CAEの事例発表
学会やユーザー会での事例発表は、自社の解析技術力をアピールできる良い機会です。また、エンジニアのモチベーション向上や教育にも役立ちます。自社が発表する場合は機密保持やリソースを考慮して、実現可能な範囲で対応できます。一方、他社の発表については、どのように受け止めるかが問題になることがあります。
例えば、自社ではすぐにはできないような事例を見聞きしたエンジニアが「ウチでもやってみたい」と言い出したり、経営層が「我が社ではできないのか」と投げかけてくるケースです。このような時、CAE部門は自社での実現可能かを検討します。検討項目には、担当者のスキルや工数、使用可能なソフトウェアの機能、必要な材料特性などの基礎データ、計算機の空き状況などがあります。これらの制約が原因で断念することもありますが、逆に新たな予算を獲得するきっかけにもなります。特に、経営層からの提案の場合は大きなチャンスです。ただし、大きな予算を取って失敗すると、社内での評判は厳しいものになるかもしれませんが。
一般に、社外発表されるCAEの事例は、機密保持のために重要なポイントが隠されていたり、裏にノウハウの積み重ねがあったりします。こうした不足している情報は、担当者が推測して補完していく必要があります。自社で類似の解析をしても、初めは実験結果と一致しないことが多く、そこから先の改善には時間と労力が必要です。これは関係者にも理解を求めておくべき点です。
他社の事例から学ぶことは多く、自社の技術力向上のきっかけになります。エンジニアにとっても、限られた情報を元にして試行錯誤することは非常によいスキルアップの機会です。そして、事例があるということは、達成可能なゴールが必ずあるということなので、その領域に予算や工数をかける価値があると判断する根拠になります。他社の事例からは、純粋な技術情報だけではなく、そのような点もうまく学びたいものです。