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月が教える意外な秘密
「月には神秘的な力がある」
こんなことを言うと、すぐに、ああ、スピリチュアルなお話ですね、間に合ってます…と返されそうですが
「月には健康になる秘密がある」
という新たな切り口で語られたのが、1997年にヨハンナ・パウンガーとトーマス・ポッペによって書かれた本『月の癒し』です。
オーストリア・チロル地方で伝統的に受け継がれてきた“月のリズムを生かした暮らし方”の紹介と実用性が話題を呼び、日本も含め、世界中で大ベストセラーになりました。
もう20年以上も前に出版され、長らく絶版状態でしたが、最近になって復刻されるなど、再び注目を集めています。
内容にいわゆる“スピリチュアルっぽさ”“不思議要素”はまるでなく、長年にわたって継承されてきた、日常的なチロル流の月との付き合い方が、惜しげもなく披露されます。
たとえばどんな風かというと
ダイエットを始めるのに最適なタイミング。
手術時期の選び方。
パーティが盛り上がる日。
爪や髪はいつ切るべきか。
特別な化粧品を試したい時。
ケーキや深酒を避けた方がいい日。
そんな、誰の生活にも役立ちそうで、心をそそるあれこれが、説得力を持って解説されていくのです。
その多方面に及ぶカバーと応用ぶりに、月の巡りに注意を向けるだけで、これほど様々なことが明解になるものか、と驚きが生まれます。
それは決して迷信や思い込みの類いの話ではなく、海の潮の満ち引きや自然も月に影響を受けるため、体内の60%が水分の人間もまた、その影響から無縁ではないというのが根本にある考え方です。
実際に、満月の日に事故や事件が増加するのは世界中の警察の統計で明らかですし、出産件数が最も多いのも満月、というのもよく知られた事実です。
パーティが最も盛り上がるのも、ケーキバイキングやバーにはなるべく行かない方がいいのもまた、満月の日。
人の心を浮き立たせお祭りモードにさせる一方、満月はあらゆるものの吸収率が最も強く、糖分やアルコールのダメージが身体に悪影響を及ぼしがちになるためです。
ダイエットを始めるならば、満月を過ぎ、月が欠けていく期間に。
月の力が弱まり、“排出”の期間に入るため、食事をしても脂肪が付きにくく、分解も進みやすいのです。
もし新月から全く同じダイエットを始めても、同じような効果は出ないといいます。
新月から満月に向かう、月が満ちていく期間は、“吸収”の時だからです。
そのため、スペシャルな化粧品、たとえば一滴一滴が驚くような値段の美容液や、濃厚なパックでケアをするならば、新月後の、満ちていく月の時期がおすすめです。
その間はうんと有効成分の吸収率が上がるためです。
髪や爪は、新月過ぎと満月過ぎでは、同じ分だけ切ったとしても、伸びるスピードが変わります。
長持ちさせたければ欠ける月に、早く伸ばしたければ満ちていく月の時期に切るのがベストなタイミングです。
他にも、ハーブの種を蒔くのにいい日、何かを漬けるのに向く日と向かない日など、様々な知恵が満載で、これらが頭に入っていると、気負うことなく自然のリズムに沿った暮らし方ができ、楽で無駄もありません。
日本でも旧暦で世の中が動いていた頃は、負けず劣らずの自然の知恵があったのでしょうが、残念ながら今それらの叡智はすっかり遠いものになっています。
カレンダーにわずかに名残りが見られる暦の知恵を生かし、年中行事などにも心を向けたいとは思うものの、なかなかにそれも難しい。
そのため、月がもたらす影響やその力を簡単に活かせる生活の仕方を知って夢中になった私は、今でもたくさんのそんな情報を集め、活用しています。
空の高いところに輝く、触れられない天体との思わぬ近しさを感じられる、嬉しい機会でもありますし。
ただ、あまりに熱心すぎると、どんどん浮世離れしてしまいそうで、注意が必要です。
フランス語の表現で
「Je suis dans la lune」
といえば、直訳では
「月にいる」
になりますが、実のところ、この言い回しは
「夢見がち」「ぼんやり」
などを意味します。
しかも、それは決してロマンチックなイメージでなく、マイナスの要素が強いのだとか。
日本で言う
「地に足がつかない」
と同じでしょうか。
宇宙から送られてくる画像を見るにつけても、月は住むよりも眺める方が良さそうなため、重々気をつけねばと思います。