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CAE導入の意思決定

CAE解析に使用するソフトウェアは、必ずしも会社全体で統一する必要はありません。CADと異なり、各部署は解析の目的に応じて異なるソフトウェアを選択できます。そのため、ソフトウェアの導入は実務部門が外部のソフトウェアベンダーと直接交渉して進めることが一般的です。これは、技術管理部門が会社を代表して導入・管理する必要があるCADとは対照的です。

ベンダーからの提案

CAEを担当する実務者が解決したい問題をベンダーに相談すると、ソフトウェアを用いた解決策が提案されます。また、既に取引のあるベンダーから自発的に提案されることもあります。ベンダーにもよりますが、CAEでは強引な売り込みは比較的少なく、業界内の他社事例に基づいた実用的な提案が一般的です。これは、CADのような一括導入の売り切り型ビジネスとは異なり、CAEは段階的な導入が普通であり、効果が見込めなければ追加導入が行われないことをベンダーも理解しているからです。なお、実務者が高いスキルを持ち、自身で解決策を立案・検証できる場合や、単に規模を拡大するための追加導入の場合は、ベンダーからの提案プロセスは省略されることもあります。

実務者による判断

一般的な情報システムでは、効果が出ないとベンダーの誇大広告に騙されたというような批判が生じることがあります。これにはベンダーのビジネス方針だけでなく、情報システム部門が実務部門のニーズをまとめ、それに基づいて開発やカスタマイズの仕様を決定する過程の複雑さにも原因があります。一方、CAEでは、業務に精通した実務者がベンダーと直接交渉し、特定企業向けの開発やカスタマイズを伴わない汎用的なツールとして導入するのが通常です。これには一般的な情報システムに比べて外部要因の影響を受けにくいメリットがあります。実務者が自社や自身の能力を適切に把握し、身の丈に合った導入を進めれば、成功の可能性は高くなります。

意思決定のプロセス

まず、実務者がソフトウェアの導入によって業務課題の解決が見込めるかを判断します。そして、直属の上司など実務部門の了解を得てから、社内的なプロセスに従ってソフトウェアの導入や追加購入を進めます。提案が実務の管理職が決済できる規模であれば、導入の意思決定は比較的スムーズに行われます。しかし、役員や技術部長など上層部の判断が求められる場合は注意が必要です。判断を仰ぐ場合は、ベンダーから提案された部分があったとしても、専門家集団である解析部門が調査して方針を決定し、ベンダーに資料を提出させたというストーリーにした方がよいこともあります。

上層部の心理

上層部が費用対効果や予算枠などの具体的な理由で却下せず、議論を保留する場合、心理的な要因が影響していることがあります。彼らは自分たちが築き上げた技術への自信が強く、現状を強く否定されたり、外部からの提案が背後にあると感じたりすると、強い抵抗感を持つことがあります。また、CAEに対する知識不足や、そのような内容について他の役員との調整が難しいと感じることから、消極的な態度を取る場合もあります。場合によっては、判断がつけられないので、導入後の効果を保証する提案に修正するようにと、解析部門に提案が差し戻されることもあります。

意思決定の保留

ただし、決定が保留されることは、完全な却下ではなく、検討の余地があることを意味します。対策としては、効果を強調することはもちろん、競合他社の事例を提示することや、影響力ある関連部門の人物を巻き込むことなどが考えられます。なお、意思決定のプロセスの中では、ベンダーが上層部に直接プレゼンテーションを行う機会が設けられることもあります。しかし、このプレゼンの内容で採否が決まることは少ないことを、実務担当者は留意しておく必要があります。プレゼンは、上層部が取引先のベンダーを確認しておくためや、不採用にする場合に現場の要望ではなくベンダーの提案を却下する形にしたいといった動機で行われることがあるからです。

今後の変化

CAE導入時の意思決定プロセスに関するこのような議論は、新しい話題ではありません。しかし、最近は部署内でのローカルなCAE利用も、モデルベースシステムエンジニアリング(MBSE)やモデルベースデザイン(MBD)といった概念と結びつき、より大きな組織的な取り組みの一部として捉えられるようになりました。この変化は、CAE導入の意思決定プロセスにより多くの人物が関与するようになることを意味します。そのため、今後はこれまで以上に注意深い対応が必要になりそうです。

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