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ロッチ中岡とおじさんの即席「試着室」コント観覧記
2024年9月15日の日曜日11時前、
真夏並みの日差しが降り注ぐ板橋区立文化会館前。
入り口に張り出された立て看板の写真を一人無言で撮っていると、
後ろから中年夫婦の声が聞こえる。
「え〜、残念だね〜。体調大丈夫かな。ん、あ、中岡は出るんだ」
――そしてその日の晩、
あるツイートが大バズりしていた。
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このnoteは、その現場「爆生!!お笑いin板橋」1回目に運良く居合わせたもう一人の(私は中くらいの)お笑いファンによる観覧の記録です。
こういうのは録音録画もなく現場にいなかった人には詳細な状況がわからないと思うので、
実際に第1部を観覧した約千人のうちの一人として(記憶を頼りにしながら)個人的な記録を残しておきたいと思います。
ちなみに私の座席はかなりの良席で、
1階5列6番!
舞台に向かって左の端っこですが演者さんの表情までよく見えました。
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まず全体としてどの芸人さんの出番のときも会場中が爆笑に包まれた最高のライブだったというのは、いわずもがな!
強調してもしすぎることがないくらいです!
とにかく休む間もないほど爆笑の連続だったこともあり
中盤の出番順はあやふやだったのですが、
インスタントジョンソンのスギ。さんがTwitterにあげていた進行表で流れを思い出せました。
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(実際はトム・ブラウンがトップバッターでモグライダーが3番手でした)
これを見ると、ロッチの持ち時間は10分もあったみたいですね…!
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さて、どのネタも休み明けの仕事中に思い出し笑いできるくらいおもしろかったのですが、
今回の記事はあくまでもロッチの出番をフィーチャーしたいと思います。
(ちなみに今回私の一番の目当てはナイツで、ハイタッチ券獲得のためにナイツ独演会のDVDをその場で買いました。のりPネタ見れて感激。あと今回もう一つの白眉はチャンピオンのウエストランド。座席の写真にも写っている会場のタイルに目を付けて「外壁みたいな内装」「外みたいな中」と延々といじり倒してたのが最高でした。)
それでは早速。
観覧記
進行表の写真のように、ロッチの出順は最後から2番目。
しかも10分の持ち時間。
客席はそんなことも露知らず、
いきなりトム・ブラウンの「芸風」で火がつき、
観客の私たちは次から次へと登場する錚々たる芸人さんたちのネタに夢中になってとにかく笑いつくす。
そして
「どうもありがとうございました〜」の締めの言葉を聞いて、
BGMのなか小走りか早歩きで芸人さんが舞台からはけていくのを見ながら、
毎回頭の片隅で、
「次は誰だろう。あのロッチはまだかな。ロッチはどうするんだろう、いや中岡さんは何をするんだろう」
と、ふと繰り返す。
いつもとは違うイレギュラーな時間になることは必至で、
コカドさんの欠席を残念に思う気持ちもありつつ、どこかワクワクしながらロッチの登場を待っていた。
そんな観客の妙な期待は、
次の出順の呼び込みナレーションが爆音で鳴り響くたび、10回以上裏切られ続ける――。
いよいよロッチ
――公演は息もつかせず瞬く間に進み、
終盤U字工事とどぶろっくが爆笑のステージを終えて、
とうとう残りはナイツとロッチ。
「きっとトリはナイツだから次はロッチだろう」
すると、思った通り
「ロッッッチィーー!!」の激しい呼び込み。
期待のこもった大きな拍手のなか、舞台の中央後方から一人歩み出てくる。
少し緊張?の面持ちのロッチ中岡さん。
「どうも〜、ロッチです~」
「ロッチの中岡です。よろしくお願いします~」
「で、え〜、みなさん、本当に申し訳ないんですけど、今日コカドくんが熱を出しまして。大事をとって本日はお休みさせていただくということになりまして」
「で~、まあ、いろいろ話したんですけど、『一人でいけるか?』と」
「ロッチのネタっていうのはコカドくんが考えてるんで、『お前一人で何ができるねん』と思われるかもわかんないですけど」
「コカドくんと電話で相談しまして、そしたら『試着室のネタやったら一人でできるんちゃう?』と言われまして」
観客から「おおー!」と歓声が上がる。
「みなさん、ロッチの『試着室』のネタ知ってますか?」
会場中で勢いよく手があがる。
「おおー!ほぼ全員!ありがとうございます〜」
「結構前、もう10年くらい前のキングオブコントの決勝でやらしてもらったネタなんですけど、みなさんに知ってもらえてて嬉しいです〜」
客席から袖のほうへゆっくり体を向け、今度は
「すみません、ちょっとお願いしまーす」とスタッフへ呼びかける。
すると左脇から
女性スタッフと男性スタッフが二人がかりでその大道具を運んでくる。
「今日ね、これ急遽買ったんです」
舞台の真ん中に2メートル近くある試着室がセッティングされていく。
「(え、試着室なんていったいいつどこで買ってきたんだろう? そんなに当日午前中にすぐ調達できるようなものなの??)」といった観客の疑問をよそに、
中岡さんは続ける。
「試着室のネタっていうのはですね、あの〜、ぼくがパンツを試着しようと試着室のなかに入って着替えてるんですけど、店員さん、まあコカドくんが『サイズどうですか〜』とか『色どうですか〜』とかいろいろ言ってきて、『見ますよ、開けますよ』ってなって、開けるんですけど、まだぼくが着替えてるっていう笑 で、それを繰り返していくという」
「あ、このネタ知らないって人! そのカーテンを開けたところがオチで笑いどころなんでね、何やようわからんくてもそこで拍手してくださいね笑」
「もうネタバレもいいところですけど、そういうネタなんです〜!」
頭の中でキングオブコントで大爆笑をかっさらっているロッチの映像が再生される。その後のロッチの歴史的敗北展開もあいまって、いまでも語り継がれる安定の名作だ。
と、そうこうしていると、ここで思わぬ提案が。
「で、え〜、このネタ、試着室を開けてくれる人が必要なんですけど、本当に申し訳ないんですけど、客席のどなたか協力してくれる方いませんか?」
どよめきと笑い声。
「もちろんね、簡単にネタのセリフとか流れの打ち合わせはさしてもらいますんでね」
「え〜、じゃあ、舞台にあがってやってもいいよ〜って方!挙手!」
「お願いします!」
観客はワクワク顔をしながらも、
手はしっかり膝に張りつけて周りの様子をうかがう。
先ほどとは打って変わって、満員の会場からはなかなか手があがらない。
「どなたか〜」
「どなたかいらっしゃいませんか〜」
中岡さんがステージから客席を何度かくまなく見渡していると、
「あ! お父さん、そこのお父さん! お願いしてもいいですか? いい?? OK?! ありがとうございます!!」
会場中の視線が舞台に向かって左前方に集まる。
私の少しだけ後ろのところだ。
「ありがとうございます!」
「どうぞ舞台へ! どうぞ!」
万来の拍手のなか、
ちょうど私の左横にあった階段めがけておじさんが小走りでやってきた。
おじさんは一段飛ばしで駆けあがっていく。
笑顔でステージにあがったおじさんへ、
「ナイスファイト!」
中岡さんの力強い声でホールは一層大きく沸く。
細身のシュッとした背の高いやさしそうなメガネのおじさんだ。
ウキウキした様子のおじさんに脇のスタッフからハンドマイクが渡される。
中岡さんに聞かれ、明るく名乗るおじさん。
笑顔の会場は勇者へ称賛の拍手を鳴らす。
そしてすぐさま二人の公開ネタ打ち合わせが始まった。
「え〜、じゃあね、ぼくがお客さんで、お父さんが店員さん。このパンツをぼくに渡してください。で、ぼくがこの試着室のなかで着替えるんで、『サイズ大丈夫ですか〜』とかそんなん言うてください」
「で、まあやり取りをしていって、『見ましょうか?』って言ってもらったらぼくが『はい』って合図出すんでカーテン開けてください」
「でもぼくはまだはいてないんで、開けたら閉めてください」
「これを繰り返します」
ざっくりだががっつりネタのおさらい。
おじさんは都度「はい!」と相づちを打ちながら耳を傾け、会場もオンマイクのそんなネタバレ打ち合わせを微笑みながら見守る。
「全部言うてまいましたけど、こんな感じでやりますんで!」
もうこの時点で、中岡さんとおじさんによる即席ロッチのつかみはばっちり。
観客を味方につけるどころではない。
観客を相方につけているのだ。
演者と観客の間に一体感があるどころではない。
演者と観客が一体になっているのだ。
――そんな敵なしの空気のなか、いよいよ「試着室」が始まる。
センターには、キングオブコントのとは少し違って、入口が半円の形になっているタイプの試着室。
舞台の上手に二人が並ぶ。なんだか小声で立ち位置を調整しながら。
中央へ歩きながら会話を交わす。
「これ試着させてもらってもいいですか?」
「はい、どうぞこちらへ!」
パンツを手に試着室へ入りカーテンが閉まる。
客席から見えるのはおじさん一人だけ。
おじさんは試着室の左に立ち「どうですか〜」「大丈夫ですか〜」などと声をかけたり、中の様子を隙間からぎこちなくのぞこうとしたりして間を持たせる。
中岡さんもそれに返答してなんとかやり取りを成立させていく。
くすくす笑い声が聞こえるなか、中岡さんとおじさんはオチに向けてカーテン越しに応答を交わし続ける。
そして、いよいよ――。
「開けますねー」
「は~い」
カーテンをひしとつかみ、
若干手間取りながら試着室の左から右へ急いで体ごと移動してオープン!
あのパンツを半履きでおしりを向けた中岡さんがあらわになり、
振り返って「は、はあ~」と間の抜けた声を出したかと思うと、
カーテンはシャッとすぐに閉められる!
が、
……ややウケ。
無理もない。
本物のようにスムーズに開けることはできず、
オープンまでのやり取りもコカドさんと比べれば当然つたないところが多かったのは否めない。
もちろんいきなり本番で完璧にやれというのは到底無理な話で、
そんなことは会場の誰もが承知していて、
誰もそんな大それたことは要求していないが、
ともかく拍手と笑いはそこそこだ……。
が、ここでおじさんが動く!
おじさんは客席に笑顔で正対し、両手を大きく広げて振り上げる!
自ら進んで盛り上げようとするおじさんに応じようと、
観客は手を少し高く上げ、叩く力を強くする!
が、ここでカーテンの向こうからさらっと一言。
「あ、煽るんとかはやめてください」
会場は拍手よりも大きな爆笑に包まれた!
「そういうのはいいんで」
――プロの対応力に大いに沸いた空気のなか、
おじさんが笑顔で左の立ち位置へ戻り「どうですか〜」がリスタートする。
そして一連の流れを1〜2回繰り返し会場の熱がいくらか落ち着き始めたところで、即席ロッチは「試着室」を締めた。
「はい! ということで、ありがとうございました〜」
二人は客席へ頭を下げ、ねぎらいの雰囲気を味わう。
「いや〜お父さん、ナイスファイトでした!!」
中岡さんがおじさんにかけた言葉にみな頷きながら最大の拍手を送る。
すると、
「あ、そうだ、ちょっと待ってください、お父さん」
舞台袖に小走りではけていく。
一人取り残されてしまったおじさんだが、
満面の笑みでおそらく家族のいる方へ手を振っている。
十秒か少しして戻ってきた中岡さんから、
おじさんへ感謝の褒賞が手渡される。
「はい、これ、ロッチのクリアファイルです〜! よかったらどうぞ~」
「では、本当にありがとうございました! ナイスファイト!」
おじさんは階段を丁寧におりて、私の隣を早歩きで通り過ぎていった。
I LOVE YOU
さて、中岡さんとおじさんの即席ロッチによる試着室ネタはここまでですが、
実は中岡さんの出番はこれで終わりではありませんでした(なにせ持ち時間が長い)。
後半では舞台袖からスケベなおじさん2人が登場し、
今度はトリオが結成されることになりました。
板橋に若干のゆかりがあるらしい尾崎豊の「I LOVE YOU」にのせて、
中岡さんが習っているフラダンスを披露するとのこと。
ボーカルの「毛先豊かじゃない」さんとギターの「尾崎毛豊か」さんのお二人(すみません、こんなような名前だった気がしますが、正確には覚えてません)がシンプルにうますぎる「I LOVE YOU」を演奏する間に立ち、
やわらかな笑顔をうかべる中岡さんの手と腰が優雅に流れていく。
「あれ、お笑いライブだったよね???」と冷静な疑問も浮かぶものの、その妙な絵面に会場は終始オオウケ。歌唱力には感動。
そうして中岡さんは力強く
「ロッチでした!」
と最後の挨拶をして、爆笑の伝説的ステージをやり切った。
おわりに
以上、ロッチの観覧記はここまでです!
つたなく長い文章をお読みいただきありがとうございました。
※おじさんが舞台へあがるまでの「試着室のセッティング」「試着室ネタ説明」「協力者挙手」のあたりのくだりは、内容自体はおおむね合ってると思いますが、もしかしたら本当はところどころ順番が前後していたかもしれません…。「試着室のネタ知ってる人、挙手」からそのまま「試着室のネタ、コカドくんの代わりにやっていいよって人、挙手」の流れだった気もしたり。。ちょっと記憶頼みであやふやですがご容赦ください。
今回のヒーロー、あのおじさんは、決してこの機会に自分が目立ってやろうというようなイヤな感じがない、愛嬌と度胸があって、場の盛り上げに協力的なやさしいおじさんでした。
だからこそ中岡さんとのかけ合いで思わぬオオウケも生まれたのだと思います。
あの場に立ち会えたこと、そしてめちゃくちゃ笑わせてもらったことは本当に貴重な思い出になりました。中岡さん、おじさんありがとうございました。
ちなみにその後のナイツも抜群で、定番のネタから最後はトム・ブラウンの合体ネタまでつながる構成で、
「爆生!!お笑いin板橋」という一つのお笑いライブの締めくくりとして完璧な圧巻の舞台でした。
さらにちなみに、オオトリのナイツの出番が終わった後、
全演者さんが再登場して会場へサインボール投げをする時間があったのですが、
ナイツ塙さんへ手を振ってたら、その一投目がちょうど私のほうへ!
と、思ったら、ボールは一つ隣の女性のところへすーっと届き、ゲットできませんでした…。ちょっと悔しい。。
でもまあ、終演後のハイタッチ会では最後に待ち構えていた塙さんとがっちり握手できたので大満足でした!
(毛先豊かじゃないさんにも「感動しました!」と一言伝えて「ありがとう!」と言ってもらえました!)
後日談
ニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』の2024/09/17放送回で
ちょっと今回の裏話が聞けました。
話によると、当初、試着室のネタは午後スタートの第2部のみで行われる予定だったようです。
というのもどこからか買ってきた試着室は、
ニトリみたいな組み立てキットタイプ。
中岡さんがダンボールから部品を出して全部自分で作っていたみたいで、
一つ前のどぶろっくのネタ中にも作業していたとか。
ですが、どうやらロッチの出番が始まる直前1分くらい前にギリギリ完成!
土壇場で第1部も「試着室」ができたみたいです。
なんとか間に合ったおかげで今回第1部でのおじさんの参加も叶ったわけですね。
改めて中岡さんのプロ根性に感謝ですね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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オート🍚