CAEをどこまで勉強するか
CAEエンジニアに必要なスキルは様々ですが、ここでは座学的な勉強で身につける技術的な知識について考えてみます。
材料力学や流体力学などの工学については、自分の業務に必要な知識を持っていることが求められます。例えば、破壊力学を理解せずに亀裂進展解析はできませんし、ビンガム流体の特性を知らずに粘土やアスファルトは扱えません。ソフトウェアの機能も、これらの一般的な工学理論に基づいています。したがって、解析対象となる現象のモデル化に使う理論は、前提知識として必要です。
判断に迷うのは、参考書には記載されているけれども、実務で必要かどうかが明確でない内容です。例えば、自分で連続体力学のテンソルを展開して、非線形力学の数式表現に精通する必要があるのか、各乱流モデルの摂動展開を追い、閉じていない系の物理的意味を実感する必要があるのか、といったことです。この点については意見が分かれます。一部の専門家は勉強することを推奨していますが、必要ないと考えている実務者も多いです。
個人的な見解ですが、こういったものはユーザーサブルーチンなどで機能を拡張する場合は必須です。研究的、指導的な立場にある方にも必要なことがあるでしょう。しかし、エンジニア個人がエキスパートとしてのキャリアを目指さない場合、上記のようなことを深い理解に至るまで勉強するのはコスパ、タイパが悪いです。
それでも、これは完全に無駄というわけではありません。数式表現や物理的意味については基本的な理解をしておくだけでも役立ちます。ソフトウェアの理論マニュアルや論文を読むときの解像度が高まるので、各機能の本質が把握でき、情報収集の効率もよくなります。さらに、さまざまな問題に対する類推能力が向上し、より広い視野が得られます。意欲があれば、基本的な知識を身につけることにトライする価値はあると思います。