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【ショートショート】悩み研究所

ここは悩み研究所。

現代人で悩みがない人間などいない。この悩んでいる時間をもっと生産性のあるものに充てることができれば、日本のGDPも上がるだろうと数年前に政府が立ち上げたのである。

「博士、今日は何から手をつけましょう?」
「う〜ん、そうだなぁ。一言で悩みといっても色々あるからなぁ・・・」
「人間関係の悩みなんてどうでしょう?」
「そうねぇ、人間関係といっても色々あるじゃない?どこから手をつけろっていうのよ?」
「たとえば、職場で上司のパワハラがストレスになるとか?」
「パワハラねぇ・・。最近なんでもハラスメントだよね。昔はそんなこと言わなかったけどな・・・」
「・・・。一応ここは研究所ですし、パワハラがなぜ悩みになっていくのか、メカニズムなどを分析してみるといいのではないでしょうか?」
「そんなの本人に聞いてみないとわかんないじゃん。なかにはパワハラをあまり気にしないタイプの人間もいるわけだし・・・」
「じゃあ、どのくらいの人がパワハラで悩んでいるか、市場調査してアンケートを集めてきますか?」
「それって時間かかるよね?うちはそこまでの予算がないんだよな・・」
「予算はどのくらいあるんですか?」
「いや、ちゃんとは把握してないけど、たしか少なかったと思うよ・・・」
「じゃあ、どうすればいいと思います?」
「どうしよっかね?」

この様子をモニターで見ていた男がメモを記す。

『悩んでいるやつは考えてない』


【あとがきと解説】
「悩み」と「考える」は違う。ある本でこういった内容を読みました。たしかに「悩み」には具体的な解決策も行動へのアプローチもありません。それは心の状態でしかないのです。
どうしよう?どうしよう?と思っているのが悩み。何が悩みの原因か自分を俯瞰視して、それを解決するためにどう行動するべきかと筋道を立てていくことが考えること。まあ、口でいうほど簡単には行きませんけどね。

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