CAE業界はまだまだブルーオーシャンではないかという話

ここ最近、解析ソフトベンダーやハードベンダー、コンサルタントの人たちと話をしていて思うのは、まだまだCAE業界はブルーオーシャン領域がいっぱいあるということ。最大の理由はそれらをできる人がいないということに尽きるが、できる人にとってはいくらでも需要がある。
私がこれまでのキャリアの中で経験してきたことでもあるが、メーカー内のCAE専任者にとっては解析ソフトが使える、単一の物理現象が解析できるということはただのスタートラインであり大前提でしかなく、CAEを使って利益を上げられることが必要不可欠である。それに加えて下記のことができることは特に需要があると感じている。


CAEの品質マネジメント(品質V&V)構築

今後ますます試作レス化やトレーサビリティが求められていく中で、CAEも例外なく品質マネジメントの対象になることが考えられる。現在でも試作試験ができない業界では求められているが、今後は多くのモノづくり分野でも適用が進むと考えられる。その時には解析の品質マネジメント(品質V&V)の構築と運用は不可欠になる。

HPC利用整備とソフトウェアライセンス管理

HPCについては現在クラウド化の流れであるが、クラウドであっても多くはハードウェアだけが使える状態でしかなく、オンプレミス同様にソフトウェアのインストールやジョブ実行の仕組みはユーザーが構築する必要がある。HPCにソフトウェアをインストールすれば即並列計算が実行できるということはない。きちんとしたマシン情報を設定し、計算ジョブをどのように実行するかのルール化やユーザーが使いやすくするためのスクリプトの整備が欠かせない。
CAEソフトウェアもオープンソースCAEでない限り単にインストールをすれば使えるということはない。インストールした後にライセンスサーバー情報を設定することで商用ソフトウェアは利用可能になる。最近ではソフトウェアをインストールしたことがないユーザーも多くなっているようであるが、自分でインストールするユーザーであっても多くはサーバー情報を入力するだけで使っている。しかしライセンス管理者は、そのサーバーPCにライセンスマネージャーをインストールしたり、ライセンスファイルやそのログファイルを管理することが必要である。
現在の多くは、ハードであればハードウェアベンダーが管理し、ソフトウェアライセンスやライセンスマネージャーに至ってはユーザーが管理するほかない。このハードとソフトの両方を知っている人がユーザー環境で整備し管理運用できる会社がない。

設計、解析の完全自動化

CAEの普及とともに解析の自動化も行われているが、これは単に流体解析だけ、構造解析だけ、メッシュ作成だけというような一つのプロセスだけを自動化するということではない。CAD作成に始まり、メッシュ作成、解析、結果処理、基準値に基づき合否判定をして、不合格であれば最適化を実施し合格形状が作れるまで繰り返し、合格に達したらレポートを出力するところまでである。解析専任者は解析のディテールにこだわるが、メーカーにおいて解析に携わっていない設計者や開発者などは、解析詳細が知りたいわけではなく、自分の設計、開発したものが要件を満たすのかどうかを解析(もしくは他の手段)を使って知りたいだけである。そうであるならば何も彼らに解析をしてもらったり、中身を理解してもらう必要はなく、彼らの欲しい結果を自動的に出力できるようにシステム化してしまえばよい。これにより、これまで解析作業をすることで費やしていた時間に膨大な検討数をこなすことができるようになる。
これは作業時間の大幅な削減になるだけでなく、これまでやりたくてもできなかった膨大な検討数や条件を与えることで、これまで気づかなかった新たな視点を得ることができるかもしれないという可能性を秘めている。
また、これらの作業を自動化する、基準値を設定するということは、これまで曖昧にしていたこと、感覚的に判断していたことを明確に数値化することが必要である。この数値化する過程は暗黙知を形式知化するプロセスである。そのため、形式知化を行うことで、社内の技術が明確化、可視化され、誰でも使えるものとなり、教育や技術伝承にもなる。

CAEを活用したフロントローディング

以前よりCAE活用においてはフロントローディングが言われてきた。フロントローディングを達成する一つの答えは上記に記した完全自動化であると私は思っているが、世の中的には少し異なるようである。具体的には、少し前の流行りとしてはMBSEやMBD、最近では1DCAEやデジタルツインであろう。これらはベンダー主導で行われていることが多いように見受けられるが、成功して莫大な効果を上げたという話は聞かない。
これらの本質は3Dシミュレーションの縮退であり、システム思考である。この両方の観点がないとシステムとして構築することができない。如何にして形ある3D形状や3D現象を縮退すること、機能を取り出し、システムとして抽象化するかがポイントになる。

CAEエンジニアの育成

CAE作業者ではなく、きちんとモノづくり現場の課題を捉え抽象化し解析するための初期値、境界値を考えられる人、解析して得られた結果からモノづくりに必要な情報として意味づけし現場に必要な情報として返しモノづくりのQCDに寄与したりモノづくりを変革できる人。そのような人を育成することは未だ体系立てられていないと思われるため、CAEエンジニアを育成できる人は需要がある。

人と技術(CAE)の融合

たとえ上記のそれぞれが技術的に構築ができたとしても、使う人がそれを受け入れなければ、開発した技術は何も役に立たず、モノづくりを変革することはできない。モノづくりプロセス、技術プロセスの変革には人の心理障壁を無くすためのヒューマンプロセスも同時に変革する必要がある。

これらは今、私自身で取り組んでいるが一人だけでは全然足りない。もし、これらのことをできる人がいれば連絡ください。全部の領域ができる人であれば採用します。


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