台湾風かき氷の衝撃
繁忙期のはずの春が去年に比べるとそれほど忙しくなかった。
ということは、いつも暇な夏が忙しくなるのかと思っていたら、いつも通り暇であった。
しかし、こんなことぐらいで挫けるような私ではない。
時間があるなら今後に向けて行動しなくては、個人事業主として失格である。実は密かに夏を乗り切る秘策を練っている。企業秘密にしておきたいが、言いたがりなので披露しよう。
それは、「かき氷」だ!
「そんなもん、どこでもやってるよ」そう言いたいのだろう。たしかに近年かき氷はどこでも見かけるようになった。そこで後発になるうちは台湾風かき氷をやってみてはと思ったのだ。京都で台湾風かき氷を検索してみても、あまり出てこない。問題は台湾風かき氷がなんたるかを私が知らないことである。
そこで私は台湾人の元スタッフがお店に来たときに聞いてみたのである。
以下はその時のやりとりだ。
「台湾風かき氷ってどうやって作ってるの?なんか氷に味がついているって聞いたんだけど果物の果汁を凍らせて作るの?」
「はい、そういうのもあります」
「ふ〜ん、どんなもの使うのかな?やっぱりマンゴーとか?」
「えっと・・、牛肉が入ってるものがあります」
「えっ!牛肉!?」
「はい。美味しいですよ」
衝撃である。まさか氷に牛肉が入っているとは。少量入れることで旨味が出るのかもしれない。
「初めて聞いた。それ京都で食べれるところある?」
「いや、知らないですねぇ」
これはチャンスだ。台湾で作られているのだから美味しいに違いない。しかも他がやっていないのであれば、話題になってお客さんが大勢来てくれるかもしれない。これはフランチャイズにして全国展開も夢ではない。だんだんお金の匂いがしてきて、私はいてもたってもいられなくなってきた。
「そうか、どうやって牛肉を入れるんだろう?」
部位によって味が変わるのかもしれない。ロースがいいのか?ハラミがいいのか?案外、牛タンなんておもしろそうだ。
「YouTubeがあります。マスターに送りますね」
そう言って彼女はスマホを取り出して調べ始めた。
「あっ、牛肉じゃない。牛乳だ」
「・・・・、えっ牛肉じゃないの?」
「あはははは、牛肉なんて入れるわけないじゃないですか!」
「・・・・」
こうして私の全国展開の夢は崩れたのである。
まあ、どう考えても牛肉の入ったかき氷がうまいわけがないよな。
少し考えれば言い間違えたことに気づきそうだが、金に目がくらむと恐ろしいものだ。
反省した私は、牛乳の入った台湾風かき氷の作成動画をちょっと残念な気持ちで観たのである。
商品になるかは、まだまだ未定。