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同性の恋人で、いじめ主犯だった同級生の女の子の話

※以下の文章には、性描写と同性愛の描写を含みます。


私が中1から高2の終わりにかけて付き合ってた同性の同級生の話をします。


ここではその人のことを、あえて部長と呼びます。私と部長は中高一貫校に通っていました。どうして「部長」なのかと言うと、彼女は中学も、高校も、美術部の部長をしていたからです。そして私も5年間彼女と一緒の美術部に所属していました。


私の進学した中高一貫校は、俗に言う(自称)進学校で、入ってくる生徒は割とその地域では勉強ができる人が多かったんです。これが何を意味するのかというと、美術部の部員達も基本的に国公立なり私立なりへの大学進学を見据えていて、美大に進みたいとか、画家になりたいとか、そういう風に自分の将来を定めてる人はホント全然いませんでした。


ただ部長だけは違ってて。彼女1人だけは不真面目な部員達に流されずに毎日美術室に来て、毎日ひときわ大きなスケッチブックにクロッキーをやって、どのアニメがどうとか声優がどうって話をする同級生は視界にも入ってないって態度で、ただただ筆を動かして絵を描いてました。後で聞いたんですけど、東京藝大目指してたらしいです。高校時代は顧問の先生に、毎日鉛筆画のスケッチ出してましたし。


本題からズレましたが、とにかく彼女は真剣に画家になりたい真面目な部員だったんです。

対する私はと言うと、結構不真面目に美術部員やってたと思います。共感覚者だったんですよね、じゃあそれを表現として昇華できたらおもしろいね~くらいのことを従妹に言われて、はあって感じで、何となく…絵を描いてました。


でも中学の時、私と部長には共通項が1つだけあって。2人とも部内にまともな友達できなかったんですよ。部長真面目すぎるし私は何のアニメや声優が好きかでしか仲良くできない関係性をわざわざ保つのが、気乗りしないし下手だったので。

一応こんな怠惰な空気漂ってる美術部でもコンクールとかはあったんです。そのために準備してる時、余り物同士って言ったら聞こえが悪いですけど、私と部長とで話すことがしばしばありました。だいたい私が沈黙に耐え兼ねて話しかけてるんですけど。「部長さぁ~、F30にしとったらよかった油絵F50は文化祭間に合わんよ~」「夏休みも描いたら?学校空いとるんやし」「それは~…クラスの文化祭もあるし、うーん」みたいなやり取り。学生特有の不必要に学校行事に絡めた世間話ですね。親密度が低いクラスメイトにやるやつなんですけど。


でも何となく会話をしてるうちに、なんというか私の方がテンション上がっちゃって。部長って人と喋ったらこんななんだ、私ばっかり話しちゃってるけど的な…。


そのまま、私は同性を好きになったこととか、無かったんですけど、その時は割とすぐに部長のことを恋愛の意味で好きになっちゃって、文化祭一緒に回ってって頼んで、OKしてもらって、文化祭最終日に、美術準備室とかいう部室の隣のマジで人が来ない倉庫みたいなとこで告白して、これもOKしてもらって付き合い始めました。


今思えば自分の行動力の高さも妙だし、部長もよくこんなん受け入れてくれたなって思います。これ中一の秋だし、部長とは中学の部活から一緒になっただけだから知り合って1年も経ってないし、クラスすらも違うのに。なんか雰囲気にやられてそのまま美術準備室でキスをして、その後はマジ何もありませんでしたよ~って顔で放課後の美術部の展示の片付けに参加しました。


私は気持ち悪い人なので、元カノの容姿を逐一記憶してるわけなんですが……中一の時は割と小柄で、スカート丈も長めで眼鏡をかけてていかにも…委員長タイプの見た目というか、部長はそんな感じの人です。


私は変に身長が高かったので(今も普通に高いですが)、中一当時で平然と身長が168cmあったわけですよ。なんかその恐らく25cmくらいあったであろう体格差がそのまま恋人関係に反映されて、自然と私が男子っぽい役割をして、部長が女子っぽい役割をして、ってなっていってました。


部長は全然積極的じゃなかったけど、休日は映画デートしたり、私が彼女を県外に連れ出してみたり、なんかそういうのはまあありましたよ。それに部室に行ったら会えたわけで、放課後に、顧問が帰って2人だけになってから手を繋いでみたりとかよお、しましたよそりゃ…恋人なので…。


当時の私の行動力はなぜか目を見張るものがあるので、「すっごいの勉強したから、させて、ね、お願い」とか抜かして部長に3限の授業をサボらせて女子トイレでディープキスしてたこともあった。私が本当にガキなので、「苦し?やったら上手くなるまで練習させて、ね、授業90分あるんやし、お願いよ、ずっとしよ、ね」みたいなこと言って懇願した記憶ある。カ、カスがよ~。


まあそんなこんながあったんですけど、ちゃんとした交際は、中学の間しっかり続きました。私は部長に会うためでしたが部活に通う頻度が増えたので、中三に上がる頃には部長に並んで美術部の副部長になっていました。部活で浮いてる2人にそこを任せる顧問はどうかしてます。付き合ってんだぞ、癒着だ癒着。


ただ、中三に上がってしばらくして、部長に焦りの色が見えだしました。画家になろうともしてないし、絵に人生も賭けてない私が理解できるなんて到底言えることじゃないんでしょうが、とにかく焦っていた。顧問からも、"部長じゃない人"が褒められることが増えて、その度に彼女が苦しそうに目を伏せてたのを覚えてます。消費したスケッチブックの数も、クロッキーの枚数も増えるわ増えるわで、部長はその時、多分自分の画力が夢に足りなくなるのを恐れてたんですね。


で、問題は…高一ですよ、高一。

高校生に上がってから、美術部は作品を出せるコンクールがひとつ増えたんですよ。それが結構大きな賞で、しかも各高校作品を出せるのは1人だけ。毎年高三の先輩が出すことになってましたけど、今年は画家目指して頑張ってる部長含めて新進気鋭の後輩も多くいたので、一体誰が出すのか読めない状況でした。


私は部長が出すもんだと思ってましたよ。高二も高三もやる気なかったし、高校美術部に上がっても、1番部室に通いつめて、1番真面目に活動してたのは部長でしたから。

デートの誘いも断られることあったけど、そういう時は決まって部室で油絵を描いてたし、ああこの人も精一杯なんだなって思って、あまり話を聞いてあげられなかった。本当私も悪い。


言い訳にしかならないけど中3の終わり頃に親が離婚したんです。父が教育虐待の擬人化みたいな人だったんですよねー。あの、こっちも、ガチ、いっぱいいっぱいでさ、でも心の体調良くない時の方が、創作活動って進むって聞くじゃないですか。絵をはけ口にしたのかもしれんけど。だから結構私も高一の時は部活動に打ち込んでて、今思えば、この辺が1番、なんか…運悪かった気がしますね。


最悪のケースになったんです。

コンクール、出品したの私でした。



1つの高校で1人しか出せないコンクールで、名前伏せますけど全国規模のやつで、一年に一回しか出せないやつ。高校美術部で1番大きな大会。入賞したら校舎に横断幕出るやつ。


部長が何としても獲りたかったやつ。


出品しただけならいい。良い賞も獲ってしまったんです。私の功績の横断幕がかかっちゃいました。私の。私なんかのがです。高校に大々的に。



いや、なんで…?誰の作品を出品するかは、誰が1番賞を獲りそうかを判断基準に、顧問の先生が決めるんですけど、顧問には、私の絵は色彩感覚が優れているとか言われました。


はあ、まあ、それは、共感覚の持ち主だからであって、色彩感覚は学んで得たものでもなければ、私は大した努力をして絵を描いてるわけじゃないんですけど、人の爪の色を、黄緑とか青とか紫とか黄色で塗ってるような異常者に、賞が下るんですか…?


というかマズイでしょ。私は全部センスです、本当に努力はしていない。それで、ずっと努力してきた部長を、部長以外にも努力してきた部員はいますよ、そういう人を差し置いて、賞とっちゃっていいわけ…?


なんか色んな感情がぐちゃぐちゃになっちゃって、部活に行って開口一番に顧問におめでとうと祝われた時も、私は、「あ、はぁ…」くらいの言葉しか返せなかったんですが、きっと私より気持ちの整理がついてなかったのが、部長の方でした。




それから少し経って、私がコレ↑の表彰状を受け取るくらいの頃、美術部内でいじめが始まりました。


まあ、主犯…部長なんですけど。いじめられてんの私なんですけど。

センスだけで変に賞を通してる一年の後輩とか当たり前にムカつくだろうしな、部長に二、三年生の後輩とか、普通に中学から仲良くは無かった同級生とかも加わって、結構大きめの組織でいじめてくれたねぇ!


作品破かれるとか、席に画鋲撒かれるとか、スタンダードなのもあったし、いじめがクラスでの生活にまで進展して、靴捨てられるとか、教科書落書きされるとかもあった。いじめという言葉で想定される範囲のことは結構されてたと思う。最初は無視とかかわいいもんだったけど、こういうのってエスカレートするのが常じゃないすか。私先輩に蜂食わされたことあるよ。


部長マジ…?って思ってました。

その時も一応付き合ってたし(別れ話はされてない)、最悪なことに私は好きなままだったし。えっ、怒ってんの…いやそりゃ怒るよね、マジゴメン…って感じ。


こういういじめは高一の初夏くらいに始まって、なんとまあ皆さん飽きずに、高校終わるまで続いてました。後半の方はもう美術部じゃないクラスメイトとかにもハメ撮りさせられたから規模感変だったな。



高一から高二に上がるための春休み。

いじめ開始が高一の初夏だから、もう半年以上経ってますね。

いやこのままじゃダメだよなって思った当時の私は、部長に電話をかけました。変な行動力です。でも当時は、義務感に駆られてすらいました。その頃にはすっかり連絡もなんも取ってないんですけど、何もしないまま進級したんじゃしょうがないだろということで。願うみたいな気持ちでした。


本当に驚いたことに、出たんですよ部長。その電話に。出て、喋ってて、私からはいじめのことは触れなかったんです。最近大丈夫?休みだけど、元気?くらいのこと話して。で、もう私は何かを変えたかったから、その時言ったんですよ「今から家行ってもいい?」って。


何を考えたのか、部長はそこでOKして。私は春休みの惰性に染まった閑散とした田舎道を自転車でガーッって駆け下りて行きました。部長の家は遠いです。でも"部長の"家なのですぐ着きます。


家に着いて、インターホン押したら部長が出て、「家族は?」「今仕事行っとって」「ああそう、ごめんね、急に」的な会話をして上げてもらいました。面白いですねいじめの主犯に。


そういえばお互いの家にあまり行かなかった気がする。私は私で両親が離婚を目標とした割とガチめな喧嘩を頻繁にしてたし、私が家に呼ばないなら、私より消極的な部長から家に呼んでくることもありませんでしたから。先に話した、何となくの男女の役割のせいで、下心を感じさせたら悪いなと思って、私から彼女に家に上げてと頼むこともなかったし。


それで。

部屋に入れてもらってまず、「なんでいじめとるん」が口から出ました。なんか、部長に思いがあるなら聞きたいし、なんとかはしてやりたいし。部長の方からは「ごめん」とだけ一言返されましたけど。


いやごめんじゃないんだけどな、と思ってしまったし、失望した。部長ってそんな人でしたっけ。もっとあなたには、月並みじゃない回答をしてほしいんだけども。


「なんか理由があるなら聞きたいけど」

「ない、わからん」

「わからんかってん半年以上もいじめやらんやろ」

「知らんって、恨んどるんや」

「ちゃうよ。いやごめん流石に嘘、ちょっと腹立ってるかも」


なんかこんな……会話だったと思います(うろ覚え)。

なあ、何で?とかで迫ったら部長泣き出しちゃって、(あっ…すみません私、部長は身長伸びてないけど私いま174cmあるわ、デカい人間迫ってきたら怖いな、ごめ…)とか思いながら背中さすって宥めてたら、ワーッって部長の方も話し出した。


賞取れやんで嫌やったとかじゃなくてそれより私美大に、行けるかわからんって親に言われてて、ずっと諦めろって、だから、そんなん嫌で、凛馬は自分の好きなことできてええやん、絵も上手いから、私できやんわ、イライラして、無理


そこまで聞いて部長のこと下の名前で呼んで抱き寄せてみました。拒否られなかったから、(あ、いいんだ)と思って部長を自分の方へ引っ張って、目が合ったからノリでキスした。


ごめん。私が変にセンスとか言われるもの、あるらしいのでこんなことになってる。自覚とかないけど、それも辛いよなあ。基本的に色々話をおかしくしてるのは私なので、私は部長に対して申し訳なくなった。


申し訳ないのと、こんなになってもまだ私の願いを聞いてくれるのがなんか嬉しいし心底意味わからなかった。何をトチったのか知らないが、その場で私は部長に「今日、してもいい?」って聞いた。


バ、バカ~。

バカの高一のガキです。断られるなら断ってくれればいいし、とりあえず聞くかくらいの考えだった。

誓ってエッチのために家に行ったんじゃない。これだけは本当です。嘘じゃない!けどもうコミュニケーションが分からなくて、ここまで状況が拗れてると。もう子どもの喧嘩じゃなかったし、ここで部長と私が仲直りしたところで、いじめなんか止まらんだろうし。部長の屈折した思いも私側からの未練なりなんなりも言葉で言う術がもう全然見つからなかった。なのでそれを超えうることをしようとした。は?バカがよ……


ヤバいのが部長もうん、いいよって言ったんすよね。はぁ~!??変な女!!

かくして、私と部長は初夜に至った。バリバリ昼でしたけど!!



当然のように私がタチ、部長がネコ。そうなる気はしてました。

前戯みたいなことなら中学の時やってたので、お互い初めてだったのになんか変にスムーズで奇妙だった。首元触ってる途中で部長の今使ってるヘアゴムって、この私が中学の頃にプレゼントしたやつじゃね…?ということに気づき軽く脳が破壊された。なんだこの女。


「気持ちいいなら頼むから気持ちいいって言えよ…!(切実)」が「気持ちいいなら自分の口で言ってみな(暗黒微笑)」という言葉責めということにされたのか、やけにそのワードへの反応が良かったのを覚えている。いやこっちはすごく必死ですよ。ベッドに部長を押さえつけながら手がガッタガタだった。なんとかキスしながらイかせて、その日は終わり。


帰りしなに部長に「私からいじめを止められるかやってみる」って言われたのを思い出した。「いやもういいですよ?止まらんでしょ、1人の力で」「(部長の下の名前)ちゃんが代わりにいじめられる勢いやで」「私別にもともと変わっとるししゃあないしゃあない」などと言って牽制し、その場を後にしたはずですね。



春休み明け。全然世界は変わってなくて、私は朝から机の中の教科書をズタボロにされていた。部長としたとして学校の人達はそんなこと知らないし、いじめに関して何が変わるってわけじゃない。そのまま私は高校二年生に進級して、二年のクラスでも熱烈ないじめに歓迎され続けた。


別に部長もいじめ主犯のままだった。まあ、家を出る時はいじめを止めてみると言いつつも、今更やめたら格好の獲物だ。その時の私の言葉通り、ガチでこの人が私の次のターゲットとして虐められるだけなんじゃないんですか。学校で恋人に無視されたり舌打ちされるのは…堪えはするけど、仕方ないし、お互い……そんな感じに思って事に折り合いをつけていた。


問題も何一つ解決してなかった。

高二のコンクールもまた、私が出品した。部長は相当悔しかっただろうに、また。センスがどうとかで私の色彩感覚を褒める顧問のコメントと、去年栄えある賞を獲ってしまった私の実績がそうさせた。私は私のセンスが正直憎いですよ。そんな大したものでも無いはずなんです。お金を稼げるようなものじゃない。ただただ、努力して絵を描いている人を傷つけることだけができる、"色彩感覚"…。


そんな高一の再放送みたいな生活をしていたが、唯一違ったのは、高二に上がってからは定期的に部長の家に通ってたことだ。


通ってはえっちして、通ってはえっちした。もうマジで成り行きと純愛の間のソレだったと思う。マジで分からん、なんでそんなことになるんだ。


学校では部長はガンガン私のことシカトしてるのに、家に上がったら最近は画塾がこうで~、デッサンの本を買って~、とか嬉しそうに話していた。私も私でバリバリいじめの被害者なのに、部長の話は相槌打って聞いてたしずっと彼女をどう傷つけないでおこうかってことに気を回していた。


で、世間話が終わったら抱き合った。?????。部長は元からそういう人だけど、普段私に好きとか言わない。だから、こういう時じゃなきゃ言わせられなかったです。そのせいで私は躍起になってた。部長は体力ないからすぐ息も絶え絶えになった。彼女がどこが好きでどこが気持ち良いのかはおおよそ把握してた。ただ部長自身も私と会うのを心の支え(?)みたいにしてた部分はあったと思うし、何が、そんな支えを作らなきゃならないくらい彼女にとって辛いのかだけは全然把握できていませんでした。


高二の文化祭。本当にクラスにも部活にも居場所がなかったので学校中の人気の無い場所を逃げ回ってたら、部長から準備室来てってLINEが来た。


美術準備室に行った。準備室の扉は古いおかげで内側からある程度開かなくすることが可能なので、部長と2人で勝手に開けられなくして、準備室の中でセックスした。レズセで恐縮ですけど……。


行為が終わった後、普通に「ここって、告白した場所やんね」って聞いた。私は鈍感でバカ正直なのが取り柄だった。

その返しに、「凛馬、私のどこが好きやったん」と問われる。そう面と向かって言われると、少し迷ってしまいました。私は部長の何が好きでここまで拗れた関係を続行しようとしてるんだろう。「凛馬は、(部長の下の名前)ちゃんの普通じゃないところが好きよ。あと頑張り屋でかわいい。」と返答したことを今でも覚えている。なぜならこれ部長に録音…されてて後々もしばしば聞くことになるんですね……。


ピロートークにテープを回されるという一節はありつつも、文化祭も準備室にいられる時間も、終わっていきました。


私はどれだけ部長とえっちをしても彼女の前で格好つけることができません。学校に戻れば、バケツで頭から水をかけられるし、お弁当の中身も捨てられるしで、結構みじめな生活をしていたからです。思い返してみると、格好つけてでも見栄張ってでも、私がいじめに抵抗するとか、彼女の心の内を全部受け止めるから話してくれとか、不可能なことを可能なふうに粉飾して話すことができたら何か違ったんじゃないかな、と感じている。責任を感じている。私が何もかも受け入れすぎたし、部長は私の言うことを何もかも受け入れすぎた。


高校二年生が終わる冬だった。

部長に別れ話を切り出されてしまいました。あーあ、おしまいですよ。おしまいおしまい。これで何もかも終わりです。


部長の家に呼ばれて、その話だったんですけど、部長ずっと泣いてたんですよね。おもむろに両手を広げるから(は…?別れる気なのに、いいのか…?)って思いながらもハグしてみて。そうしたら私のこと抱いたまま嗚咽混じりに話し出すわけですよ。


凛馬にいじめられないでほしい、恋人がいじめられてるのは辛い、私のせいでこんなになったこと耐えられない、でも絵は全然上手くならないから原因が終わらないし、来年のコンクールも凛馬が賞獲ったらどうしよう


私もあなたみたいになりたいって泣かれました。返す言葉が見つかりません。


私は私みたいになりたくなかったですよ、としか返せなかった。が、それは多分今この状況で1番言ってはいけない言葉なんですよね。


とにかく部長に泣き止んで欲しかった。


それで、真っ当な人間らしく、私はいじめに挫けないとか、部長の絵が私は好きだよとか言えば良かったものを、格好つけられないからと私は、全く別の方向の決意表明をしてしまった。


「美術部やめて、私歌手やるよ。やって、絵から1番遠いの歌やろ」


これが、他でもない、私が歌手を目指したきっかけだった。


部長、もう、泣くな、お願いだから。そのためなら私、あなたの前から消えます。そういう話をしてしまった。こうしてその場にいる人間、全員が将来を決めた。部長は画家に、私は歌手になる。お互いの未来が交わらないことも決まった。そのために、私の夢があった。


これは別れ話に私の方からも乗ってしまったのに等しい。


「もう絵はしんよ、いじめもすぐには終わらんやろけど、高校が終わったら終わるしかないやんね。あと1年だけ待っとってよ、ごめんね、色々。」…とか歯切れ悪く詫びて、「じゃあ、別れるんね、分かった…はい…」とか煮え切らない返事をして、私が荷物をまとめ始めたくらいの時に、部長が待ってと言い残して立ち上がって部屋を出た。


待てをされたので大人しく座っていれば、中一の頃に贈った記憶がある例のヘアゴムとか服とかがいくつか彼女の手の中にあった。返すってこと?って私が聞くと、否定される。


「返さんよ、これ付けて、しよ」だった、部長から来た反応は。ま、待ってくれよ。


流石に私も困惑したが、惚れた人に頼をかけられては断ることは不可能です。成人した今ならちゃんと分かる。これがかの有名なお別れセックスだ!!!

部長の手を握って何回もキスをした。高二のガキが独占欲のゴミじゃないはずもなく、勝手にキスマつけたり、いつも控えてたけどもういいや!と思って噛んだりした。chu! クソガキでごめん


いつにも増して部長が綺麗に見えました。

こん時に美術準備室の録音の話をバラされた。私の好きなところ話して、今もう一度録音するからって言われて、部長の身体を弄りながら色々答えたせいで、ほぼ自分の嬌声だけ録ってしまったらしい。ちょっと面白かったです。


最中ずっとこの先どうなるのかを頭の片隅で考えていた。部長のいない生活は考えられなかったし、それでも私はこの人の目の前から消えた方が良い。ただ、もうこれお互いキスマがどうだの録音がどうだの、未練を精算する意志のせの字も無い。だけど、これで別れるんだよなー…くらいのことがずっと頭の中にあって、なんか手には力が入っていた。


部長の声がこれまでで1番上ずってる気がした。いや気のせいかもしれないんですけど。喘ぎ声が泣いてるみたいだった。部長ガチで泣いてたのかもね。


まだ、もっと的なことを部長から自発的に言われたのもこの日が最初で最後だったはず。まあでも何事でも始まりがあれば終わりはあって、それは私と部長の恋人関係もそうだしこのセックスもそうだけど、終わりはきちんと訪れて、私は部長に芸大受験応援してるから、と最後に言って彼女の家をあとにした。それから、部長と連絡は取ってない。





私も今は21歳です。歌を歌う活動は厳しいけど不満足なわけではない。今でも恋愛対象は女性のままで、職場の後輩と付き合ってたこともあったけど、未だに部長のことは忘れられてない。忘れられてないからこんな文章を書くんですけどね!w


この話、実は2つ年下の従妹しか全容は知らない。途中で離婚した父親は当然、母も去年他界してしまって、話す機会もなく、私が女性が好きというところから知りはしないです。…その従妹が、私の描く絵が好きだと言ってくれる。従妹は話作りに長けていて(これはガチ)、いつか自分で作った物語に、私の絵を付けたいとよく話す。


まあ、いいけど…よくないです(短文矛盾)。趣味で絵を描くことはたまにある。しかし、1つの物語に仕事として、イラストレーターとして絵をつけるとなると、それはできないんですよ~という高二の自分が自分にかけた枷が効いてくる。部長にはもう会ってないけど、部長が見て悲しむことはしたくない。


だから従妹の話を断っている。いや従妹が作った話なんて売れるに決まってるので身内ってだけで絵をつけないですか?って言って貰えるのはすごくありがたいことなんだけど、売れて有名になってネットに上がって、そこに私の絵があったら、部長と約束したことからズレるので。


従妹には、だったら私がお姉ちゃんの絵の魅力を再解釈して描く、これはいいか?と言われてしまった。強くは止めないけど、やめておきな……。その先は地獄、地獄だぞ……自分のセンスを恨んで努力した人を挫く……でも第三者が作品として私の呪われた絵を昇華してくれるなら、それでそれは嬉しいな、とか、そんなことを考えている。

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