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どうしてもたどり着けない場所 〜嗚呼、職人の絶望日記〜

物理的に距離が遠いわけではないのに、なぜかその場所にたどり着けないということがある。
そして、そういう日は偶然が重なるものらしい。

昨日がそうであった。

朝に思いたって、自宅から50㎞ほど離れた滋賀県彦根市のカフェ&工房に見学へ行くことにした。
以前仕事でご一緒した方が経営しているのだ。

そして、失敗は突然やってきた。

午前10時にバイクで家を出て、びわ湖大橋を渡ろうとした時である。
料金所をスムーズに通過するために、小銭を準備しようとしたが、財布が見当たらない。
そこではじめて、財布を置き忘れてきたことに気がついた。

仕方なくUターン帰宅したらもうお昼前だったので、とりあえず昼ごはんを食べた。

日焼けしただけで午前中が終わった。


「もう今日はやめとこうかな、、、」
とも思ったが、犠牲になった午前中に報いるためにも、午後に再出発することに。


そして、またしても苦難はやってきた。

びわ湖大橋までをかっとばせるバイパス道で、前を走るトレーラーから砂粒がぱちぱちと顔に飛んでくる。
それが目に入って痛い。

「早く追い越したいな」と思いながら、目の痛みに耐えるあまり、びわ湖大橋を渡るために降りなければならないインターチェンジをいつの間にかスルーしていた。

しかも、降りる予定だった次のインターまでをもスルーしていた。
その失敗に気がついたのは、やっと2車線になってトレーラーを追い越した後だった。
我ながらバカすぎて笑ってしまう。

そんなこんなで2つ先のインターチェンジで折り返すしかないなと思っていたら、次は局所的なゲリラ豪雨に襲われる。

これはインターチェンジの降り口を2つもスルーしなければ出会わなかったやつだ。
服のまま海に飛び込んだかのように全身ずぶ濡れである。

「まぁ夏やから、走ってるうちに乾くやろ。」

一時間後、ようやく彦根のカフェにたどりついた。
片道50㎞にもかかわらず、最初に家を出てからすでに6時間が経過していた。

夏の日差しと、バイクの走行風で、ずぶ濡れだった全身もほとんど乾いていた。
バイクに乗っていても、風の当たりにくい股間部分をのぞいては。

股間だけがぐっしょり濡れた、お漏らしスタイルで入店する。


そして、その日ぼくは、数々の苦難を乗り越えてたどり着くべき使命を背負っていたのだと思わざるをえない出来事が起きた。

入店してから、店主と話をしていると、お互いが進撃の巨人ファンであることが偶然発覚した。

すると店主がこんなことを言った。

「次のアニメの放送は、NHKらしいですね。」

これはもしや!?
と僕は思った。

「え?もう2話まで放送終了してますよ、、、」

そう、店主は大事な進撃の巨人アニメ新シリーズの放送開始を見逃していた。

しかも、今までのアニメ放送をすべて録画していて、新シリーズも楽しみで楽しみで仕方なかったのに、すでに2話が過ぎ去っているという、悔やんでも悔やみきれない状況に。
仕事のしすぎが原因である。

店主は、自身もクリエイターであることから、違法アップロードされたものは絶対に見ない主義だという。

あまりにもかわいそうだったので、「僕が録画したやつ、データ移せるか5分だけ調べてみますね。5分経ってもわからなかったらあきらめてください。」

そう言い残して店を出てきた。


帰りは何事もなく無事に帰宅した。

それから、いつもは後回しにする僕がめずらしく、帰ってからすぐに録画データのコピー方法を調べた。

「たぶんできない」という結論にいたった僕は、2分で調べるのをやめた。

「あきらめてもらうしかないな。」
と思いながら、なにげなしにネットでNHKの進撃の巨人のページ見てみると。

「進撃の巨人 season3 1・2話の再放送が決定!
8月2日 11時55分〜」

うわーーー!
今日やないかーーーい!!

コロンブスがアメリカ大陸を発見した時は、こんな気持ちだったに違いない。

この大発見をすぐさま店主に知らせてあげると、たいそう喜んでいた。


バカバカしい苦労をした先に奇跡的なタイミングの出来事が待っていたなんて、人生っておもしろいもんだなぁ。

まったく仕事してないけど、なんだか笑える一日だった。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。