陰謀論業界の概観と、コンテンツ活用時のアプローチについて(前編)
あまり理解されていない、陰謀論業界における様々な立場
筆者は元々悪徳商法に関する連載でライターデビューしたものの、陰謀論に関する書籍や記事も執筆していることもあり(特に新型コロナ禍以降は陰謀論に関心を持たれる機会が増えた)、最近は陰謀論に関連した企画を打診されることが多い。
これは大変ありがたいことなのだが、一方で持ち込まれる企画に違和感を持つことも多い。よくあるのが、「陰謀論を紹介するコンテンツを書いてほしい」というものだ。もちろん書くことは可能であるし、過去のnote記事でも陰謀論の内容や成り立ちを紹介してきた。
しかしここで注意が必要なのは、筆者が「陰謀論を信じている・そのまま発信している」立場なのではなく、「陰謀論は面白いが、だからこそ危ない」という立場で批判活動を行っていることである。このため単純に陰謀論を紹介してビリーバーを増やすわけにはいかず、触れ方にそれなりの配慮が必要になるのだが、こうした事情があまり理解されていないように思えることが多い。
これは恐らく、陰謀論が話題になったことによって企画側から興味を持つ人が増えた割に、陰謀論を含むオカルト業界(とそれに近接するジャンル)の様々なポジションや、オカルトを取り扱う場合の危険性を客観的に示した情報があまり流通していないことが原因と考えられる。さすがに最近は陰謀論を批判する情報が多くなってきているが、一方で「都市伝説」と銘打って陰謀論を配信してしまっているインフルエンサーはいまだに多い。
陰謀論を紹介する上では否定的なスタンスや情報の提示が重要であり、それをやらずにファンを獲得する行為は陰謀論ビリーバービジネスに足を踏み入れることになるが、企画側はこれをどこまで意識できているだろうか(こうした状況については、「信じるか信じないかはあなた次第」と怪しい言説を言いっぱなしにしてきた都市伝説ブームに問題があったのではないかと筆者は感じている)。
そこで本稿では、様々なポジションが存在する陰謀論業界の見取り図を出発点として、迂闊に触れるとダークサイドに堕ちてしまいかねない陰謀論をコンテンツに活用する際の注意点や、どのような観点からコンテンツ化していけば良いのかについて考えたい。
陰謀論業界マップ
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