陰謀論者に侵食されて終了した異次元転送トランスメディアプロジェクト、オングズ・ハットとは何か
奇妙な研究が行われていたゴーストタウン、オングズ・ハット
ここに、一つの文書がある。
「Ong's Hat: Gateway to the Dimensions」と題されたこの文書は、1980年代の終わり頃に現れ、オカルトやSF、陰謀論やニューエイジなどのコミュニティで流通した。
その内容を要約すると、次のようになる。
原文には物理学やニューエイジの用語が絡み合いながら並び、読み手をかなり選ぶ。怪文書の類と言って差し支えないだろう。
ところがこの奇妙な話は「Ong's Hat: Gateway to the Dimensions」(以降、「Ong's Hat: Gateway」と省略)だけに留まらなかった。その後、オングズ・ハットの研究者たちが暮らしていた共同体(ムーア科学アシュラム)の生存者へのインタビュー記録や音源も登場し、このインタビューでは、ゲートとエッグを破壊するための政府エージェントが、オングズ・ハットを襲撃したことが証言されている。
さらに、1990年頃に登場した希少本のカタログ、「Incunabula」にもこの文書は収録され、その編集者であるエモリー・クランストンは電話インタビューの中で、自身が「Java2」というもう一つの地球に行ったことがあると証言している。このインタビューは「この電話番号と住所は使えなくなります」と唐突に打ち切られたが、エモリー・クランストンのメールアドレスは生きており、問いかけた者には謎めいたメッセージが返された。クランストンは、Incunabulaに隠されたヒントを読み解くことで真相に辿り着けると発言している。
また、「Ong's Hat: Gateway」と類似の理論を主張するニック・ハーバートという物理学者が実在し、その著作はIncunabulaにも掲載されている。とあるハーバートへのインタビューの中で、インタビュアーがエッグを思わせる質問をしたところ、「世の中には、直接聞いてはいけない質問がある」と打ち切られた。
実在の土地や人物とも結びついたOng's Hat: GatewayやIncunabula、それに関連した文書群は、90年代のインターネットにアップロードされてからネットユーザーたちの注目を引き、考察に熱中するエッグ・ヘッズと呼ばれる人々を生み出した。その中からは、Incunabulaに触れてから日常生活における奇妙なシンクロニシティを体験したり、知覚の変化を感じる、視界の隅に影の存在が現れるようになるなど、神秘的な体験を訴える者も出現した。
果たして、オングズ・ハットの実験場や「エッグ」は実在し、異次元転送が行われていたのか。あるいは何者かによる悪ふざけか。
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