突然のバーベキュー&添寝
函館から青森の大間港までフェリーで渡ってから、太平洋側を南下している。
7月に入って夏らしい気候の中を自転車で快走する。
その日は岩手県二戸市に無料のキャンプ場があることを地図で見つけていた。
入り組んだ住宅地から少し山道を登ったところにあるようだ。
夕暮れが迫る中で道の確認がしたくて、自転車を止めて畑の中ほどで作業をしているおばあちゃんに声をかけてみた。
「こんにちわー!キャンプ場ってこの道で合ってますかー?」
「この道を突き当たりまでいって、左に曲がれば案内板があるよ!
にいちゃん、きゅうり持ってくか?」
「いいんですかー!?いただきます!」
「みそも欲しいだろ。用意しとくから、ちょっとしてから取りにおいで。」
「ありがとうございます!」
不足がちな野菜をいただけるのはすごく嬉しかったので素直にいただく。
キャンプ場に荷物を置いてから自転車で山を降りてきゅうりを貰いにいくと、ひいおじいちゃんから孫までの四世代家族が屋根付きのガレージでバーベキューコンロの準備をしていた。
「今晩、焼肉するから一緒に食べてけ。」
「え、、、いいんですか?」
バーベキューに招待され、肉をほおばっていると、
「風呂はいってけ」とサービスが追加。
「い、いいんですか?、、、」
するとさらに、「今晩は泊まってけ」
「えっと、、、キャンプ場に荷物が、、、」
野菜までは素直にいただいたのだが、さすがに遠慮が出た。
晩餐の途中で聞くと、その日はお子さんの習い事が急遽中止になったのだとか。
大家族が全員揃った食卓は数ヶ月ぶりの事だから、盛大にバーベキューをしよう!
となったところに私が現れたのだとか。
なんてタイミングのいいヤツなんだ!
と運命的なものを感じて色々とお世話をしていただいたらしい。
風呂に入って客間に布団を整えてもらっていると、末っ子である小学一年生の男の子がやってきた。
お母さんとなにやら相談し、「今日はお兄ちゃんと一緒に寝るか?」という結論にいたった。
末っ子君はバーべキュー中にねじりハチマキをしており、周囲の目を集めて沸かせるお調子者という風だった。
明るくて家族の中心的存在だったので人懐っこくもあるのだろうとは思っていたが、まさか一緒に寝る事になろうとは。
お母さんは「この子がすいません、、、」と少し申し訳なさそうにしていた。
「全然イヤではないので大丈夫ですよ」と私は返したのだが、布団が追加される気配はなく、末っ子君の愛用していると思しき枕が私の枕の横に追加された。
「ん?まさか、ひとつの布団で一緒に寝るのか?」と考えているとお母さんが、「じゃ、ごゆっくり」と宿の女将風に退室してそっとふすまを閉めた。
流れに身を任せて布団に入ると、末っ子君は私の左腕に巻き付くような体勢をとった。いつも両親のどちらかとそのようにして寝ているのだろうか。
非日常すぎる状態であるものの、私も日中の自転車疲れがあるのでいつも通り横になってから10秒で眠りに落ちた。
朝、目が覚めるとまだ少年が巻きつくようにして寝ていた。
ずいぶん人懐っこい子もいたものだが、いま思うと初対面の人間と息子を二人きりで寝かせる親御さんもすごい。