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とあるカフェのキリムの生い立ちの物語。

シュッシュ・・・シュシュ・・シュ・・
トントントン

シュッシュ・・・・

私は今、
目の前に張られた
縦に伸びた白い糸に

大地の恵みにより
それは艶やかに染め上げられた糸を
つづれ織る。

シュッシュ・・・
トントン

気が付けば、
あの頃の祖母と同じ月日を
私は積み重ねてきた。

シュッシュ・・・
トントントン・・・・


もうすぐ
この一枚が織りあがる。

シュッシュッシュ・・・
トントントン


それにしても、
今日はなんと澄み渡った青空だろう。
雲が空を引き立てているようだ。

くっきりとした白の中に
陽の光が影を落とし、

まるで私に何かを訴えるかのように
雲はそこにずっしりと留まる。


シュシュッ・・・トントン

心地よく吹く風。
暖かな日差し。
乾いた土の匂い、羊の匂い、
私の傍らで歌う孫の声、
胸いっぱいに吸い込む。

シュッシュッシュ・・・トントン
シュシュシュ・・・トントン

あの日の記憶が重なる。
私に向けてくれた厳しくも優しいまなざし。
しわだらけの凛とした手。
一緒に見た澄み切った空。

あの日、投げかけてくれた言葉を
私はずっと
思い出せないままでいる。


シュッシュ・・・トントン


もうすぐこの一枚が織上がる。


シュッシュシュ・・・トントントン


あの頃、
祖母が口ずさんでいた歌。


シュッシュッ・・・
トントントントントン

どうか、
この子が
狼や様々な悪意から
守られますように・・・


シュシュッシュ・・・
トントントントントン

どうか、
この子に素晴らしいご縁がありますように


シュッシュッ・・・
トントントントントン

どうか、
この子が、愛する人たちと
ずっと一緒にいられますように・・・


シュシュシュッ・・・
トントントントントン

どうか、
この子が豊かでありますように・・・


シュッシュ・・・
トントントントントン

どうか、
この子の過ごす時間が
生命にあふれた日々でありますように・・・


シュシュ・・・
トントントントントン

どうかどうか、
幸せに感謝するような
人生でありますように・・・・。


シュッシュッシュ・・・
トントントントントン。


雲はあいもかわらず
どっしりととどまる。

シュッシュッシュ・・・
トントントントントン。

もうすぐこの一枚が
織りあがる。



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