「東京地下の宗教団体オリハルコン無限城」陰謀論ができるまで
人々を驚愕させた、「東京地下の宗教団体オリハルコン無限城」陰謀論
今年初めに投稿した、2022年の陰謀論をまとめた記事は人々の興味を惹いたらしく、多数のアクセスがあった。その中でも、特に普段陰謀論に触れていない方々に驚きを持って迎えられたのが「東京地下の宗教団体オリハルコン無限城」陰謀論である。それは下記のような陰謀論である。
まるで子供が厨二設定を結合して作った黒歴史のような説だが、これは誰かがいきなり完成形を言い出したわけではない。この奇妙な説ができあがるまでには、複数のサービスをまたいだ妄想の連鎖があった。
「国葬は、実は戒厳令」説がTelegramで発生
筆者がこの説の出元を辿ったところ、Twitterでは9月25日に「国葬の警備というのは嘘で、日本の戒厳令である」という画像が投稿されていた。
この画像は、Telegramから引用されたものだ。OというTelegramチャネルは普段から陰謀論が飛び交っている場所である。大きなイベントの際に「実は戒厳令だ」とやるのは陰謀論界でよく見られる光景であり、2022年の国葬についても、そんな(陰謀論界では自然な)発想から生まれた投稿だったのだろう。
「国葬の裏で、東京駅地下の某宗教団体施設から子供を救出し、DSを逮捕する作戦が行われていた」説がFacebookからTwitterに流入
国葬翌日の9月28日、Twitterでは「宗教団体オリハルコン無限城」陰謀論の骨格となる説が投稿されていた。投稿していたのは先と同じアカウントである。
ここで引用されているのはFacebookの投稿で、「fbf Aさんからの情報」とある。公開範囲が絞られているため直接確認はできないが、確かに投稿者のFBフレンドにAという人物はおり、普段から陰謀論を投稿していた。
筆者が注目したのは2枚目に示されていた画像である。この画像は国葬前の9月23日、「『国葬とは関係なく』、赤枠部分が封鎖対象になっている」として投稿されていたものである。
ここで使われている「令和デビューと語る」というハッシュタグは、「令和デビュー」という陰謀論インフルエンサーのフォロワーたちが使っているものだ。令和デビューは地区ブロック別のSignal(メッセージングアプリ)グループを全国分作っており、クローズドな空間で情報を交換している。
令和デビューは、そこで寄せられた飛行機や警察車両の画像・動画をTwitterで発信している。するとフォロワーが「軍や警察が動いている、ついに始まったか!」と騒ぐ。これを毎日やっているのである。
Twitterで紹介されたFacebookの投稿には、地下施設、子供の救出、DSの逮捕、地下通路の封鎖と様々な要素が追加されているが、どれも陰謀論ではよく見られるもので目新しさはない。そして、Aという人物のFacebookでは、令和デビューのツイートが何度も紹介されていた。
A氏がどのようにして「国葬=戒厳令」説を生み出したのかは分からないが、令和デビューの情報が元になっているのは間違いないだろう。Signalグループで同じような会話が行われていたのかもしれない。
ここで興味深いのは、Facebookの投稿が「Aさんからの情報」、Twitterの投稿は「令和デビューからの情報」、あるいはFacebookを引用して「救出されたそうです」としている点で、いずれも伝聞形式であることだ。陰謀論を追っていると、「◯◯からの情報です」と伝聞形で紹介されていることが多い。
個人の思いつきよりは、他人に聞いた話のほうが何となく説得力を持たせられ、「自分が言い出したわけではない」と責任を軽くできる心理があるように思われる。そうした際の情報源は自分でなければ何でも良く、知り合いや謎の人物といった「まだ人間の部類に入る」ものから、異星人や高次元意識体にまで及ぶ(それは実質個人の思いつきではないか、などと突っ込んではいけない)。
Telegramで無限城・結界・世界DSの中心地設定が追加される
その後、今度は先に紹介したツイートがTelegramチャンネルで紹介されていた。このチャンネルは「国葬は、実は戒厳令」説が投稿されていたチャンネルである。
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