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中東のカフェを独断で分類してみた=①

 アラビア語が使われるいわゆる「アラブ圏」に行って、「マクハ」や「カフワ」と呼ばれるカフェを知った。シーシャ(水タバコ)の甘い味も覚えた。

アラブ圏は20以上の国からなり、その国のカフェには、それぞれ特徴がある。すべての国に行ったわけではないのだが、その特徴をキーワードを指定して、自分なりに分類・整理してみたいと思う。

なお、せっかくなので、ペルシャ語圏のイラン、トルコ語圏のトルコのカフェについても含めて記す。以下の5つのキーワードを使って分類していきたい。

かっこ内の国名は、そのキーワードにもっともピッタリはまると思える国である。ヘッダー写真は、エジプト・カイロのイスラム地区にあるカフェ「フィシャーウィ」。

1 庶民的(エジプト)

2 開放的(レバノン)

3 お座敷(サウジアラビア)

4 フレンチ(アルジェリア)

5 歴史の香り(シリア)

■1庶民的

 「中東のカフェって、だいたい庶民的では?」。そう言われてしまうと身も蓋もなくなってしまうが、ここで「庶民的カフェ」とは、近所の人たちが日常使いしているカフェで、路上にイスとテーブルを増やせば収容人数も伸縮自在な、気取りのない店というイメージ。私が6年以上暮らしていた、エジプトの首都カイロの住宅街には、そんなカフェが、それこそ数十メートルおきにある。下の写真は、カイロのナイル中洲のザマーレック地区の「アンド・ハーフ」というカフェ。タバコの煙を、瓶に入った水を通して吸う「水タバコ」を頼む人も多い。

カイロのカフェは、まさにこの町の縮図。伝統衣装を身に着けた人、犬のペットと一緒の人、楽器を奏でる学生グループ。さまざまな人間模様を垣間見ることができる。

飲み物は、紅茶、極細引きのコーヒー粉を小鍋で煮詰めて作る「トルコ・コーヒー」、レモネード、エジプトで特徴的なものとしては、ハイビスカスの花のハーブティ「カルカデ」などもある。

トルコ・コーヒーは、何もトルコだけで飲まれている、というわけではなく、アラブ圏やバルカン半島を含めた旧オスマン帝国の領土で広く飲まれている。ただし、呼び方が変わる。エジプトでは「トルコ・コーヒー」だが、セルビアでは「セルビア・コーヒー」、ギリシャでは「ギリシャ・コーヒー」。コーヒーの名称にも、支配・被支配の歴史という複雑な事情が投影されている。

カイロの観光地、ハーン・ハリーリ市場の周辺には、観光客に人気のカフェがある。飲み物や水タバコの値段は住宅街カフェよりも若干高いが、これらも庶民的といえば庶民的だ。写真は、カフェ「フィシャーウィ」。アラブ圏初のノーベル文学賞受賞者、エジプト人のナギーブ・マフフーズも通ったといわれる。

もちろん、こうした庶民的カフェはエジプトだけのものではない。チュニジアの首都チュニスの旧市街にあるカフェ「ベン・アルース」。ちょっと坂道になった石畳の道の上にたたずむ時間は至福だった。

 イスラム、キリスト、ユダヤの三大啓示宗教の聖地エルサレムにも、小さな庶民的な店がけっこうあった。

「庶民的」というキーワードでくくれる小さなカフェは、旅行者には入りにくいと感じるところもあると思う。特に、カフェは男性だけが来る場所という意識も、エジプトなどでは強いのも事実だ。ただ、私の印象では、特に2011年の「アラブの春」以降、そうした傾向も少しづつ変わってきた。少なくともカイロでは、カフェに女性の姿が目立つようになった。

庶民的カフェに思い切って足を踏み入れてみると、その国の人々の生活に触れるチャンスも広がる。未経験の方には、ぜひ、一度行ってみることをおすすめする。(②に続く)

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