女性によって作られたアルバム150選(読者投票編)
2017年にNPR(米国公共ラジオ放送)がまとめた「女性によって作られたアルバム150選 読者投票編」。
これは先に紹介した「女性によって作られたアルバム150選(The 150 Greatest Albums Made By Women)」をベースに読者(リスナー)投票の結果を反映させたもの。
最初の150選リストはNPRの選考委員たち、つまり評論家など専門家が、PC(ポリコレ)にも配慮して慎重に選んだと思われる150枚のアルバムがリストになっている。
年代的にも人種的にもジャンル的にも幅広くバランスを取って選ばれていて、正直アルバム的にちょっとこれはと思っても歴史的意義があれば選ばれたりしている。
読者は最初の150選を見ているのでハロー効果もあって最初のリストと基本的には大きく変わらないはずだが、実際に読者投票させると選考委員が配慮した部分が抜け落ちて本音丸出しのリストになっているのが面白い。というかちょっと情けない。
要するに白人女性たちが作った偉大なアルバムのリストになってしまっているのだ。
NPRの読者、リスナーのイメージとしては知的、リベラルということになるのだろうが、アメリカのそういう層でもちょっとディープな黒人音楽は聴かないようだ。
NPRの読者、リスナーが選ぶ「女性が作った偉大なアルバム150選」。まずはトップ10。
No.1はNPRの選考委員のリストでもNo.1だったジョニ・ミッチェルの「Blue」。
その他のトップ10は以下のとおり。
1. Joni Mitchell / Blue (1971)
2. Carole King / Tapestry (1971)
3. Lauryn Hill / The Miseducation of Lauryn Hill (1998)
4. Kate Bush / Hounds of Love (1985)
5. Janis Joplin / Pearl (1971)
6. Patti Smith / Horses (1975)
7. Amy Winehouse / Back to Black (2006)
8. Beyoncé / Lemonade (2016)
9. Tori Amos / Little Earthquakes (1992)
10. Joni Mitchell / Court and Spark (1974)
アリーサ・フランクリン、ニーナ・シモン、ミッシー・エリオットといったところがトップ10から落ちている。
以下トップ30までリストにしてみた。最終的にはNPRの元記事を読んでもらいたい。
ソウル/ブラックミュージックではアリーサ、トレイシー・チャップマン、ティナ・ターナーだけになっているのがなんともである。
ただリズ・フェア、ビョーク、ルシンダ・ウィリアムズ、ジョアンナ・ニューサム、スレイター・キニー、メリサ・エスレッジ(早くからLGBTsをカミングアウトしていた人)、ニーコ・ケースといったパンク/オルタナ系のミュージシャンがきちんと入っているのはさすがNPRのリスナーたちという感じ。
11. Adele / 21 (2011)
12. Liz Phair / Exile in Guyville (1993)
13. Taylor Swift / 1989 (2013)
14. Aretha Franklin / I Never Loved a Man the Way I Love You (1967)
15. Björk / Homogenic (1997)
16. Lucinda Williams / Car Wheels on a Gravel Road (1998)
17. Tori Amos / Boys for Pele (1996)
18. Tracy Chapman / Tracy Chapman (1988)
19. Taylor Swift / Reputation (2017)
20. Joni Mitchell / Hejira (1976)
20. Joanna Newsom / Ys (2006)
22. Bonnie Raitt / Nick of Time (1989)
23. Hole / Live Through This (1994)
24. Kate Bush / The Dreaming (1982)
25. Sleater-Kinney / Dig Me Out (1997)
26. Melissa Etheridge / Yes I Am (1993)
27. Tina Turner / Private Dancer (1984)
28. Neko Case / Fox Confessor Brings the Flood (2006)
29. Dusty Springfield / Dusty in Memphis (1969)
30. Aretha Franklin / Lady Soul (1968)
昔サンフランシスコの米国企業に在籍していたことがあって、ある年のキックオフイベントにEW&Fを呼んでプライベートライブを行った。
SeptemberとかAfter The Love Has GoneといったAORな曲をやっているうちは会社の白人たちもノリノリで聴いているんだけど、そのうちアースの方もどんどん音が重くファンキーになっていき、あなたたちはファンカデリックですか? みたいになる。
当時実質的リーダーだったベースのヴァーダイン・ホワイトはブリブリなファンクベースでジミヘンみたいなパフォーマンスをしてさらに煽る訳だ。
ところがそれにノリノリで応えて盛り上がっているのは結局会社のアフロ・アメリカン系とラテン系、アジア系の一部の人たちだけ。最初あれだけノッていた白人社員たちはいつの間に後ろの方に移動してアースなんか聴いちゃいない。
その時感じたのは、アメリカのエンターテインメントの立派なメインストリームになったと思っていたブラックミュージックも、ごくごく普通の白いアメリカ人の世界にはまだまだ受け入れられていないんだということ。
このアース事件はちょうど10年前、NPRの150選は5年前。BLMやパンデミックを経た2022年ではどうなのだろう。