個別支援ブースに提供される情報は船の運航と一体のものになるため、情報の同期が正常に機能することは、船の発注者に対する造船所の責任となり、納期を考える上で考慮すべき事項になる可能性があるためです。

更には船と一体の考え方はソフトにとどまるとも限りません。

実際の建造に際してはこのような背景もあるので、MEGURI2040に参加していない者を含め造船所の経営者も見学して、体感しておくことが肝要だと思いました。