数分間のエールを (ネタバレあり感想)
過去にクリエイターを目指したことは何度かありながらも、現在は全く無関係な仕事をしつつゆるく趣味で制作をしている30代前半の感想です。
・刺さりはしなかったけれど、エールだと感じた。
・制作へのモチベーションやインスピレーションが沸いた。
・視覚的に魅力的なシーンばかりだった。
好きポイント
- 朝屋と織重の邂逅シーン
雨の表現、走りのカメラ、モーションが非常に凝っていてよかった。何度でも見たい。
- GoogleMap風のトランジション
モーショングラフィックスは見ていて楽しい。特に劇場アニメのトランジションとして見るのは新鮮。
- 公園でMVの逆依頼する彼方のアニメーション
彼方のアニメーションが非常に丁寧。心情がよく伝わってきた。
画が大きく変わらない場面ゆえ、特に際立っていた。
- MV作成シーン
制作シーンやUIを具現化するのすごい良いですね……
「映画大好きポンポさん」の編集シーンが大好きだったのですが、それに似た感動をまた味わえるとは!
- 萠美のキャラデザ
制作は楽しかっただろうなあ、という印象。かわいいし熱量を感じました。(ただ他から少し浮いていた感はある。)
- 機材やソフトを楽しめるところ
制作シーンは画面の情報量も多く、見ていて楽しいです。
架空の機材,ソフトではないのもリアリティがあって良い。
- スタッフロール
通常はCGでまとめられがちなリギングなどの工程を細分化するなど丁寧な記載していた。
制作への責任、また手を動かしている人がいることを実感させられて非常によかった。
- 音楽
菅原圭の音楽はもちろん、劇伴も非常に良かったです。海のシーンのストリングスは印象深い。
あとcrashのサムネ助かる。
良いところはいくらでもあります。
ただ、それでも刺さらなかったのは。
各パーツパーツは非常に良いのですが、1本の映画としてみた時には違和感を覚える場面が多かったなあ…… ということでした。
引っかかる表現が多く、物語として説得力が無かった。
物語のテーマや都合、制作規模とマンパワー、経験、予算や手法などもあるので指摘は野暮だなと思いつつも、
気になりポイント
- 彼方や織重の才能がありすぎる。
スマホで編集をはじめて、PCを買ったばかりであのスピードでMV制作するのバケモンすぎ
絵の経験からモデリングはなんとかなるかもしれないが、リギングやスキニングで心が折れます。
カメラの焦点距離とは? となり、空気遠近法に辿り着くのに1年かかる。金土日の徹夜程度で出来るわけない!レンダリングで時間は消える!
初心者がいきなりあんなシェーディングしない! できない!
登録者数23人でいきなりアンチコメが3つもつかないよ!!!
文句を言うほど、人はちゃんと見てくれないよ!!! 見てコメついたことに喜んでいいよ!!
その技量があるならリール作って即就職できるだろ!!! と思っていました。
ちらっと映った軽音部の2DベースのMVレベルなら分からんでもないけれど。
(織重MVと軽音部MVの工数に差があり過ぎるのは、モチベーションドリブンのリアリティが表れていて良かった。)
織重も織重で、作曲数の割には投稿が少なすぎでは??
ストリートでも名前出していないし、活発なSNS活動もしていなさそう。 (マイクがSM7dBだったので、配信はしていたのかしら)
でもライブハウスをあれだけ注目されておいて、諦める選択はどこ見て演奏してたんだ!!??? ってなりました。
イントロが無いの曲でカウントなしの演奏開始にも驚き。同期演奏?
いずれにせよ才能がある。
そんな才能の塊の彼方に、「才能があっていいよな」と言われる外崎の気持ちにもなってください。ベースでぶん殴るぞ。
- 外崎もあんなにクロッキーを熱心にしていたのになぜ美大を諦める
一旦美術予備校行ってみない? 彼は彼方の輝きにやられてしまった
独学であれだけデッサンやクロッキー出来れば美大目指せると思うし、環境が変われば気持ちも変わるのでは。
彼らにクリエイションの才能は十分すぎるほどあります。
足りないのは自己プロデュース能力です。あと織重はディレクションをしてくれ。
と、物語と描写の嚙み合いが悪く、挫折を挫折と感じられなかったためにストーリーとしては説得力が乏しいという印象でした。
その掛け違えはこれまで個人や小規模で作成をしていた方々が規模が変わり、ディレクションや尺の長さ、割くべきリソースに苦戦したのかな、という邪推です……
それでもエールだと感じたのは。
画の印象や質、作家の表現欲求、そして若手も多くいるチームディレクションの苦労の中、それでも一つの映画として完成させたこと。
全てを完璧に描ききることは難しく、商業であればなおさら誇張や表現の積分はやむを得ないでしょう。
その理想と現実の板挟みの中、一つの作品としてまとめ上げ公開した。そのエネルギーなのかと思います。
各作家のもつ表現欲求や苦労が滲みでていた気がします。
学生やこれからクリエイターを志す人にとっては、この映画が多くの人にエールを送る作品になったのではないでしょうか。
もし、学生の頃に観ていたら間違いなく泣いていました。
制作お疲れ様でした。いい作品をありがとうございました。