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#47 就業規則にあると役に立つ規則①
1つ前の労務編(#13)の最後で就業規則の重要性を述べた中で、特に、次の2点はとても重要であることを書きました。
厚労省公表のモデル規則ではなく、「自社に最適な」規則にすること。
作成した規則は従業員に周知すること。
(詳しくはこちらをまずご覧ください)
では、どのように作成したら良いか、どういった条文があると良いのか、役に立つ就業規則には何が書いてあるのか、今日はその点について書いていきたいと思います。
まず、厚生労働省が公表しているモデル就業規則を確認してみます。
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今回のテーマでは、基本的なところには触れません。
例えば、年次有給休暇は何日付与するかや、時間外割増賃金率は何%であるか、育児休業は子が何歳まで取得できるかなど、そういった基準について触れるつもりはありませんので、ご了承下さい。
今回書きたい内容は、「こんな規則があると、労務管理がしやすい」「こういった規則があると、いざと言うときに役立つ」、そんな条文を確認していきたいと思います。
わかりやすいように、厚労省の条文番号に合わせて書いていきますが、モデル規則の詳しい内容は、厚労省が公表しているPDFを確認して下さい。解説を合わせると100ページ近くあります。
第5条(採用時の提出書類)
モデル規則には一部の書類(住民票記載事項証明書、自動車運転免許証の写し、資格証明書の写し)しか記載がなく、その他については「その他会社が指定するもの」としていますが、ここは可能性のある書類の全てを網羅させておくと良いと思います。
最近だと「マイナンバー」「マイナンバーカード(両面)」は必須だし、社会保険や雇用保険に加入する場合は「被保険者番号が記載された書類」も必要になりますね。
それに、社会保険に被扶養者を追加する場合は、被扶養者の「続柄確認書類」や「収入確認書類」も必要です。
また、会社へ提出する書類は「採用時」だけでなく、例えば住所を変更したときや家族が増えたり減ったりした場合など、「在職中」もあり得ますので、採用時に限定しない方が良いのではないでしょうか。
なお、公的書類は1通数百円の発行手数料がかかる場合が多いですが、この手数料を会社か本人のうちどちらが負担するのか、規則に規定して明らかにしておおいた方がトラブル防止のためにも良いと思います。
第8条(人事異動)
令和6年4月1日から、配転の可能性について労働契約書(雇用契約書、労働条件通知書)への明示が義務になりました。
2か所、3か所程度しか人事異動がない場合はその場所が記載してあれば良いですが、そもそも異動があるかわからなかったり、どこに異動するかはその時になってみないとわからない場合は「会社の全ての部署・部門」などと記載します。従って、人事異動があるないに関わらず記載しておいた方が良いでしょう。
それから厚労省のモデルにもありますが、「出向」がある場合は「在籍出向」なのか「転籍出向」になるのか、給料等の負担先などを含めて記載しておくと良いと思います。
第9条(休職)
最近、精神的なストレス等で休職してしまう従業員が本当に増えていて、傷病手当金の申請も増えているのですが、同時に「ハラスメントで仕事に出られないから労働災害だ」と言ってくる従業員もいて、こちらが病気になりそうです・・・
ここで重要な条文は「休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする」という所謂「自然退職」の条文です(「退職」の項番に入っている場合もある)。
この条文がない場合、休職期間が満了しても復帰できない場合にどうしたら良いか、事業主も従業員も困ってしまいます。
第11条(遵守事項)
モデル規則には「守ること」として記載されていますが、企業によっては「禁止事項」という項番名で「やってはいけないこと」として記載している例もあるようです。内容はどちらも同じものです。
モデル規則
① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
⑥ 酒気を帯びて就業しないこと。
⑦ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。
①から⑥に入らない行為については全て⑦で対応可能ではありますが、「ふさわしくない行為」とはどういった行為を指すのか、具体的な行為があれば書いておく方が良いかと思います。
例えば、次のような規定の追加が考えられます。
常に清潔な身だしなみを心掛け、他人に不快感や違和感を与えないこと
職場の風紀、秩序を乱さないこと
会社の命令や規則に違反しないこと
上長の指示に従うこと
職場は常に整理整頓を心掛け、適切に道具を管理すること
社内で賭博その他これに類する行為をしないこと
所定の場所以外での喫煙、または許可なく火器を使用しないこと
ハラスメント行為をしないこと
人をののしり、または暴行を加えないこと
会社や顧客に迷惑が及ぶ交際をしないこと
就業規則に反する行為、秩序を乱す行為をしないこと
職務上知り得た情報(機密情報、個人情報)について、在職中はもとより退職後も、みだりに公表してはならないこと
業務用パソコンにファイル交換ソフト、その他情報管理上問題が発生する可能性があるソフトウェアを勝手にインストールしないこと
会社が貸与する情報機器等を紛失、破損した場合はただちに会社へ報告すること
会社が認めた以外の副業を行ってはならないこと
職務上の地位を利用して私的利益を甘受しないこと
道路交通法を遵守すること
会社に許可なく、報酬を得て第三者のために何らかの行為をしないこと
会社に許可なく、政治活動、宗教活動、業務に関係ない放送、宣伝、集会、文書等の配布、回覧、掲示その他これに類する活動を行わないこと
従業員同士で金銭の貸し借り、宗教の勧誘、品物の売買、知人の紹介等の行為をしないこと
経歴その他申告すべき事項および各種届出事項について、虚偽の申告を行わないこと
職務の権限を越えて専断的行為を行わないこと
業務上の失敗、ミス、クレームは隠さず、会社へ報告すること
SNS等へ会社および取引先の社名および個人名、利用者名等が特定できる形での書き込みを行わないこと
第18条(遅刻・早退・欠勤等)
この項番では、欠勤が何日以上になったら医師の診断書を提出させるかについて、記載しておくと良いです。
なお、診断書は値段が高いので、第5条、第9条もしくはこの第18条で、診断書の費用負担者についても記載しておいた方が良いでしょう。
第23条(年次有給休暇)
年次有給休暇を半日単位や時間単位で取得させていない場合は、その旨記載しておくべきでしょう。また、買い上げは法違反となることにも触れておくべきと思います。
なお、安易な取得申請を防止するため、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、使用者は他の時季に変更することができる(労基法第39条第5項)ことについて、書いておくと良いと思います。
第27条(育児時間及び生理休暇)
生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休暇を請求した場合、請求のあった期間は当該女性労働者を就業させてはなりませんが、無給とする場合はその旨を必ず記載しておきましょう。
なお、女性が男性上司に生理休暇を申請することはハラスメントに発展する可能性もあるので、同性に申請できる仕組みをつくっておくと尚良い思います。
続きは②を見て下さい!
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