祭りの後
毎年、年末の最終日まで仕事をしていて、よく上司に怒られていたので、最終日もギリギリまで働いているんだろうなぁなんて思って居たけど、思っていたよりもずっと、最後の日は何にもしなかった。
終わりの日はあまりに突然発生した
一方で、前から予感していたようで、
なんとも言えない気持ちのまま、その日は
ゆっくりと訪れた。
私はいつも会社で一番早く出社するから、
誰もいない就業前の30分、よく一人、喫煙所で、地べたに座って電子タバコをゆっくり吸っていた。
冬の朝の透明な空気が特にお気に入りで、
高層の窓から見える景色は、永遠に続いていく様な気がした。
すぐそこにある幸せは、いる時には見えないから、失ってから初めて、渇望するものだなと思う。そんな風に、去りゆく職場に思えた事は初めてだったし、もしかしたら、今日が人生で一番幸せな日だったのかもしれない。
喫煙所から見た景色は、今までで一番きれいで、一番寂しかった。お祭りが終わった後、撤収を始めた屋台を見ている様な、そんな気持ち。
席の隙間から、夫が見える職場の景色は一生二度と無いのだろう。じっと目に焼き付けておいた。
サプライズで花束をプレゼントをされたとき、どんな顔をしたら良いのか分からなかった。
何度も何度も頭の中で、別れの言葉を考えたはずなのに、チャットですら出てこなかった。
ただ、ぼんやりと、皆の顔を見て、泣くまいと思った。
ずっと早く終われって思ってたはずなのに、
今日がずっと終わらなければ良いのにって
思った。いつも寂しくなるのは、祭りの後だ。
繰り返す毎日は、時々苦しくて、いつまで続いていくのか不安で、疲弊していく。
けれどもやっぱり、毎日当たり前に、当たり前のことをきちんとやるって事が、一番難しいのだと思う。
私は時々感謝を忘れてしまうから、当たり前の日々を、今日が1日目だと思って、
感謝しながら生きていきたいと本当に思った。
2020年の8月31日を一生忘れず生きていく。