キャンピングカーの電装設計について考える

CAEエンジニアとしては電気回路シミュレーションも手掛けたりもするため、回路設計、電装設計についても多少の知識はある。

キャンピングカーの熱設計について考える|CAEエンジニア (note.com)
でも触れたが、今は簡単に電装品を買ってきて組み合わせればキャンピングカーがDIYできてしまうため、本格的な電装設計の知識がなくてもそれなりに形になってしまう。特にインバーターやバッテリー容量の大きいものを選定しておけば、LEDライトやUSB家電等省エネタイプの電装品が増えていることでそこまで深く考えることもないのかもしれない。

しかし、キャンピングカーで今や夏の必需品になりつつあるエアコンや家電調理器のIHクッキングヒーターや電子レンジ、ドライヤー等は消費電力が大きく、他の家電と同時使用をしようとするとその容量を考慮する必要がある。特にエアコンは、IHクッキングヒーターや電子レンジのような一時使用ではなく、長時間の稼働が必要になる。昨今の猛暑日続きの真夏には常時稼働も必要になる。そうなると安定的に稼働させるためにはインバーターやバッテリー容量の計算が必須になる。また、キャンピングカーのサブバッテリーは12Vであり、ここから直接給電しているものは12V仕様、インバーターを介した家電は100V仕様というように、異なる電圧を使用して電装品を動かすことになる。そのため、トータル使用量は異なる電圧を加味した計算が必要となる。

さて、今回真夏にキャンプした際、12Vエアコンの消費電力が1500Wのキャンプ場設置の外部電源から充電しているにもかかわらず出力の方が多いという現象が発生した。本来、外部100V電源から給電していれば直接家電が使えるためなぜこのような現象が起こるのか。答えは外部入力装置と100V→12V変換である。外部電源1500Wを入力しても、外部入力装置で電流が25A程度に律速してしまうため、それ以上の消費電力の場合にはディスチャージ状態となる。また、12Vエアコンは稼働時40~50A程度の電力を消費するが、サブバッテリーから直接電気をとるため、100V外部入力から変換しサブバッテリーを通して供給されることになる。そのため、外部入力で律速してしまうと12Vエアコン側の出力が大きいためディスチャージ状態となる。そのため、100V外部入力してもサブバッテリー容量が100Ahのため真夏の炎天下では実測ベースで4h程度しかエアコンが持たない計算となった。ちなみに夜は100V外部入力でディスチャージ状態でも昼間よりも気温が下がっていることもあり、寝る前は8hの計算であったが、朝起きるとチャージ状態であり一晩問題なくエアコン稼働ができた。そのため、100Ahのサブバッテリーでは外部入力なしでは一晩エアコンを稼働させることはできず、ある程度温度が下がってからのサイクル運転状態になっても4h程度ではないかと思われる(もちろん気温、湿度の状況により異なる)。

真冬はFFヒーターを付ければあまり電気を使用せずに車内を温めることができる。そのため、キャンピングカーで電気がひっ迫する状況は真夏の炎天下くらいだと思う。それ以外は家電を同時使用しなければ大抵の状況で電気が足りないということはないのではないか。また、今はポータブルバッテリーも大容量のものが充実しているため、ポタ電と併用してサブバッテリーを使うことで電気を補うことができる。

ご自身の利用シーンを想像して電装系を検討する必要がある。
もし電装設計についてのご相談があれば連絡ください。


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