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NEW 第4片 ユーロスターの味がする
第4片
共通の友人Mから同居人Nが釈放されたとの報を受けた。どういうカラクリになっていたのかは定かではない。
何分と辛い思いをしたそうで誰とも会わずにホテルに籠もっているという。
Mから私はパスポートを正しく持っていたのだから上手く話をまとめて居座ればホテルに泊まらなくても良かったのにと言われたが、警察に囲まれて同居人Nが逮捕されている中で下手に言い逃れを試みる方が怖く思えた。
そもそも部
NEW第3片 コーヒーを一杯飲めますか?
急いで荷物をまとめベースメントから去ったXは大きなスーツケースを2つ持って、近所のロンドンの街をふらついていた。
「コーヒーを一杯を飲めますか?」
この質問に店主は快く答えてくれた。
「どうぞ、寒いね、旅行かい?ミルクは入れる?」
Xは寒さに震えつつまごまごと答えた。
「しばらく近所に住んでたんですけどね…これからパリにでも行こうかと。ミルクは…ラテにできますか?」
店主は笑いながら言った。
第2片 警察だ!パスポートを出せ!
三晩明けただろうか、私は£1500という大金を手にした。そして私の心持ちは少し変わっていた。
£1500という大金を手にした、Xは思い描いていたニューヨークからパリへと進路を変更することを考えていた。
パリに行くのは初めてではない、二度目のパリ、そもそもロンドンに来るのも三度目だ。
アメリカには10年以上前に行ったことがある。
しかし、新しいアメリカをXは知らない。ロサンゼルスとシアトル、
第1片 はぁ…疲れた
はぁ…疲れた。同じ事の繰り返しに。空に浮かんで根のない葉になりたい。
人生は退屈だ。毎日同じ事の繰り返し、求めているものはいつ手に入るのかわからない。むしろ手に入らないのではないか、それにもし本当に望むものを手に入れたとしても、それは真に求めているものなのだろうか。答えを探して今日も夜が更ける。
ここはベースメント、地下だ。私はいまロンドンの少し中心から外れたところにいる。少し古い音楽を聴いている
[小説] 天使と悪魔とサボテンの花
天使と悪魔とサボテンの花
目黒楓
第一章
空を描く天使
3ヶ月ぶりだ。私は成田の空港の地に降り立った。
今回目指していた旅は夢及ばず、一時実家へと帰路へ着くこととなった。
一人の昔ながらの友人と東京駅で会う事になった。この再会が一つの別れである事も知らないまま。
遡る事一月前、私はロンドンに居た。