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#54 知って得する傷病手当金の話①
傷病手当金は、仕事が原因ではない病気や怪我(私傷病)のために仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に健康保険(全国健康保険協会)から支給される手当金ですが、今日はこれを解説していきます。
✅受給要件
受給できる要件は、次の4つに全て当てはまる場合です。
①仕事中の怪我や傷病ではないこと。
②医師が労務不能と認めたこと
医師に労務可否を確認していなかったり、医師が労務可能と判断しているのに自分で勝手に休んだ場合は認められない。
③4日以上連続して仕事を休んでいること
1回目の請求の最初の3日間は「待期期間」と言い、医師が労務不能と 認めていれば有給休暇や公休日でも待期期間は完成する。ただし、傷病手当金の待期期間は、下表の通り「連続している」必要がある。
ちなみに、「待期期間」の「待期」は「待機」ではないので注意が必要ですね。「待機」は「待機児童」とか「自宅待機」とかで「準備をして待つ」と言う意味で使われますが、傷病手当金や失業給付の受給を待っているときの「待期」は「約束の時期を待つ」と言う意味で使われます。
「本物の社労士」か「えせ社労士」かの見分けに使えるかも知れませんね・・・(笑)
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④給与の支払いがないか、給与が傷病手当金より少ないこと
有給休暇を使った場合、その日について傷病手当金は支給されない。
但し、支給された給与よりも傷病手当金の方が多い場合、その差額が支払われる。
✅支給額
1日当たりの金額
=支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
但し、支給開始日以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を用いて計算する。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額
✅支給期間
令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月に改正されました。これにより、今までは出勤して給与支払いがあった期間も1年6か月に含まれていたが、今は出勤して給与支払いがあった日は1年6か月に含まれなくなりました。なお、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、今までどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月までの期間になります。
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✅留意事項
①自治体が運営する国民健康保険(自治体国保)に傷病手当金制度はないが、下記のような業種別の国民健康保険組合には制度がある場合がある(制度内容は様々)。ちなみに下図は「建設連合国民健康保険組合」の「傷病手当金」です。協会けんぽとはだいぶ異なっていて、差し詰め民間の医療保険のようですね。
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②健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者(被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き一年以上被保険者だった者)を除く任意継続被保険者に傷病手当金は支給されない。
③仕事中或いは通勤中のケガや傷病は、労災保険が適用される。
④傷病手当金は「労務不能」な場合である一方、失業給付は「労務可能」でなければならないため、傷病手当金を受給している期間中は、失業給付(基本手当)の支給は停止される。しかし、妊娠、育児、負傷、疾病等の理由により引き続き30日以上職業に就くことができない日がある場合には、職業に就くことができない日数を1年間の受給期間に加えることができ、最大4年間まで延長することができる。
⑤同一の傷病等による厚生年金保険の障害厚生年金または障害手当金を受けている場合、傷病手当金は支給されない。
ただし、障害厚生年金の額(同一支給事由の障害基礎年金が支給されるときはその合算額)の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給される。
また、障害手当金の場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達することとなる日までの間、傷病手当金は支給されない。
⑥復職してフルタイムで働くようになった場合、その日から傷病手当金の支給は停止される。
⑦出勤していない日に対して傷病手当金の額より少ない報酬等が支払われているときは、その差額が支給される。
なお、出勤していない日に対して支給した報酬等とは、有給休暇の賃金、出勤等の有無に関わらず支給している手当(通勤手当・扶養手当・住宅手当等)、食事・住居等の現物支給しているものが該当する。
⑧傷病手当金と出産手当金の両方を受給できる期間は、出産手当金のみ支給される。ただし、出産手当金の額が傷病手当金の額よりも少ない場合には、出産手当金との差額が支給される。
⑨資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている者が老齢厚生年金等の老齢退職年金の受給者になったときは、傷病手当金は支給されない。
ただし、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、差額が支給される。
⑩次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受けることができる。
ア 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
イ 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
⑪退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金は受給できない。
⑫健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日(消滅時効の起算日)から2年で時効になるが、傷病手当金の消滅時効の起算日は、労務不能であった日ごとにその翌日である。
受給する上での注意点
ア)正当な理由もなく自己判断で受診を中断したり、処方箋が交付されているにもかかわらず服薬しない等、正しい療養をしていない場合は傷病手当金が支給されないことがあること。
イ)傷病手当金を受け取った後に次のことが判明した場合は、傷病手当金を返還することとなること。
・給与を支給されていたこと
・障害厚生年金または障害手当金を受けていたこと
・老齢退職年金を受けていたこと
・労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)こと
知らないと損する細かいルールが色々ありますね。
実は過去に失敗したことがありまして、傷病手当金を受給していた従業員が自己都合での退職を届け出てきたときに「退職しても傷病手当金は受給できますから」と教えてあげたのですが、その従業員は実は老齢年金を受給していて、「傷病手当金が受給できなくなった(怒)」と怒りの電話を受けたことがあります。。
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