業の秘剣 第三片 演技ではなさそうだ
王族の死刑執行の時だ。キケウスはその死刑執行人を申し出た。
その死刑執行の方法とは、手に入れた鉄剣で心臓を一突きするというものだった。
死刑執行の時がきた、王族は他の王族や貴族がみている前で磔にされた。キケウスが鉄剣を持ち、歩みよる。
合図とともにキケウスは心臓目掛けて、鉄剣を心臓に一突きした。まるで剣が心臓に吸い込まれて行くようだった。キケウスは奥まで鉄剣を差し込んだ後、引き抜いた。
その瞬間、キケウスの世界が回った。キケウスは倒れた。
王族から剣は抜けたが血が出ない。しかし意識は失ったようだ。
周りの人々がどよめく、そして王族、そして、瞬く間にキケウスが目覚めた。
「おい、どういう事だ!」
王族が叫んだ。
「い、生きてるぞ、私は生きてるぞ!」
キケウスは叫んだ。しかし、何かがおかしい。
キケウスは辺りをみた、なんと自分、キケウスが目の前に倒れて叫びを上げている。キケウスは状況が理解できなかった。何故か私は身体を縛られ、目の前に自分、キケウスがいる。
キケウスは叫んだ。そして王族の口から言葉が発せられた。
「おい、俺はキケウスだ。何があったかしらないが、そこにいるキケウスはキケウスじゃない。いま縛られているのがキケウスだ。縄を解け。」
今度はキケウスが、王族からの言葉が発せられた。
「はあ、なんて事だ。これから死ぬところだったのに、何故か生きて紐が解かれている。しかしおかしい。これはキケウス将軍の身体だ。まさか、身体が入れ替わったのか?!」
王族改めキケウスから言葉が発せられた。
「どうやらそのようだ。おい、取り囲みの王や貴族たちよ、この事がわからぬか?いや、俺にも何が起こったかはわからないしかし、俺、キケウスと王族の身体は入れ替わった。先ず縄を解けい。」
あたりは騒ついていたが、王が命じた。
「高級奴隷よ、キケウスと名乗る王族の縄を解け!」
王族改め、キケウスは解き放たれた。
王が声を荒げる。
「何が起こったのか!幸い二人は言葉を喋る説明してみせよ。」
キケウスが答えた。
「はい。どうやら私たちの肉体は鉄剣を通じて入れ替わってしまったようです。そうだろう?」
王族は答えた。
「間違えございません。私たちの身体が入れ替わってしまったようです。しかしこれで死刑から解放された。いや、されたんですよね。」
王が言う。
「なるほど演技ではなさそうだ。何しろ演技の打ち合わせをする余裕はなかったからな。」
王が続ける。
「キケウスよ。見事な手柄だ。これは東の果ての国の秘剣に違いない。この秘剣は王である私が貰い受けるが、キケウスも王族の身体になったことだ。王族の地位を与えよう。そして、もともと王族の肉体に入っていたお主には将軍の地位を与えよう。」
あたりが騒ついた。
王が続ける。
「これでよいか!」
皆は王に屈せざるを得なかった。
しかし、キケウスには王族の地位が手に入り、王族は死刑を免れた。
キケウスが言う。
「ありがたいお言葉でございます。一つお願いがございます。この秘剣の正体を私に暴かせては頂けないでしょうか?」
王が答える。
「ふむ。お前が手に入れた秘剣だ。お主の力でその力を見極めよ!」
キケウスが答える。
「恩にきります。」
王が叫ぶ。
「それでは解散だ。高級奴隷よ。後片付けを頼むぞ。」
こうして死刑執行の会は開かれた。