田舎のにおいを感じると涙が出そうなほど心が揺さぶられるという話
土のにおいと、木のにおいと、草のにおいと、水のにおいと、虫のにおいと、葉っぱのにおいと、そのほか、言葉では語れないようなものまで、ありとあらゆるにおいが混じり合って、
その混じり合ったものが、
澄んだ、雑味のない、余白の多い空気に溶け出す。
それは、
ぼくの鼻から、口から、目から、耳から、皮膚から、
からだの全てから、
ぼくの体内に入り込む。
あるいは、
ぼくを包みこみ、ぼくと外の世界の境界を曖昧にし、
ぼくを、その風景そのものにする。
その瞬間、ぼくの心は大きく揺さぶられる。
その感覚は、もしかすると
いままでもずっと無意識に
感じていた感覚なのかもしれない。
田舎のにおいで涙が出そうになるな、と気づく
ずっと前から感じていた感覚なのかもしれない。
人の手が加えられすぎた場所で生活をするようになったのは、5年前からで、田舎のにおいで涙が出そうになると気づいたのは3年ほど前のことだ。
その感覚以外の感覚を知ったことで、
その感覚は、
ぼくの〈無意識〉から〈意識〉にあがるようになったのかもしれない。
その感覚が、ぼくのなかで意識され続ける限り、
ぼくは毎回、
田舎のにおいに、空気に、感覚に、
心を揺さぶられ続ける。
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