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豪華客船タイタニックは、姉妹船オリンピックとすり替えられたのか
何度も騒がれる都市伝説
2023年6月18日、豪華客船タイタニックの残骸を見学するツアーの潜水艇「タイタン」が行方不明になり、その後潜水艇の残骸が見つかったことから乗員・乗客5名の生存が絶望的になるという悲惨な事故が起きた。
胸騒ぎがした筆者がX(旧Twitter)を検索すると、やはり「沈没したのはタイタニックではなく、姉妹船のオリンピック」という説が飛び交うようになっていた。
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この説の概要は次のようなものだ。
タイタニックには、先に建造され就航していた姉妹船、オリンピックがあった。オリンピックは1911年、英国海軍の巡洋艦ホークに衝突する事故を起こしており、船主のホワイトスターライン社はその修理に多額の費用を要していた。二隻は「オリンピック・クラス」の同型船であり瓜二つ。ホワイトスターライン社は、事故による損失を保険金で埋め合わせるため二隻をすり替え、オリンピックを氷山と衝突させた。実は沈没したのはタイタニックではなく、オリンピックだったのである。
この説はフィンチ親子(息子のデニス・フィンチが、元タイタニックの船員を名乗るジェームズ・フェントンという男からこの話を聞いたという)やロビン・ガーディナーによって唱えられてきた(ガーディナーの本は邦訳もされている)他、都市伝説を扱うテレビ番組でも放映されたことがあるため(筆者が記憶しているのは、やりすぎ都市伝説におけるカンニング竹山氏による紹介)ご存知の方も多いだろう。
ちなみにガーディナーの書籍は終盤ですり替え説が主張されているものの、その内容のほとんどは事故当時の状況や米英両国で行われた査問委員会の記録(これが二段組で延々と続く)である。
この都市伝説には根強い人気があり、今年に入ってからも(潜水艇事故に関係なく)InstagramやTiktokで流行している。
https://www.miamiherald.com/news/nation-world/national/article271745222.html
オリンピックが起こした事故
1911年に航海を開始したオリンピックは、タイタニック沈没事故以前に2度事故を起こしている。
巡洋艦ホーク衝突事故
1911年9月20日、サウサンプトン港を出発したオリンピックは、ソレント海峡で英国海軍の巡洋艦ホークと衝突した。突進用に作られていたホークの船首はオリンピックに突き刺さり、大穴が開いてしまう。この修理費用は10万ポンド(50万ドル)、修理期間中に航海できない分の損失は5万ポンド(25万ドル)と見積もられ、どちらにも保険は下りなかった。
スクリューブレードの欠損
オリンピックは衝突から約2ヶ月後の1911年11月29日には航行に復帰していたが、1912年には再び事故に見舞われてしまった。1912年2月24日、ニューヨークからの東回り定期航路に出発したオリンピックは、ニューファンドランド沖750マイル地点で突然の振動に襲われ、後に確認したところ左舷側スクリューブレードの一枚を損失していることが分かった。オリンピックは3月2日に再びドライドック入りし、スクリューを交換した後の3月7日に復帰した。
これらの事故は、タイタニックに注ぎ込んでいたリソースをオリンピックの修理に費やすこととなり、タイタニックの処女航海を3週間遅らせることとなった。また、修理後には貿易委員会による堪航性検査が行われ、オリンピックは合格している。
二つの船の構造には相違がある
Bデッキの2等プロムナード
タイタニックについての歴史研究家がすり替え説について検証したTitanic or Olympic: Which Ship Sank?で細かく記載されているが、二つの船には通路扉の窓の形、ドアの位置、配水パイプの形状など様々な違いがある。
その中でも大きな違いは、Bデッキの2等プロムナードである。オリンピックのBデッキに存在した2等プロムナードはあまり使われていなかったため、タイタニックでは短縮されレストランが拡張された。これは沈没後の調査でも確認されている(Titanic or Olympic, p.183)。
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ヤード番号
オリンピックとタイタニックには、部品や設備に船を示す「ヤード番号」が振られていた。オリンピックは400番、タイタニックは401番である。
オリンピックの400番については、オークションに出された木材にその記載が確認できる(invaluable, saleroom)。
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またタイタニックについても、スクリューやギアシャフトにその番号(401)を確認できる(参考)。
短期間で大工事を終わらせなければいけない
オリンピックとタイタニックをすり替えるとすればスクリュー事故修理の期間中だが、だとすると3月2日〜7日の約1週間、広く取ってもタイタニック出発(4月10日)までの約1ヶ月で各種相違点の変更やヤード番号の総入れ替えを行う必要があり、この時点で現実的でないことが分かる。
保険金も不十分
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