猫のいる生活。
猫との暮らしから離れて、すでに10年。
住空間に「猫がいる」という幸せを、
どんなに願ったことだろう。
視線のどこかに猫がいて、
とろとろと時間の流れる和やかさ。
リズミカルな足音で駆け下りてくる
小さな階段の物音。
ふと振り向くと、
尻尾を体に巻きつけるようにちょこんと座って「にゃ」とかすかな声で鳴く。
普段外で働いている私にとって、
猫のいる生活を楽しむ美しい時間だった。
愛する彼女(猫:ラテ)がこの世を去ってから、
私は時々その気配を探そうとしてしまう。
彼女が知らない家に引っ越してきたというのに、
お風呂場のドアの外で姿勢よく待っている
彼女のシルエットがあるのではないかと
想像するだけで視界がぼやけてしまうのだ。
一度、猫のいる
陽だまりのような生活を知ると、
一人で過ごす家での時間が
平坦なアスファルトの上にあるように感じる。
いつかまた
猫の一生を背負える時が来るまで
私は彼女の幻を探そうとするのだろう。
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