繭気属性はどこから来たか
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今年の四月のことだ。筆者のTLに、「神社には地・水・火・風・空の5属性がある」というパワースポット案内のようなツイートが流れてきた。
生年月日と血液型を使った数秘術系の属性診断も付いており、それに対応した神社のリストも付いている。占い要素を楽しみながらパワースポット観光にも繋がる仕組みで、なかなか巧妙だ。RT数は1万を超えていた。
ところがこのツイートには、「なぜ数秘術や血液型が出てくるのか意味が分からない」「神社の性質と明らかに合っていない属性が存在する」「神社との相性になぜ西暦を使うのか」といった疑問の声が上がっていた。確かに、神社と属性の話はまだ分からなくもないが、血液型と神社がどこで結びつくのか想像するのは難しい。そこでこの「繭気属性」の出自について調べてみることにした。
発端は占い師
繭気属性を取り上げているサイトは数多くあるが、その引用元を辿ると「透明先生」という占い師のブログに行き当たる(現在は占いというよりスピリチュアルグッズの販売が主のようだ)。これは2008年8月25日に投稿されている記事で、「繭気」という言葉自体がそれ以前には見当たらない。
この記事では冒頭のツイートでも紹介されていた下記の要素が説明されており、今出回っている言説のベースがこの時点で完成していたことが分かる。
生年月日と血液型から算出した数字に各属性を対応させる
五属性には相性がある(※この相性図は一般的には五大ではなく、木・火・土・金・水の五行説で使われるものである)
各属性に対応したパワースポットが存在する
占い師の直感で様々なスピリチュアルを結合
「繭気」も透明先生の造語
透明先生は繭気属性の成立経緯についてブログのコメントで回答しており、やはりこの人物が発祥だろう。
他の場所では見かけない「繭気」という言葉について、透明先生は下記のように答えている。
つまり、「繭気」という言葉自体が透明先生の造語である。コメントでは「神仏習合時代に作られた手法を応用したもの」と書かれているが、西洋の数秘術と東洋の四柱推命を合成し、さらに五行を五大に置換したような手法が神仏習合時代に使われていたとは考え辛い。この手法には後述のように疑似科学やスピリチュアルの要素が取り込まれており、透明先生が様々なスピリチュアル要素を結合して生み出したか、原型となる手法からかなりのアレンジを加えているのではないだろうか。
ちなみに、筆者は「繭なりし〜」の文章が登場する宗教や文献を見つけることはできなかった。もしもご存知の方がいたらご教示頂けると幸いである。
血液型を足すのは「オードとエーテルの要素を足すため」
Twitterでも疑問が出ていた「何故血液型の数字を足すのか」についても透明先生はコメントで回答している。
ここで貼られている記事には「血液の中にはオードとエーテルが含まれている」という説明がある。
エーテルというのは元々古代ギリシャで仮定されていた五大元素の一つで、スピリチュアルでは霊的なエネルギーを指して言われる。また、オードは恐らくオド・パワーのことで、これは19世紀ドイツの科学者、カール・フォン・ライフェンバッハが仮定したエネルギーである。
神社の属性は「オーラを見て決める」
ここまで見てきたように、繭気属性には様々な占いや疑似科学の要素が詰め込まれており、神道の要素は見られない。それでは、神社の属性はどうやって決めているのか。これも透明先生が答えている。
神社の属性は、その土地で透明先生が見た気やオーラによって決められている。これが神社の性質と明らかに異なる属性が割り当てられている理由だ。透明先生が立ち寄った神社で、直感的に浮かんだものがそのまま答えになる。神社や祭神の性質から導き出しているわけではない。
由来が意識されることなく漂う「何となく良さそうなもの」
当初は透明先生の周辺でだけ知られていた繭気属性は、その後パワースポット紹介サイトや、今はなきNAVERまとめなどで引用され広まっていった。
生年月日と血液型による簡単な計算で自分の属性を知ることができ、さらにパワースポットとの相性まで示してくれる繭気属性は手軽な占いとしてうまくできており、広まっているのも頷ける。
勿論それを信じるのは自由だが、一方で、神社の由来や祭神と全く関係のない属性を関連付け、有り難がる仕草だけが拡散する現象に疑問の声が上がるのもまた当然である(例えばスピリチュアル系では神社の由来と全く関係のない「龍が見える」という話を神主に話して困惑される例がある)。
さらに、最初に紹介したツイートを発信していたのはエステ系のアフィリエイトアカウントだった。占いにも宗教にもさしたる関心はないアフィリエイトアカウントが、インプレッションを稼ぐためだけに由来も調べず発信しているのだとしたら、筆者としてはやはり違和感を覚える。
いずれにしろ必要とされるのは、宗教や思想へのリスペクトなのではないだろうか。
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