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フィンランドは存在しないしオーストラリアも存在しない〜虚構への欲望〜


フィンランドは存在しない!?

陰謀論の話題で、よく参照される陰謀論チャートがある。

このチャートに入っているため、それが紹介されると「一体どうなっているのか」と関心を持たれる陰謀論がある。「フィンランドは存在しない」陰謀論だ。

フィンランドというのは、あの北欧のフィンランドである。そしてこの陰謀の主体は、意外なことに日本だ。その内容をかい摘んで説明すると、「フィンランドは実は存在せず、寿司好きな日本人がバルト海で無制限に漁業を行い、ロシアを介して寿司ネタを『ノキア製品』と偽って運ぶために捏造された国である」というものである。

実はこれはジョーク色の強い陰謀論で(この手の「◯◯は存在しない」系の陰謀論の最初期の例としては、90年代に言われ始めたビーレフェルトの陰謀が知られる)、発生源も分かっている。その発端は、2014年にRedditに立てられた「親に普通だと教えられていたが、実はそうではなかったこと」に関するスレッドに寄せられた投稿で、投稿者にviceが取材もしている。その文章を翻訳すると、下記のような内容である。

両親によれば、実際の「フィンランドの地」はスウェーデン東部に過ぎないそうだ。ヘルシンキはスウェーデン東部にあり、飛行機で行っても気づかないような場所である。
世界地図は、フィンランドを信じ込ませるための国連の陰謀で、改変されている。そして、国全体のでっち上げはあまりに奇抜で、誰も信じないので、かえって簡単にできてしまう。
フィンランドの主要企業であるノキアは日本人が所有しているようであり、その日本人がこの陰謀の主役である。
さて、人々がフィンランドを発明したいと思う「理由」はもう少し深い話であり、スウェーデンやロシアが賛同する理由もいくつかあるが、そのほとんどは日本の漁業権に関係している。
日本人は寿司が大好きだが、厳しい漁業規制と抗議により、思うように漁ができない。そこで冷戦後、フィンランドという「陸地」をロシアと捏造し、そこでの漁業実施について合意した。そこに国があると思わせれば、日本人がクジラに銛を打っているとは誰も思わないだろう。
魚はその後ロシアを経由して運ばれ、ごく一部の食料がロシア国民に与えられ(フィンランドが発明された当時、国民はもちろん飢えていた)、その後「ノキア」製品と偽って日本に出荷された。日本は、「誰もノキアの携帯電話を持っていない」という事実にもかかわらず、ノキア製品の世界最大の輸入国の一つであるらしい。
しかし、この陰謀論の核心部分、そして私の好きな部分は、日本人がこの陰謀論全体に与えたオマージュである。
魚は何を持っているのか?フィンだ。だから、架空の国をフィンランドと名付けたのだ。
他にもたくさんあるのだが、今ひとつ思い出せない。

https://www.reddit.com/r/AskReddit/comments/2qjohv/comment/cn6pcvj/

この陰謀論は大きな反響を呼び、議論用のサブレディット(勿論ほとんどの人はネタである)の/r/FinlandConspiracyや、「真の信者のための(と謳っているがどこまで真剣かは不明)」/r/trueFinlandConspiracyが作られた。投稿者や両親のその後の反応からして信じておらず、あまりに馬鹿馬鹿しいため信じる人はまずいないだろうが、取材での証言によれば「どちらの陣営にも真面目に証明やデバンキングをしなければいけないと思う人が10%はいる」そうだ。10%は単なる感覚値だろうが、「世界は爬虫類型宇宙人が牛耳っており、クローン人間が首相を務める国もある」というような話が日々真面目に言われるような陰謀論界隈を見ている筆者からすれば、信じる人がいても不思議ではない。

さて、この陰謀論に関する議論の結果生まれた簡潔なまとめに付随しているQ&Aには、陰謀論で使われる典型的な理屈が見られ興味深い。

Q. フィンランド人はどうなるのか?
A. フィンランドに住んでいると思わされているだけで、実際にはその周辺に住んでいる。

Q. 何故このような大規模な陰謀に誰も気づかなかったのか?
A. 「フィンランドが存在するとは思えない」という発言があまりに馬鹿馬鹿しいので、証拠が提示されたとしても社会通念を守るために言い出せないのである。

Q. 衛星画像やGPSはどうなっているのか?
A. 情報操作されている。

つまり、あらゆる情報は陰謀によって操作されているというわけである。これは多くの陰謀論で見られる理屈で、都合の良い情報は認め、都合の悪い情報は「操作・捏造されている」と言える無敵論法である。

そもそも議論を成り立たせるには、「どんな証拠があれば存在すると認められるか」という合意が必要である。しかしこの種の無敵論法(一瞬一瞬で世界線が変わると話す世界線系陰謀論者も同様である)ではその合意を取る意志が見られることはまずなく、従って議論は不可能となる。どちらかというと、「これまでの世界が全て虚構だと思うと気持ちが良い」「真面目に証拠を探している人に対して無敵論法でマウントを取ると気持ちが良い」という快楽の世界になっているように見える。

このような無敵論法はあらゆる情報に適用でき、フィンランド以外にも「存在しない」系陰謀論に使われる国や地域がある。その代表例がオーストラリアである。

オーストラリアも存在しない

インターネットにおいて、この陰謀論が最初に現れたのは2006年と言われる。それはフラットアーサーたちの団体である、地球平面協会のフォーラムに投稿されていた

しかしこの陰謀論が爆発的に広まったのは2017年、スウェーデン(フィンランドの隣だ)のある女性がFacebookに投稿した文章が拡散したためである。この文章はコピペミームとして広がり、4chanやRedditでよく貼られることとなった。その内容は下記である。

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