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仕事で毎日ワクワクできたら、そんな幸せなことはない

毎月、当店ではお客さまにエッセイを書いてもらい、冊子にまとめて店頭で無料配布している。

エッセイを書く人は希望される方ならどなたでもよく、ほとんどの人が「文章を書いた経験はないけど、おもしろそうだし挑戦してみよう」という方だ。
毎号どなたも良い文章を書いてくださり、読み応えのある冊子になっているのではないかと思っている。

ある日、小学生の女の子が「わたしも書きたい!」といって、手書きで書かれたA4の用紙を持ってきた。

正直、わたしは戸惑った。

受け取ったエッセイはボツなしで全て掲載しているが、さすがに書きたいという方は文章を書いた経験はなくとも本をよく読んでいる方であり、どなたもレベルが高い。その中に小学生の文章が混じってしまうことに違和感を感じたのだ。
とはいえ、投稿してもらったものはボツなし、修正なしで掲載することをルールとしている。とりあえず読んでみるかと、手書きの用紙に目をやった。

子供らしい字で横書きの文章がうねうねと波打っている。可愛らしいなと微笑みながら読み始めたが、すぐに目が釘づけになってしまった。言葉には不思議な水々しさがあり、表現は驚くほど豊かだ。いつもお母さんのお使いでコーヒー豆を買いに来てくれるとき、こんな風に思ってくれていたのか、と嬉しい気持ちになる。

ほっこりした心になり、ふと思う。

そうか、エッセイは上手い下手じゃないんだ。読んで心を揺さぶるものがあれば、構成や誤字など関係ない。いや、むしろ誤字さえ子供らしさがあって心がなごむ。

これは手書きのままを皆さんに読んでもらいたい。

読み終えた瞬間にそう思い、スキャンして1月号の新春袋とじとして採用することにした。
印刷をして、袋とじをホッチキスで止めて冊子を用意し、店頭に並べながらワクワクする気持ちが抑えきれない。

はやく、皆さんに読んでもらいたい。

こうして店頭に並べられた冊子は、予想通り多くの大人たちの心を捉え、エッセイを書いてくれた人たちも「これにはかなわへん」と嬉しそうに完敗してくれた。


この話は一年以上前の話である。今も思うのは、これだけワクワクして、はやくお客さんに見てもらいたいとか、楽しんでもらいたいと思いながら仕事を毎日できたらどれだけ幸せだろうということだ。

毎日が新鮮であることは難しい。それでもできるだけワクワクするような仕事のやり方を心がけたい。

本人とご両親の許可を得て、その文章を添付します。

みなさんにほっこりのおすそ分け。


『おつかい』光もみじ

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