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【30分台本 ♀2♂2∞1】 Honey&Bear  最終話 【蜂と帽子と黒百合と】

【あらすじ】
 実在するロサンゼルスを舞台に、派手な盗みを繰り返す『怪盗Honey&Bear』。それを追うロス市警強盗殺人課のマーシャルとアレックスの元に、ある日、彼らからの予告状が届く。
 『2月28日 午前-時 ロサンゼルス自然史博物館、
 ベニト石を頂きに参る。Honey&Bear』
 その予告状から、彼らが思いもしなかった事件が始まるのであった……。
  
【シナリオ約束事項】
利用条件などはシナリオの約束事項をお読みください
https://note.com/caitsith151/n/n2c2f578d39d0

その他:
・∞は男性、女性どちらでも演じていただけます。
・ベニト石は、べにといしで統一してください
・note版とは一部表現が異なります。使用時は各メンバー使用台本を統一してください。
  
【登場人物】
  
○ハニー
性別・♀
怪盗ハニーベアのプランの立案、盗み実行役など体力面を担当。
セクシーでキュートな見た目に反して体術などを得意としており、ベアとはとある事件をきっかけに、共にチームとして『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を続けている。刺激的なものや、面白そうなものを見つけると「セクシーじゃない?」という口癖がある。
・性格:過去の記憶を失っているが、楽天的で好奇心のままに現在を生きている。頭脳明晰だが、あくまで動機は「楽しいか楽しくないか」。人を茶化すのが好きな小悪魔タイプ。だが、過去を思い出しかけるとナーバスになる。
・好きなもの:スリル、美しいもの、ミステリアスなもの。かわいいもの。
・参考年齢:19〜28
・雰囲気キーワード:セクシー、キュート、小悪魔、アクティブ
・口癖:セクシーじゃない?

○ベア
性別・♂
怪盗ハニーベアのハッキング、電気、機械系統、ドライバーをこなすオタクハッカー。Honey &Bearでは頭脳面を担当。とある事件をきっかけに、ハニーに『盗み』出されたことをきっかけに、チームとして『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を繰り返している。本人は今の暮らしを気に入っており、ハニーは相棒としてしか見ていないが、恋愛とは異なる特別な存在として認めている。
・性格:オタクだが、熱く純粋。天才肌で、集中すると目の前のことしか見えなくなる。また、ハイテンションになると大好きな、チーフガードナーのフィギュアに早口で話しかける癖がある。
・年齢:19〜32(ハニーの立ち回りによっては、お兄さん、ショタもあり)
・雰囲気キーワード:オタク、情に厚い、厨二っぽいワル
・好きなもの:ネット、発明、エナジードリンク、ゲーム、アニメ、チーフガードナー

○マーシャル
性別・♂
ロス市警警部/強盗殺人課 『ハニーベア』事件の担当。古風な警察官だが、勘が鋭い。仕事でも実直であり、捜査は資料と現場、足で稼ぐタイプ。仕事一徹の彼だが過去にリアーヌ・カウチという女性と交際しており、突然消えた彼女のことを今も忘れないでいる。
・性格:冗談を言わず、冗談が通じないタイプだが、ハニー&ベアの捜査でヤケになっている部分があり、冒頭で冗談を言うシーンがある。感が鋭い。
・年齢:35〜50
・雰囲気キーワード:渋い、古風、熱血漢
・好きなもの:タバコ、酒、コーヒー、つば広の中折れ帽子

○執事
性別:♂♀どちらでも演じられる
「カウチ家」に仕える執事。存在はまさに執事然とした柔らかな物腰だが、その存在は謎に包まれている。温和だが、自分の役割を優先することを常としている。しかし、一方でリアーヌに同情し、ブラックリリーの後始末やサポートも行うことになり、両立できない思いに悩んでいる。
・性格:実は「カウチ家」の執事とは別の役割も担っている。だが、本話ではあくまでカウチ家の執事、かつリアーヌを心配する保護者のような立ち位置である
・年齢:25〜70
・雰囲気:キーワード・従順、丁寧、誠実、ミステリアス
  

  
○リアーヌ&ブラックリリー
性別:♀
リアーヌはベニト石発見者の家系の一人娘。だが、生い立ちのコンプレックスに苦しむあまり、残酷な怪盗ブラックリリーの人格を生み出してしまった。しかし、本質は自分の運命を呪い、つまらない女と自分を責め、苦しむ女性である。ブラックリリーとして、マーシャルに近付くも……恋に落ちてしまう。
・性格:リアーヌはブラックリリーを生み出したが、ダニエの事件以降に全身にひどい火傷を負ってからは、ほぼ発狂しており、リアーヌとブラックリリーが混ざり合っている。
・年齢・35〜40
・雰囲気キーワード:優雅、大人な女性、コンプレックスをもつ、影がある
・雰囲気キーワード(ブラックリリー時):妖艶、狂気、攻撃的
  
♦♥♦―――――以下、本編―――――♦♥♦
 
-リアーヌ・ブラックリリー、タイトルコールしてください
  
リアーヌ・ブラックリリー:Honey&Bear 最終話【蜂と、帽子と、黒百合と】
  
-ハニーのナレーションと、前回のセリフで海外ドラマっぽく演じてください。

ハニー:前回までのハニー&ベア。
私たちはロサンゼルス自然史博物館にある世界最大のベニト石を狙うはずだった。でも、待っていたのは・・・、

リアーヌ・ブラックリリー:ベニト石もお前達が盗むのよ!

ハニー:謎の女が現れ、肩になまり玉を喰らった挙句、ベニト石を奪われてしまった。ベアは謎の女、ダニエ・クロフォードについて調べてくれたけど、どうにも怪しい・・・。おまけに、ベニト石の情報を求めて、狙ったカウチ家の金庫から出てきたのは・・・

ベア:で?金庫の中身は、その紙っぺら一枚だったのか?

ハニー:『青き石を救い出せし、英雄の屋敷にて待つ』・・・。私たちは残されたメッセージの示す場所、カウチ家に乗り込んだ。だけど、不意を突かれた挙句・・・

リアーヌ・ブラックリリー:フフフ・・・、特製の麻酔薬はいかが?

ハニー:捕まった上に、麻酔を打たれてしまった!そんな私の姿を笑いながら、ブラックリリーは・・・ついにベニト石の真実について、語り出し始めた・・・。
 
 ○【ハニー&ベア 隠れ家】
  
ベア:ああ、ちくしょうっ!何がアークエンジェルだ!?くっそ・・・、これはまずい!まずいぞ!?
・・・いや、こういう時こそ冷静に・・・、盤面を冷静に見るんだ・・・。まだ、慌てる時じゃない・・・。まず、あの女は・・・、やはりブラックリリーだった。しかも、ハニーには暗示が仕込まれてた。そして、・・・信号が消えちまったってことは、地下かどこかに連れ込まれてる。(ため息)しかも・・・、なぜかマーシャルの旦那がカウチ家に来ちまった・・・と。

-頭を抱えて取り乱す

ベア:ああ!!ダメだ!まずいことだらけじゃねえかっ!

-叫んだ後にPCに向き直り、

ベア:・・・(深呼吸)OK・・・。ピンチの時こそビー・クールだ!マスターガードナーもそう言ってたぜ!・・・まずは『入口』だ・・・。カウチ家はガードはかてぇが、『線』はいくつも通ってる。どこかに侵入する隙があるはずだ・・・今は信号が途絶えてるがハニーの信号が見えたら、一気に掌握して、サポートする・・・。OK!OK!俺にはできる!俺は天才だからな!
まずは・・・

-ベア、ふと気がついて
ベア:ん?警備のネットワークに・・・、穴がある?いったい誰が?
こんなの・・・どうみたって罠じゃねえか・・・。

-:ハニー、ささやくように

ハニー:・・・くまちゃんったら・・・怖がってるの・・・?

ベア:(ため息)・・・ああ・・・、ああ!そうだな!ハニー。あの日から、俺とお前は・・・一心同体だ。ホーンテッドハウスの入り口をくぐった時から逃げられねえことなんざ、わかってたことじゃねえか・・・。罠だったとしても、ぶっ壊して・・・助け出してやるよ!俺は、お前の・・・アークエンジェルだからな!
・・・だから・・・、早く姿を見せろよ・・・?クイーンビー。

 ○【カウチ家 地下】
 
-一転、青い結晶が一面に広がる洞窟
リアーヌ・ブラックリリー:・・・いい頃合いね。そろそろ夜が明けるわ。ハニービー?この石が、どんな役割を果たすのか、・・・あなたはわかった?

ハニー:・・・こ・・・の・・・。

リアーヌ・ブラックリリー:この石は部品であり、・・・カギ。
この洞窟はすべてベニト石で覆われているのが見えるわよね?本来、朝日があの穴から差し込めば、たちまち洞窟内はベニト石によって反射した光にみたされ、だれも入ることの許されない・・・、灼熱の地獄と化してしまう。

-リアーヌ・ブラックリリー、博物館のベニト石を取り出し

リアーヌ・ブラックリリー:でも、このベニト石があれば・・・光はこの石に集まり、あの洞窟の中央、聖杯を封印する、『約定(やくじょう)の箱』のカギとなる。

ハニー:・・・あ・・・う・・・・。

リアーヌ・ブラックリリー:これこそが、このベニト石の秘密。・・・カウチ家が世界から託された秘密。

-リアーヌ、声を荒げ

リアーヌ・ブラックリリーそして・・・、わたくしを縛り続けた忌まわしい秘密・・・!
リアーヌ・ブラックリリー:・・・。
フフフ・・・、でも、いいわ・・・。今は、わたくしの役に立つのだから・・・。

ハニー:・・・ふざ・・・け・・・

リアーヌ・ブラックリリー:さあ・・・、在るべき物を・・・在るべき場所へ・・・。世界中の人々が、ほっしてやまなかった伝説を・・・、目覚めさせてあげましょう・・・。

-リアーヌがベニト石を置き、反射する光がベニト石へ集まる。

-リアーヌ、ハニーの肩に手を置き、耳元で母親のように囁く。


リアーヌ・ブラックリリー:ああ・・・、美しい・・・。ほら、光が集まっていくわ・・・。

-光が一点に集中し、箱が開かれ、輝く銀の杯が現れる。

リアーヌ・ブラックリリー:・・・さあ、・・・箱は開かれた。感動のご対面といきましょう。

-リアーヌ、杯を手に取り

リアーヌ・ブラックリリー:・・・ふうん?いざ目にしてみると・・・、ちっぽけなものね。やはり伝説は、伝説のままにしておくにかぎるわ。

ハニー:・・・。

リアーヌ・ブラックリリー:カウチ家の伝承には、真の杯(まことのさかずき)は、あらゆる傷や、病を癒し、絶えぬ命を与える。が、偽りの杯(いつわりのさかずき)は死をもたらす・・・、とあるの。

ハニー:・・・。

リアーヌ・ブラックリリー:おかしな話でしょう?だって・・・、これは、まごうことなき、本物の聖杯なのだから。
でもね?わたくしは、全てにおいて万全を期(き)したいの。だから・・・、乾杯しましょう?

ハニー:・・・?

リアーヌ・ブラックリリー:この聖杯が真の杯(まことのさかずき)なら・・・、あなたの麻酔も、暗示も、全てが治るはず。けれど、偽物なら・・・
あなたは死ぬ。

ハニー:・・・!

リアーヌ・ブラックリリー:とてもゴージャスで、エレガントなギャンブルでしょう?伝説の杯(さかずき)を使って、命を賭ける・・・。

-:リアーヌ、ぶどう酒を車椅子から取り出す。

リアーヌ・ブラックリリー:かの人は、『これは私の血である』といい、ワインを信徒(しんと)に飲ませた。注ぐのならば、やはり・・・それにならいましょう。
1945年もの、ロマネ・コンティ。世界に一本しかないワインよ?

-10億円のワインを安酒のように、ため息まじりに振りながら、

リアーヌ・ブラックリリー:・・・安物だけれど・・・ふさわしいものはコレしかないから、仕方がないわよね・・・?

-ワインの栓を抜き、聖杯に注ぎ、少し眺めてから
リアーヌ・ブラックリリー:ふぅん・・・?まさに、血のようね。さあ、あなたからどうぞ?ハニービー。

-ハニー、激しく暴れる

ハニー:・・・う・・・ぐう・・・!

-リアーヌ、ぐずる子供に母親が薬を飲ませるように

リアーヌ・ブラックリリー:あらあら、暴れないで。遠慮せずに飲み込むのよ。
そして、この杯(さかずき)が本物か、偽物か、あなたの体で・・・、確かめてちょうだい!

-リアーヌ、ハニーに無理やり杯を飲ませる。

ハニー:(飲まされる)ぐっ・・・。
・・・。・・・あ、ああ・・・!!!

-ハニー、短く叫ぶと、体を痙攣させ、ぐったりとする。

リアーヌ・ブラックリリー:・・・。

-リアーヌ、冷たくその様子をじっと見つめ、

-その後、ハニーの体をなぞりながら、ハニーのまわりを周り

リアーヌ・ブラックリリー:・・・ふうん?生きては・・・、いるようね?

-ハニーの耳元で、笑ってささやく

・・・おめでとう、奇跡は成功よ。

-:リアーヌ、命じるように

リアーヌ・ブラックリリー:目覚めなさい。ハニービー。

-:ハニー、反応がない。

リアーヌ・ブラックリリー:暗示も効かない・・・。素晴らしい!わたくしの撃ち込んだ、銃の傷も消えて・・・?

-リアーヌ、ハニーを拘束する縄にうごめくものに気づき、

リアーヌ・ブラックリリー:ん・・・?これは・・・何?・・・虫!?

-:ベアの虫型ドローンが拘束する縄を切断する

ハニー:この!くそ女!!

-ハニー車椅子を蹴り、ブラックリリーに頭突きを入れる。

リアーヌ・ブラックリリー:フフッ!

-ブラックリリー、軽く避ける。

ハニー:きつく結んでくれたわね!

-ベア、通信が復旧する。

ベア:・・・い!おい!無事か!?

ハニー:ええ、くまちゃん!ありがと!あなたの、虫ちゃんがいなかったら・・・、抜け出せなかったわ!

リアーヌ・ブラックリリー:フフッ!元気いっぱいねぇ!この聖杯は、やはり本物のようだわ。

ハニー:ええ、そうね・・・。おかげで、お目当てのベニト石は・・・頂けないようだし、それを譲ってもらうことにするわ。タダ働きはしない主義なの。

リアーヌ・ブラックリリー:いやと言ったら?

ハニー:言わせないだけよ。私が、昔ピックポケットだったことを忘れてくれたようね?あんたから銃を盗むなんて簡単だったわ。

-:怒りと共に、リアーヌからスった銃を取り出す

ハニー:あんただけは絶対に・・・、殺す。

-ベア、叫ぶ

ベア:お、おい、ハニー!

リアーヌ・ブラックリリー:あら、それは困るわね?
そこまで想ってくれることはとても嬉しいのよ?
でも、いいのかしら?わたくしが、このベニト石を少しでも動かせば・・・、わたくしはもちろん、あなたも死ぬことになるわよ?

ハニー:・・・くっ。

リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ・・・、もう少し考えて動くべきだったわね?でも、遊ぶのはもう少し待っていて?
だって、ハニービー・・・。あなただけが味わうだなんて・・・、ずるいじゃない?

-:リアーヌ、ワインを聖杯に注ぎ、天にかかげ

リアーヌ・ブラックリリー:ああ・・・、これが恵み!これこそが、わたくしの未来!命に・・・、乾杯。

マーシャル:待て!リアーヌ!!

リアーヌ・ブラックリリー:!?マーシャル!?どうして!?どうして、ここにいるの!?
!!わたくしを見ないで!!

-:リアーヌ、顔を隠しながら

執事:わたくしが、お連れしたのです。リアーヌ様、その杯(さかずき)を飲んではいけません。

リアーヌ・ブラックリリー:クリス!?お前!!わたくしを裏切るの!?
・・・ああ・・・、見ないで・・・。わたくしの顔を見ないで!マーシャル!

ハニー:(小声で)・・・チャンス!

-:ハニー、マーシャルに背を向けて崩れ落ちるブラックリリーに銃を向ける。

マーシャル:銃を捨てろ!ハニーベア!手をあげて、後ろに下がれ。

ハニー:(舌打ち)

ベア:(つぶやく)今回は・・・感謝するぜ・・・、マーシャルの旦那・・・。
ハニー、許せねえのも・・・わかる。だが、殺しは・・・セクシーじゃねえ。・・・お願いだから・・・、落ち着いてくれ。

ハニー:(大きくため息)・・・わかったわ、くまちゃん。

-:ハニー、銃を置いて

ハニー:・・・これでいい?

-マーシャル、顔をリアーヌにむけ、静かに語り出す

マーシャル:・・・リアーヌ。全て聞いた。君がブラックリリーであったことも、火傷のことも、・・・顔を変えて、俺に会いに来てくれていたことも・・・。

リアーヌ・ブラックリリー:・・・。

マーシャル:あの日、君はブラックリリーとして、・・・利用するために私に近付いたんだろう?
・・・気づいていた。

リアーヌ・ブラックリリー:!?
・・・どういうこと!?

マーシャル:君の手は・・・、会うたびに傷が増えていた。・・・普通ではできない位置に、だ。決定的だったのは、君の目だ。・・・君は時々、恐ろしい目をする時があった。そして、翌日には・・・必ずその視線の先にあったものが消えた。

リアーヌ・ブラックリリー:知っていて!?わたくしを・・・、騙していたの・・・!?

マーシャル:違う!!・・・許されないとはわかっていた。だが・・・、君と話し、肌を重ねるうちに、人生で初めて・・・心惹かれた。
君を・・・、愛してしまったんだ。

リアーヌ・ブラックリリー:嘘よ!わたくしは・・・わたくしは地味でつまらない・・・

マーシャル:そうじゃない!!本当の君は、・・・俺の愛したリアーヌはいつだって微笑んでいた。そして、いつも聡明(そうめい)で、美しい女性だった!
ブラックリリーなんかに負けるな!君はそんな弱い女性じゃない!君が裁きを受けるなら、その罪は俺も背負う!

リアーヌ・ブラックリリー:・・・マーシャル・・・。

マーシャル:この二年間、ずっと俺を・・・、みていてくれたんだろう?俺も・・・、ずっと君を想っていた。
二年前、君から一方的に別れを告げられたときには・・・身を引き裂かれる思いだった・・・。・・・だが、君の人生の重荷になるまいと・・・、身を引いた。
忘れようとした。

リアーヌ・ブラックリリー:・・・。

マーシャル:だが、気持ちは変わらなかった!愛しているんだ・・・。二年も、君を1人にした・・・。俺の言葉なんか、信じられないかもしれない。だが、これだけは信じてくれ!頼む!
その杯(さかずき)を飲めば、君は死んでしまう!!

リアーヌ・ブラックリリー:・・・フッ、フフフ・・・!アハハハハ!!(狂ったように笑う)
信じてくれ・・・、ですって?

-焼けただれた顔をマーシャルに見せつけ

リアーヌ・ブラックリリー:この顔を見ても、まだそう言えるのかしら!?

-マーシャル、リアーヌの変わり果てた姿に驚く

マーシャル:・・・!

リアーヌ・ブラックリリー:ウフフッ・・・!恐れたわね・・・?結局、あなたもそう!わたくしがブラックリリーだから、そう言って、だますつもりなんでしょう!?

マーシャル:違う!!俺は本当に君のことを・・・!

リアーヌ・ブラックリリー:黙って!!・・・わたくしを誰だと思っているの・・・?人の命をも簡単に奪える、怪盗・・・ブラックリリーよ!

マーシャル:違う!!君は・・・

リアーヌ・ブラックリリー:そして、あなたは警察。わたくしを追い、非情にも檻に閉じ込める者。

-リアーヌ、若干声を和らげ

リアーヌ・ブラックリリー:・・・でも、安心してちょうだい。ブラックリリーは、今、ここで死ぬのよ!
この聖杯こそが、わたくしを・・・、あなたの愛した・・・、リアーヌにしてくれるのよ!
マーシャル:ダメだ!やめろ!リアーヌ!

-:リアーヌ、一息に杯をあおる

リアーヌ・ブラックリリー:(感嘆するように)ああ・・・
リアーヌ・ブラックリリー:・・・う!!がぁっ!っぐう!!

-リアーヌ、血を吐き、苦しみだす

リアーヌ・ブラックリリー:あ、ああ・・・!な、なぜ・・・!?この聖杯・・・は本物の・・・

-マーシャル、リアーヌに駆け寄り

マーシャル:リアーヌ!大丈夫か!?おい!しっかりしろ!!

-:リアーヌ手の先から塵になり始める

リアーヌ・ブラックリリー:ああ・・・、マーシャル・・・、やっと・・・呼んでくれた・・・。・・・ずっと・・・会いたかった。

マーシャル:リアーヌ!おい!なんとかしてくれ!!

-:執事、無念そうに首をふり・・・

執事:マーシャル様・・・、奇跡は・・・人の手では止められません・・・。

マーシャル:そんなこと、あってたまるか!リアーヌ!

リアーヌ・ブラックリリー:ああ・・・、マーシャル・・・、いいの・・・、いいのよ・・・。・・・ごめんなさい・・・。わたくしは・・・ずっと、あなたの腕に帰りたかった・・・。
この恐ろしい顔とともに・・・、わたくしの中のブラックリリーをほうむって・・・、あなたの元へ・・・。

マーシャル:リアーヌ、俺は君が誰であれ、君自身が美しいと思ったんだ!お願いだ!いかないでくれ!

リアーヌ・ブラックリリー:マーシャル・・・?こんなに澄んだ気持ちは初めてよ・・・。・・・わたくし、リアーヌになれたかしら?

マーシャル:リアーヌ!!

リアーヌ・ブラックリリー:ああ、綺麗な・・・光ね・・・。・・・愛してるわ・・・、マーシャル・・・。

-:リアーヌ全身が白い塵になり、消える。

マーシャル:リアーヌ!?リアーヌ!?ああ・・・、神様!

-:塵を握りしめむせび泣くマーシャル

ハニー:・・・頃合いね。

-:ハニー、転がり落ちた聖杯を足で止め、聖杯を持って気づかれぬように入り口へ移動する

執事:その杯(さかずき)、お返しいただけますか?ハニー様。

ハニー:!
ハニー:・・・あなたには悪いけれど、タダ働きはしたくないのよ。見逃してくれない?

執事:ご覧になったはず。その遺物(いぶつ)は・・・いずれ、破滅を招きます・・・。それにお持ちになれば、世界中から監視され、追われ続けることになります。
それは、あなた方にとって・・・本意ではないと思いますが・・・?

ベア:・・・おい、ハニー、俺は渡した方がいいと思うぜ?ワールドワイドなトラブルはごめんだ。

ハニー:(ため息)・・・わかったわよ。

執事:ありがとうございます。

ハニー:その代わり、聞きたいんだけど?どうして、同じ聖杯で、同じワインを飲んだ私は無事で、あの女は死んだの?
執事:カウチ家の伝承にある、真の杯(まことのさかずき)、偽りの杯(いつわりのさかずき)とは聖杯そのものではありません。・・・聖杯を飲む人間をしめしているのです。
あなた様は・・・聖杯を飲まれたとき、強く・・・生きようと思われた。・・・真の杯(まことのさかずき)の、条件を満たしておりました。
しかし、リアーヌ様は我を失い、自身の一部であるブラックリリーを殺そうと願われました。聖杯は、口にする者が少しでも生きることに迷えば、偽りの杯(いつわりのさかずき)として命を奪う・・・恐ろしい遺物(いぶつ)。
ゆえに・・・、誰の手にも渡らぬよう、封印されていたのです。リアーヌ様にも、お伝えしましたが・・・、最後まで・・・聞いてはくださらなかった・・・。

ハニー:なるほど・・・。私はラッキーを引いたってわけね・・・。

執事:それもあなた様の意思があってこそ。成長されました・・・。メラニー・ジェーン様。

ハニー:フッ・・・、ようやくわかったわ。ブラックリリーが・・・、最後まで私の本当の名前がわからなかった理由。あなたが、私の情報を・・・隠してくれていたのね?

執事:主人のためとはいえ・・・、とんだご迷惑を・・・。

ハニー:とんだ食わせ者ね。あなた、何者なの?

執事:聖杯を外に出さぬ約定(やくじょう)を・・・、託された家に仕える者。それ以上でも、それ以下でもございません。

ハニー:・・・なるほどね。

執事:はい。そうそう、タダ働きはお嫌い(おきらい)とのこと、でしたね・・・?実は・・・、処分に困る遺品をたくさんかかえておりまして・・・お持ちいただければ幸いなのですが・・・。

ベア:おい!マジかよ!?

ハニー:・・・ベア!いきなり、大声出さないで!

ベア:なあ!どのくらいだ!?トラックの手配は、任せろ!

ハニー:(ため息)・・・おしゃべりくまちゃん?・・・通信、切るわよ?

-:通信が途中で切れるように

ベア:な!?おい!待っ

ハニー:・・・騒がしくて、ごめんなさいね。

執事:いいえ・・・、ベア様も大切なお客様ですゆえ。

ハニー:・・・?どういうこと?

執事:リアーヌ様には報告をわすれておりましたが・・・、当家のネット回線へオンラインでお招きさせていただいておりました。

ハニー:・・・。(呆れて)フッ・・・、本当に・・・とんだ食わせ者ね。あなた。

執事:お褒めに預かり、光栄でございます・・・。

マーシャル:待て!

-ハニー、マーシャルに不敵に笑いかけ、

ハニー:・・・あら、マーシャル警部。初めまして。
いとしの彼女とのお別れは、・・・もういいの?

マーシャル:黙れ!ハニーベア!貴様を・・・逮捕する!!

ハニー:フッ、そういうタフな男は嫌いじゃないわ。でもね、女性の名前を間違えるのはいただけないわ、ね!!

-:ハニー、聖杯をマーシャルに投げる。

マーシャル:なっ!?これは!?・・・聖杯!?

ハニー:フッ!

-:ハニー、穴へ、フックを使って飛ぶ

ハニー:それ、もういらないからあげるわ。

-:ハニー、朝日を背にマーシャルに向き直り、名乗る。

ハニー:それに、私の名前はハニーベアじゃない・・・。ハニーよ。また会いましょう?マーシャル警部!

-:ハニー、姿を消す。

マーシャル:なっ!待て!!

-:銃を向けるがそこには日が差し込むのみ。

マーシャル:・・・。(呆然と息をつく)

執事:マーシャル警部。

マーシャル:・・・うおっ!?

執事:お返しいただけますか?

マーシャル:・・・!

-マーシャル、全てが終わってしまったことを悟り、聖杯を力なく返す

マーシャル:・・・ああ・・・、すまない・・・。

執事:・・・恐れ入ります。

マーシャル:・・・。
(ため息)・・・執事さん、俺にはわからん・・・。リアーヌは・・・なぜ、杯(さかずき)を飲んだ?・・・俺は、間違えたのか・・・?

執事:貴方様は・・・、何も、間違えてはおりません。間違えたのは、リアーヌ様でございます。あの方は・・・聖杯が危険とお知りになりながら、お手を出されました。その選択をした時点で・・・、お間違えになられていたのです・・・。

マーシャル:・・・しかし・・・

執事:リアーヌ様は・・・、ご自分のなかのブラックリリーを、ひどく恐れられていらっしゃった。ですが・・・、そのブラックリリーは・・・間違いなく自分の一部であることも・・・、誰よりもご存知でした・・・。

マーシャル:・・・!
・・・それは・・・つまり・・・

執事:ご自分を責めるのは・・・、どうか、おやめください。リアーヌ様はあなた様によって・・・、救われたのです。カウチ家に仕える者として、感謝いたします。

-マーシャル、聖杯に目をやり、

マーシャル:・・・これから、どうなる?

執事:何も変わることは、ございません。また・・・、『新たなカウチ家』の方々がこの家に住み、わたくしはその方々に仕えるだけでございます。

マーシャル:・・・。
(ため息)・・・そうか。そうやって世界は・・・回っているんだな・・・。

執事:はい。世界はつつがなく・・・回っているのでございます。

マーシャル:・・・わかっていた・・・つもりだった・・・。・・・が、辛いもんだな・・・。
執事:・・・。

-執事、朝日を眺めながら、感情を込めて

・・・誠に・・・その通りでございます・・・。
  
 ○【数日後 ハニー&ベアの隠れ家】
 
-PCをいじるベア。その後ろでお風呂を楽しむハニー

ベア:・・・おい、ほんとに良かったのかよ?

ハニー:何が?

ベア:お宝に決まってんだろ。あのあと、カウチ家に行って、もらえるもんはもらってきたが、・・・大半は置いてきちまったじゃねえか。絵画に、アンティーク、彫刻までありやがったのによ・・・、持ってきたのは・・・、数点の絵と、宝石ばっかだ。
ハニー:バカねえ。くまちゃん?・・・ああいうのは足がつきやすいの。ブラックリリーが起こした事件までいただくのは、ごめんだわ。

-ハニー、物思いに沈みながら、

ハニー:悪趣味なものの方が・・・、多かったしね。

ベア:・・・まあ、それについては同感だな。俺は美術品には、くわしくねえが・・・これであのでっけえ石ころ・・・何個分くらいなんだ?

ハニー:さあね。でも、しゃくだけど・・・ブラックリリーの目利きは確かよ。このネックレス一つでも・・・、4000万ドルは下らないでしょうね

ベア:マ、マジかよ・・・。

ハニー:まあ・・・、でも、惜しかったわ・・・。伝説の聖杯と、その鍵になる宝石。
(ため息をついて)あれほどセクシーな者には・・・、なかなか巡り合えないでしょうね。

-ベア、軽く笑って、PCをいじりながら

ベア:まあ、『世界中を敵に回す』って言われちまったんなら・・・、仕方ねえな・・・っと。

-ベア、ネットニュースを見つけて

ベア:お?
・・・『リアーヌ・カウチ女史(じょし)、死去!ジュエリー大手 Couchi(カウチ)などのオーナーで知られる、リアーヌ・カウチ女史が交通事故で死亡。』・・・だとさ。

ハニー:(つぶやく)・・・ほんとに食わせ者ね・・・。

ベア:はは!お悔やみをだってよ。あの女がどんな女だったか・・・、知ったらぶっ飛ぶぜ?こいつら。

ハニー:(舌打ち)おしゃべりくまちゃん!?今すぐその口を閉じてくれる!?今は、そういう気分じゃないの!

ベア:っんだよ・・・、つまんねぇな・・・。

-:ベアのパソコンにメールが来る。

ベア:あ?誰だ?シークレットメールに。
・・・お、おい!きてみろよ!ハニー!

ハニー:何よ、クマちゃん?

ベア:いいから来いって!これ見てみろ!

ハニー:わかったわよ・・・。せっかくのバスタイムなのに・・・。

-:ハニー、バスローブを着て、ベアのパソコンを見る。

ベア:ほら!見てみろ!これ!

ハニー:・・・なんなのよ?
・・・!・・・このメールは・・・。

執事:ハニー様・ベア様
先日は、誠にありがとうございました。
今回の件は、リアーヌ様の独断のものと・・・報告させていただきました。
お二人には、今後も監視などの手は及びません。また、本件のお礼としまして、お二人の口座へ、10億ドルを振り込ませていただきました。
今後も・・・お二人の健やかな日々を、お祈り申し上げております。

ベア:10億ドル!?

ハニー:・・・。

ベア:マジだ!!10億ドル振り込まれてるぜ!!

-ハニー、苦々しく笑いながら

ハニー:・・・ほんと・・・食わせ者どころか、食えない執事さんね・・・。

ベア:おい、これからどうする?しばらく怪盗家業は休んで、どっか豪遊(ごうゆう)するか!?

ハニー:(ため息)・・・それよりもシークレットメールと、仮想口座(かそうこうざ)を変えるところから、始めた方がいいんじゃないの?

ベア:あ、ああ、そうか!!
・・・なあ、お前の言ってた執事、いったい何者なんだ?

ハニー:さあね?でも、私たちのことをいつでも探し出せるって、意味も込めてるんでしょ・・・。
・・・フッ。でも、悪くないわ。・・・そういうのも、スリルがあって・・・セクシーね!

ベア:な、なあ、これからどうするよ?この金で世界でも回るか?

-ハニー少し考えた後、楽しいことを思いついたように

ハニー:ふむ・・・、それも悪くないわね。けれど、この世界にはまだまだセクシーなことが、たくさんあると思わない?
それに、マーシャル警部が私の顔を見たことで、警察だけじゃなくFBIのワンちゃんたちとの追いかけっこも、これからもっと楽しくなると思うのよねぇ・・・。

ベア:それじゃあ・・・、この金はどうする?

ハニー:(軽く笑って)・・・バカね!クマちゃん。あなたがつかうのよ!・・・確かに、遊ぶのもいいわ。でも、私たちには・・・、この世界には・・・、それ以上にスリリングなことがあふれてる!
もっと楽しいことをするために、このお金でありったけ・・・セクシーなものを作って!そして、もっともっと盗みましょう!?
世界の組織とやらが・・・、後悔するほどにね!
だって、そうでしょ?盗みは・・・

ベア:クレイジーなほど・・・

-:セリフを合わせて、同時に

ハニー:面白い!
ベア:面白い!

 :END

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