【いいDJ = できるディレクター説 】を考える。 - そしてカルチャーを愛することは仕事を救う!
DJをしてきました。それで気がついたことがあって書きたいんですけど、
前段だとかかなり長くなります。暇つぶしにどうぞ。
結論から言うと、いいDJといいディレクションは共通項がかなりあるので、DJを知ることはビジネスに案外役立つぞ!です。
最初に伝えたい大事なことなんですけど、僕は音楽がめちゃくちゃ好きです。なんて表現していいかわからないんですけど、とにかく大好きです。
アメリカやイギリスのインディロックや、ヒップホップ、ジャズを好んで聴いています。要はだいたいが好きなんですね。
その好きが、ある日「こんなにいいものなんだから、きっとあの人も好きだと思うな!」というなんとなく押し付けがましいお節介に変わっていきました。「これ、好きだと思う!」というレコメンド精神から、「あの人はこの音楽を聴いていたら恐らく自分は素敵だと思うので、聴いてほしい」と狂気めいたおすすめまで。単なるめんどくさい音楽好きでした。
きっかけは中学2年生です。たまたま見ていた深夜番組でサニーデイ・サービスというバンドに出会い、青春・恋愛に洗脳されるような形でファンになりました。
彼らのアルバムは、地元の片田舎のCDショップでも手に入りましたが、「渋谷のタワーレコードで買ってこそ本当のサニーデイ・サービスがあるのではないか」といういかにもな感情(この感情の「いかにも」の部分に誰か適切な社会記号を与えてやってください)に苛まれ、ボッタクリのキャッチに捕まりつつも、人生初の渋谷に出かけるという快挙も達成することができました。
さらに、担任の先生がいわゆる「ロックおじさん」だったという影響もありました。ビートルズのカヴァーバンド(コピーバンドってあえて言わない。それくらい自己表現として先生の姿が素敵だったからだ。)を
していて、勝手に体育館でライブを開いたり、自宅に生徒を連れていき、たくさんのレコードを宝箱のような棚から引っ張り出してきて、聴かせてくれました。
そこから出てきた、U2のWARも、ローリングストーンズのレットイトブリードも、ビートルズのラバーソウルも、ビーチ・ボーイズのペットサウンズも部活と受験勉強と、なかなか叶わない淡いテニス部のエースへの恋心や
覚えたての自慰行為くらいしかなかった僕たちにとっては、探し当てた人生の埋蔵金みたいなものでした。
余談ですが、僕のこの世で最も好きなアルバムはペットサウンズです。
「世の中に影響を与える芸術作品というものが経済活動につながっている!」という考えを初めて意識させられた瞬間だったのかもしれません。
とにかく、歴史の中にいる天才たちの作り出す芸術がパッケージングされたビニール盤は、ただの円盤ではなく、僕たちに世界を教えてくれる先生だったのです。
見たこともないロンドンの曇り空も、カルフォルニアの青い空も海もそこから想像した。もう、眩しくて仕方がなかった。
高校入学時の1996年には、ローリングストーンズのライブにも引率してくれた(笑)。世間はoasisがモーニンググローリーで世界を制するだとかしている時にです。
ちなみに、先生は昨今の来日事情を考えると、あの時を振り返って「U2にしておけばよかった」と常に言っています。
はっきり言って、僕もそう思います(笑)。今年の来日、僕は都合により行くことができませんが、先生は行ければいいなと思います。
話が逸れましたね。音楽は文脈が作品にも作り手にも受け手にもあるので、どうも脱線しがちなんですよね。そんな文化だから、深みが出てくるんだと思いますけど。
要は、そんな影響があり、音楽が大好きになってしまったのです。
高校入学初日の自己紹介で、ショートカットが似合う色白の女の子に一目惚れして、「好きなアーティストはoasis」って言ったので自転車で2時間も走り、CDショップに行き(めっちゃ田舎に住んでいたし、当日お届け便なんて存在していない時代です)、「これを聴けば話ができるぞ!」とoasisのアルバムを買い、そのまま意味のわからない雷に打たれ、「人生決まったぜ!」とか思い込んでしまったんですね。
ちなみに、その娘とはどうなったか?話しましたよ。oasis。それで、「唯一oasisが話せるクラスメイト」という地位を確立。
毎日電話で夜色々話したり、新譜のオンエア日に一緒に電話で話しながらラジオを聴いたりしましたよ。
で、結局そのまま彼女の好きな人の恋愛相談をされ、相手は僕がめちゃくちゃ仲よかったイングウェイマルムスティーン好きの友達だったという事件が起こり、その後彼女はGLAYのTERUのコスプレをする人と付き合い始めました。
そうです。カルチャーは、ルックスに負けたのです!!! ああ・・・。
また話が逸れました。音楽って人生に余計な文脈を与えてしまうんですよね。そういうカルチャーです。文化と呼ばずにカルチャーと言いたいのはそんな理由だからです。
そんな折、17歳でフジロックを経験し(豊洲。ミッシェルガンエレファント最高だったしプライマルスクリームかっこよすぎた。ボビーって本当にこの世に実在するのかと思った。)
18歳になり、東京に進学のため、引っ越しました。残念ながら第一志望の大学ではありません。なぜなら、受験日にミッシェルガンエレファントの横浜アリーナライブというものがあったので、そちらに行ってしまったからです。
親にはものすごく怒られましたが、仕方ありません。カルチャーは一期一会の遭遇機会を逃したら、同じ瞬間は二度と訪れないのですから。
(多分、おしゃれビジネスマンはその事象を「UX」という言葉に置き換えたと思います。今)
ちなみに、受験の日に初めて西新宿のレコード街に行き、シャーラタンズのレコードを買いました。引越しの日にはファウンテンズオブウェインの1stアルバムを買いました。
それーで、クラブというものに行きました。
高校時代はBボーイが田舎の高校には多かったので、クラブ=ヒップホップの怖そうな場所 or なんかディスコっぽいというイメージしかなかったんですね。
でも、西新宿のレコード店にはパンクのイベントのチラシがあったし、渋谷のZESTには、なんだかオシャレそうなインディロックのイベントのフライヤーが置いてありました。
「色々あるじゃんか!」と、好きなバンドがチラシに羅列されているイベントに行ってみました。扉を開けた瞬間、偶然なのか、神様が与えてくれたタイミングなのか、The WhoのKids Are Alrightの「ジャーン」というギターストロークの音が鳴った瞬間だったのです。
(個人的な趣向は尊重しますが、この曲がダメな方は僕もダメですwww)
もちろん、わかりやすく影響を受けました。
そうです。「これ、自分もやりたい!」と思ってしまった。
DJ、やりたい。これなら持っているレコードでできるのではないか。と。
イベントが終わり、そのThe WhoをかけたDJの所に行き、「どうやったら始められるのか」を質問したら「クラブを借りてイベントやればいい」と言われたので、もうとにかく場所を押さえて、既成事実を作り、始めてしまったのです。
その後は色々色々とありすぎて割愛しますが(どっかで会ったら聞いてくれ)、要は、人前で音楽をかけることを始めたのです。
この経験で僕はたくさんのことを学びました。
1.プロ意識
学生がやろうが、社会人がやろうが、それで生活をしている人がやろうが、お客さんからお金をいただきます。
それでわざわざ時間を作ってもらい、足を運んでもらうんです。
だから、適当な「自分の大好きなもの発表会」ではいけません。
ご来場の皆様が心地よく過ごして帰っていただく必要があります。
「1円でもお金を貰えばそれはプロなのではないか。だから相手を考える」ことが必要なのです。
2.空気を読む
お客さんが求める内容。あると思います。それは、
・心地よい時間を誰かと過ごしたい
・好きな曲が聴きたい
・流行りを知りたい
・ここでしか出会えない体験をしたい
色々とあると思います。
その中から、フロアにいる人達の空気を読み取り、選曲します。
つまり、かなーり「場の空気を読む」ことを意識しなくてはなりません。
3.バランス感
「カロリーの高い時間」ってきついですよね。コース料理にも前菜からメインディッシュまでの流れがあります。
そうですね。メインだけだと胃もたれします。
だから、全てが「アンセム祭り」だと疲れますね。時には箸休めも必要で、そのバランスを「相手が飽きないように」
考えつつ、かつ新鮮な出会いも織り交ぜつつ、バランスを一晩のイベント全体を通して考えないといけません。
全てヒット曲でもそれは盛り上がるんですけど、まぁ、当たり前ですよね。
むしろ、曲が変わったことを気がつかせないくらいでちょうどいいのかもしれません。
「なんか、好きなやつとか流行りの曲、流れていた気がするな」くらいで。
4.制限の中から最大値を生み出す
持ち込める音源は有限です。レコードやCD、持っていける限界がありますからね。
その中で先に書いた2と3を実現させるには、それなーりに頭を使います。
今はPCで無限に持ち込めたりもするんですけど、それだと最大公約数での答えあわせになるので、個性が失われてしまう気がします。
ここまでの意識していることを1行にまとめてみると、
要は
「その場の空気と客層を読みつつ、適切なプレゼンテーションを限られたリソースの中でやって、お客さんに満足してもらう」なのです。
あれれ、これ、何かに共通するぞ。と気がつきます?
そう。ディレクションやないか!と。思いました。というか、すいません。気づいていました。
1.お客様の課題、ニーズを聴く
2.そっから目指すべき姿をイメージする。世の中の流行りや空気も合わせて考える
3.もちろん予算も納期もその他制限がある。使えるリソースも限りがある
4.その中から最大化の効果が出るには何をしたらいいか考えて・・・。
5.なんか面白いことを考えて
6.世の中やお客様に満足してもらえる結果を作り上げる
+ そのために自分の中に知識とかのアーカイブが必要。
同じですね。そう。同じなんです。
だから不思議と、いいDJをする人はいいディレクターだったりするし、いいディレクターが音楽が好きでDJをしてみたら、
初めてなのにめちゃくちゃよかったりします。
応用。つまりは普段していることをスライドしているだけなんですよねー。
でも、アウトプットがDJだろうが、広告だろうが、商品開発だろうが、ほとんど流れも必要なことも変わらない気がしています。
最近は、出力媒体や形式の形にとらわれすぎてしまい、そこを忘れがちな場面にも出くわしますが・・・僕は思うのです。
相手の気持ちを考えて、必要なものを限られた条件で考えてお出しする。だけなのです。
超シンプル!
そんなに変わらないのではないか。と。
と、書いたんですけど、今夜も音楽がめちゃくちゃ好きでした。
何より、DJをしながら共通言語で知らない人に声をかけていただいたり、大事な仲間と「これいいよねー」とか「これ知らなかった」だとか、
目の前で役に立っている感がある。素敵ですね。
ということでした。
ちなみにこんな音楽を最近はかけています。
そして、令和に好きな音楽を並べておきます。