第2片 警察だ!パスポートを出せ!

三晩明けただろうか、私は£1500という大金を手にした。そして私の心持ちは少し変わっていた。

£1500という大金を手にした、Xは思い描いていたニューヨークからパリへと進路を変更することを考えていた。

パリに行くのは初めてではない、二度目のパリ、そもそもロンドンに来るのも三度目だ。

アメリカには10年以上前に行ったことがある。

しかし、新しいアメリカをXは知らない。ロサンゼルスとシアトル、いわゆる西海岸には行ったが、東海岸には行ったことがない。

パリではかつて数晩で3000€を手にした。

はぁ…自由に生きたい。
さて、自由とは何かを考えると、私はお金にたどり着いてしまう。お金に縛られない生活をしたい。
好きな事をやってくらしたい。

こう思う人は数知れず居るだろう。
しかしそれを実現させる人は稀だ。

何かを思い描いても、無理だと言う声に押され、自分自身を封じてしまう。

何故だ。
人は心の自由をいつ奪われてしまったのだろう。

考えてみればそうだ。
子供の時から、あれも駄目、これも駄目と、してはいけない事ばかり教えられてきた。

そう、それは私が幼いとき…

私が幼いときに教えられたのは、当たり前のことだった。

普通に生きる事が一番であり、みんなと一緒が最善であること。

それが当たり前であるということ。

みんな普通が美しいかたち。

普通という殻から抜け出したい。
Xはいつも普通でない何かを思い描いていた。

図画工作の時間、今日はお絵かきだ。
Xは何を描けば良いのかわからなかった。何故ならそこには答えが用意されているように思えたからだ。
国語の時間、読書感想文。
これもそうだ。書かなきゃいけない事は決められている。
ここに自由はない。求められている正解をひたすら探すだけだ。



私はいま此処ロンドンで自ら求めて辿り着く答えを見つけようとしていた。


---中略---

いつものベースメント、病院から戻った私は扉を開けた瞬間、何かの異変に気づく。

人だ、そして警察だ。
私の同居人は取り調べを受けていた。そして、私も彼女の橫に座らせられる。

「身分証を出せ。」
警察官が命じる。私は戸惑いながらもパスポートを出した。
警官は二人だった何やら通話している。移民局とだ。
「二人の女性、xxxxにてxxxx」


Xは人生で初めて人が手錠を掛けられる所を見た。しかも私の隣で同居人が。
私は幸いにも逮捕されなかったか、このベースメントは去るのが良さそうだ。




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